第15話 犬

「道中で話した事はしっかり理解出来たかヨ」

「うんばっちり。星獣って姿によって固有の特徴あるんだね」

「そうだヨ。弱いのから強いのまでピンキリだから覚えとくといいんだヨ」


 改めて仕事内容を確認しながら凛先輩とすり合わせを行っていく。


「Bランクは余が相手するからDとCは頼んだヨ伊吹」

「任せてもろて」


 準備万端ですよ俺は。この距離なら日帰り出来そうだしさっさと終わらせて帰らんとな。


 そんなこんなで周囲を警戒しながら森の中へと入っていく。どうやらこの奥に星獣が居るらしい。


「そういや前パワードスーツだなんだ言ってましたけど凛先輩ってどんな戦闘スタイルなんです?」

「余は基本中近距離戦闘だヨ。使う武器によっては遠距離も行けるけど消費が激しいんだヨ」

「魔力っての使うらしいですしね」

「燃費が悪いスキルなんだヨ」


 道中聞いた感じ凛先輩のスキルは銃などを作った場合は弾を魔力で補わないといけないらしい。どうやら弾は作れないようだ。


 パワードスーツも起動してる間に常に魔力を消費するし大技を使う時は更に魔力を使うらしい。必殺技みたいな感じなんやね。


「そういや星獣って倒したら死体とかどうするんですか?」

「基本は一日放置してたら神様が持っててくれるんだヨ。なにかに使いたい場合は明確な意思を持って触れるだけで大丈夫だヨ」

「了解です。ゲームみたいに倒したら何か強くなったりとかあるんですか?」

「そんなもんねぇんだヨ」

「現実って非情っすね」

「非情なんだヨ」


 鍛錬あるのみ…って事か。普段通りだな。


「あーでも魔力を使うスキル持ちは微量だけど倒したら魔力が増えるんだヨ」

「凛先輩だけじゃないんだ魔力使うスキル」

「関東の方には回復魔法ってのを扱えるようになるスキルもあるらしいヨ。聖女の天原さんが不在の時とか軽い怪我の時に大活躍らしいヨ」

「天原さん…慈愛の聖女様だっけ」


 いおりんがそんな事言ってた気するわ。


「そうだヨ。余はまだ世話になったことは無いけど欠損すら余裕で治せるらしいヨ」

「そのレベルの怪我なんてしたくないっすねぇやっぱ」


 いったいからなぁ欠損。…したことは無い筈だけども。前世の記憶曖昧だからワンチャン欠損してたかもしれん。


 そんなこんなで小声で雑談をしつつ目的地へと到着する。


「奥の奴は余に任せるんだヨ」

「んじゃ俺は周りので」


 眼前にうようよいる犬っぽいだけの異形の星獣を見つつそう言葉を交わす。


 皆左目は黒なことを確認してから一気に距離を詰めて頭と思しき場所をぶん殴る。


パァン!


 一撃で弾け飛ぶ脆い星獣を一瞥しながら奥の赤い目をした星獣の方へ向かっている凛先輩をサポートする。


 まぁサポートと言いつつも周りのCやDランクの雑魚共を薙ぎ払っていくだけだが。

何故か凄い目で凛先輩に見られるが気にしないことにする。


 一体一体は余裕で紗奈の骸骨共よりも脆いが数の多さと連携の巧みさはこちらの方が圧倒的である。


 犬型は鼻が利き、数が多く、集団戦が得意なのが特徴らしい。


「ひゃはははははは!」


 まぁ、だからなんだと言う話ではあるが。


 出来るだけ注目を集めるべく大声で笑いながら雑魚共を蹴散らし続ける。


 敵があまりにも脆いため無双ゲームをしている気分である。

返り血で真っ赤に染まりながらそんな事を思った。


「チャージビームだヨ!」


 少し遠くでそんな声がしたかと思うと威力が高そうなビームがBランクの親玉っぽい奴に直撃し大きい風穴を開ける。


 そのタイミングで俺も雑魚を蹴散らし終えたので合流しフィードバックをする。




──戦闘時の凛先輩視点


 よし、昨日は罰ゲームで醜態を晒してしまったしここで挽回するんだヨ!


