魔女の囁き

 銀色の長い髪と深紅の瞳を持つ彼女は、人々を畏怖させる魔女だった。


 一年前、王都の城壁に近い通りで、初めて彼女と出会った時のことを今でも鮮明に覚えている。

 黒いローブを纏った彼女は、周りの人々から避けられながらも凛として歩いていた。

 そんな彼女は僕の前で立ち止まり、不思議そうな表情を浮かべてこう言ったのだ。


「あなたは私から逃げないのね」


 その後も、彼女は毎日のように僕の元を訪れるようになった。

 魔女は普通の人々とは違う特別な存在で、多くの人々が恐れを抱いているという。

 しかし、僕は彼女の中に邪心を感じなかった。


「あなたの傍にいると、心が落ち着くの」


 彼女はそう言って、いつも僕の腕に自然と寄り添ってくる。

 他人の視線など気にせず、堂々と僕との時間を過ごしていた。


「私、あなたのことが好きよ。ずっとそばにいたい」


 ある日、彼女はそう告白してきた。

 その真摯な眼差しにあてられて、僕は彼女の気持ちを受け入れることにした。


 そうして、彼女は今日も僕の部屋を訪れる。

 いつものように穏やかな表情で近づいてきたが、今回は少しばかり様子が違った。


「今日は特別な日なの。ちょうど一年前、私たちが出会った日よ」


 そう言って、彼女は私に抱きついてきた。

 その強い力に驚いて、私は少し身を引こうとした。

 しかし、彼女はさらに強く私を抱きしめ、頬を寄せてくる。


「逃げちゃダメ。あなたは私のものなんだから」


 その囁きは少し恐ろしくも、甘美だった。

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