第9話 お風呂回
風呂に到着したのでまずは風呂の戸に耳を当て中から物音がしないか探る。
深夜3時とは言え慎重に行かねば印象が完全に消失する可能性がある。
「音は…しなさそうだな」
安心して戸を開け脱衣所で服を脱ぎ風呂に入る。温泉のような外観で思わずテンションが上がってしまう。
そこは例えるならば小さな温泉のような感じで2つの湯船に複数のシャワーがある。
汗を大分かいてしまったのでシャワーで念入りに汗を落としてからにごり湯の方に浸かる。
「あぁぁぁぁぁぁ…」
おっさん臭い声が思わず漏れる。心地よい感覚に包まれ多幸感が溢れて止まらない。
「はぁー気持ちi」
「遅い…」
「うわぁ何!?」
近くの湯からひょっこりとタマ先輩が顔を出す。
「…突然現れたのは悪いと思ってる。思ってるから早くその手をどけて欲しい。痛い」
「あっあぁ…すみませんタマ先輩」
びっくりすると拳を繰り出してしまう厄介な癖がまた発動してしまった…。
「話をしようと思って湯船に潜んでたのに遅すぎる…今何時…?」
「深夜の3時くらいです今」
「4時間も湯船に潜んでたのか私…」
「4時間も潜んでたんだタマ先輩…」
なんで生きてんの?人間だよね?
「って…話?」
「そう、話。会った時は寝ぼけてたから改めて話したくて」
「確かに今凄いハキハキ喋ってますもんね」
「眠いと喋りが間延びする…」
最初のあれしか知らないから違和感が凄いな今。
「とりあえず話をする」
「あっはい了解です」
「貴方は…何のために生きてる?」
「なんすかその質問」
「結構大事な質問だよ?生きる目的ない人から死んじゃうし」
実際そうなんだろうけどこうもはっきり言われるとやだなぁ…死を目の前にしたら取り乱しちゃいそう。
「何のために…か」
うーん難しいな。あんまり考えたことなんて無いし…あっでも強いて言うならあれかな?
「幸せになるために、誰かを幸せにするために生きてるかな」
前世からもずっと。
「ふふ…いい理由だね。じゃあ次は貴方は何のためにこれから戦うの?」
「カウンセリングか何かですか?これ。何のために…今は紗奈を幸せにするためですかね」
一度体の関係を結んじまったんなら死ぬまで幸せにしてやんないと…。これから増えるかは分からんけど増えたならその人も幸せにしないとな。
え?クズ野郎だって?この世界は一夫多妻制なんだよ死が常に隣にあるから。
「うんうん、誰かのために頑張れる人は素晴らしいね。じゃあ最後、何のためなら命をかけれる?」
「命を…?うーん…なんだろ。口ではなんとも言えはするけど実際そうなると分かんないんだよね」
「まぁたしかに全部に結論は出せないよね…じゃあしたかった話はこれでおしまい。お風呂楽しんでね」
「この話する為だけに4時間も待ってたんすか?」
「言わないで欲しい。睡眠時間を無駄にした感じがして悲しくなるから」
そう言いタマ先輩が湯船から出ようとしたので目を瞑る。
「む…別に見てくれてもいいのに」
「女の子が無闇矢鱈にそんなこと言うもんじゃないですよ」
「未来の頼み事の前払いでもしようと思ってたのに」
「え、未来で俺何頼まれんの?」
「ふふ内緒。またね、伊吹」
そう言ってタマ先輩が戸を開け去っていく。
「嵐みたいな人だったな本当に…」
少し気疲れしたので癒すために隣の風呂に長く浸かっているとガサガサと聞こえるはずのない音がする。
…いやそんな訳ないよな。深夜3時だぜ?こんな時間に風呂入るやつなんている訳ないじゃん(特大ブーメラン)。
それに風呂の戸を開けた音しなかったし…あれ?そういやタマ先輩が閉めた音もしなくね?
「ちょまっ」
誰かは分からないが静止しようと声を出した瞬間に風呂と脱衣所を繋ぐ扉が開かれる。
「ふんふふふーん。余は大天才なんだヨー…お?」
「見てないです」
「なっなん、いぶっ」
「見てないですから!!!」
「そういう問題じゃないヨ!」
咄嗟に目を瞑ったので何も見てないから凛先輩には安心して欲しい。
絶壁とその先にある頂上なんて欠片も見ていない。冤罪は辞めて欲しい。
「深夜3時に風呂入る奴なんて居るはずないって油断してたヨ…」
「さっきの俺と同じこと言わんでください凛先輩…てか隣で浸かるの辞めてくれません?目開けれないんすけど」
「完全に風呂に入る気分だったから許して欲しいヨ…てか普通逆じゃねぇかヨ?なんで男が女の裸に恥ずかしがってんだヨ」
「俺は自分の裸見られる分には構わないけど女の裸見るのは恥ずかしがるタイプなんで」
「見た事も聞いた事もないヨそんな男」
目の前にいるから見た事も聞いた事もあるようになったね!
「てかなんでまたこんな時間に…もう遅い時間ですよ?」
「魔導具作ってたらこんな時間だったんだヨ」
「魔導具?」
「余の魔導技師のスキルで作ったものをそう呼称してんだヨ。分かりやすくて良いだろうヨ」
「確かに分かりやすいっすね」
「伊吹は何してたんだヨ」
「紗奈と少し話したあと小説読んでたりしてましたね」
本当のことは言わないようにぼかしながら伝える。
「何の小説読んでたんだヨ」
「『あちきは猫でありんす』と『インゲン失格』と『走り屋メロス』ですね」
「見事に歴史の教科書でしか見たことねぇラインナップだヨ…伊吹って昔の人だったりすんのかヨ」
「そんな訳ないでしょ凛先輩」
「冗談だヨ」
それからも10分ほど会話をした後のぼせそうになった凛先輩が風呂から出ていく。今回はしっかり戸を閉めた音が聞こえたので安心だ。
今日はもう遅すぎる時間だし鍛錬は朝っぱらだけにしようかなぁ…。
そんな事を考えながら湯船に浸かり疲れを癒す。
ガラガラとまた戸が開く音がした。
なんで深夜3時に皆風呂に入りたがるの?
しかし今回は事前に来るとわかっているので事前に目を瞑っておく。
出ようとした時に鉢合わせると大変だからね。
「伊吹様ー?居ますかー?」
すると脱衣所の方から紗奈の声がする。
「紗奈?居るよー」
「あぁ良かった…部屋に居ないから少しだけ心配になっちゃって…なんで目瞑ってるんです?」
「あぁ確かに紗奈ならいいか」
目を開け湯船に浸かりながら紗奈としばらく話してから風呂から出る。
その後は外で軽く鍛錬をしてから朝日を待った。
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ハプニングに恵まれすぎだろこいつ。
読みにくかったり分かりにくい箇所あれば教えてください。
死ぬ程モチベになるので感想や♡や星無限に下さい。
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