 伊織先生から話を聞いて強いらしいとは聞いてるから大丈夫だとは思うけどさっさと奥のを倒して合流するんだヨ。


 さぁ行くパァン!…………ヨ?


 …ん?あれ?え?今…え?


 弾け飛…………え?Cランクだヨ?近付いたタイミングも見えなかったし……強い…いや強すぎじゃねぇかヨ!


 まずいヨ先輩風吹かせられないんだヨ。


 とっとりあえず先にボスみたいな奴倒して何とかメンツを保つんだヨ!



 敵が…敵が溶けていくんだヨ。進行方向に居る敵が…なんか一撃で薙ぎ払われていくんだヨ。


 いや余も出来はするんだヨ?ちょこーっとだけ消費が激しくなるだけで、なんで伊吹ケロッと余裕そうに粉砕していくんだヨ?


 FランクのスキルでこれならDランクのスキルでも持ってれば足元にも及ばなかったかもしれないヨ…。


 とりあえずボスは余のパワードスーツで葬り去ってやったヨ。先輩のメンツだけは保ててると信じてるんだヨ。





「お疲れ様です凛先輩」

「それを言うならこっちの方なんだヨ…ほぼほぼ倒したの伊吹だしヨ」

「いやでも所詮CとDくらいですよ?」

「初陣で事も無げにCとD倒すやつは見たことないんだヨ」


 確かになんでこんなに精神落ち着いてるんだろうな。小説とかで見たことあるけどこう言うのって少しは忌避感とか…ありそうなもんやねんけどな。


 なんでか知らんねんけど粉砕しても死体見てもピクリとも心が動かないんだよなぁ。


 やっぱ前世でなんかあったんやろか俺。


「どうしたんだヨそんな気難しい顔して」

「いやなんでこんな落ち着けてるのかなぁって」

「確かに初陣の落ち着き用じゃねぇとは思うヨ。伊吹は天性の戦士だったかもしれないヨ」

「割とありそうやねそれ」


 適性があったのかね。知らんけど。


「先輩の面目丸潰れなんだ…ヨ?」

「どしたの先輩」

「おー!可愛い犬がいるヨ!両目とも黒だし姿も普通な可愛い犬だヨ!」

「うわっほんとだ。なんでこんなとこに」


 凛先輩の視線の先には凛先輩が言った通りの姿の普通の犬が尻尾を振って座っていた。


 ビーグル犬って奴かな確か。なんでこんなとこにいるんだろ。


「おーよしよしよしよし!可愛い奴だヨ!」

「危ないかもしれないのに良く触れますね凛先輩」

「普通の犬に恐れすぎなんだヨ伊吹ー。もしかして犬嫌いなのかヨー?」

「いや別にそういう訳では無いんだけども」


 気緩みすぎじゃねぇか?とも思うけどまぁ星獣でも無さそうだしそうカリカリする事でもねぇか。


 まぁあんな幸せそうに笑ってるしほっといても良いかな。


 そう思って視線を外そうとすると視界の端で少しだけ犬の口が裂けたように見えた。


 その瞬間言いようのない不安感が心を支配し、気が付けば凛先輩を突き飛ばしていた。


 驚いた顔の凛先輩を視界に捉え


バクン


 俺の左肩から先が無くなった。


 あまりにも現実味がないからか驚く程に冷静になりつつ、目を見開き口をパクパクとさせる凛先輩を一瞥してから犬だったものに目を向ける。


 犬だったものは口が大きく裂け、体はさっき見た大きさから5倍ほどの大きさまで膨れ上がっており、所々に口が着いた異形な姿へと変わっていて、真っ赤なでこちらを見ている。


「グギャッ」


 俺の左腕を咀嚼し終えたそいつはニヤリと笑いながら鳴き声を上げ、


「…………え…?」


 何も理解出来ていなさそうな、何も理解したく無さそうな凛先輩の声が後ろから聞こえてきた。


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読みにくかったり分かりにくい箇所あれば教えてください。


死ぬ程モチベになるので感想や♡や星無限に下さい。星100目指してます。

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