第8話 ポンコツと長い旅路の果て
「わっ私のスキルはAランクの『亡者の愛し子』と言うスキルで…スケルトンとゴーストとゾンビを生み出したり操ったり出来ます。今はまだスケルトンしか出せないですけど…」
「おー!Aランクの中でもトップクラスで強そうな良いスキルだね紗奈ちゃん!さっすがこの寮に入れただけある!」
「そ、そうですかね…へへ…。…ここの寮に入るのって何か条件があったりするんですか?」
俺も気になったことを紗奈がそのまま質問する。寮に入るのに条件居るなら俺退寮させられちゃったりとかしない?
大丈夫かな俺手違いで入寮したとかじゃないよね?
「…伊織ちゃん?」
「えと、説明…したとぉ…思ったん、ですけどぉ…」
縮こまりながらいおりんが弁明(?)をする。
「伊織って仕事バリバリ出来そうな見た目だけど中々にポンコツだヨね」
「返す言葉も…ございません…」
凛先輩の強烈な一言でノックアウトしたいおりんが後ろに倒れる。
とりあえず半笑いで手を合わせて祈っておいた。
「この寮はねー、未来の希望になり得る人しか入寮出来ないようになってるんだよね」
「未来の希望…?わっ私がですか?」
「そーそー。未来視のスキルを持つ人に見初められた人だけが入寮出来るシステムなんだよー。凛ちゃんがこの学校に来て1年くらいで出来たらしいよ」
「丁度その時伊織が赴任してきたから2人で寮使ってたんだヨ」
俺が入れたのが手違いじゃないならどんな感じで未来の希望になるんだろうな。
あれかな?愛する人のためにーみたいな。あとは友のためにとか?友達守るために戦うのが男だし。
そんな益の無いことを1人で考えているとじゃあ最後いぶきちのスキルは何?と結衣に聞かれたので覚悟を決めて言葉を放つ。
「俺のスキル?Fランクの『視力強化』だよ」
「…Fランク?Sじゃなくて?」
「ばっかお前…この名前でSってこたぁねぇだろ」
「…なるほどね」
「笑うなら笑えや結衣ィ!いっちゃんムカつくんだよ笑いを堪えきれてねぇその顔がよォ!」
「ふ…くく、笑ってないよ」
「漏れ出てんだよ笑い声がァ!」
凛先輩も後ろ向いて体震わせてるしさ!もうあんまりだよ皆!
タマは…何?微動だにしないけど…寝てる?俺のスキルに興味もない感じ?
「あの…大丈夫ですか?伊吹様」
「俺の味方は紗奈だけだよ」
「えっ私は!?」
「いおりんも判明した時笑ってたやん」
「…確かに」
なんだコイツー!
はっ!しまった俺の心のショイマンの高本さんじゃない方の人が爆発しちまった。
あの人名前出てこないランキングでもかなり上の方に居るよね。失礼だけども。
「くく…よし、落ち着いた。ふふ」
「落ち着けてねぇよ漏れちゃってるよ心の笑いが」
「いやいや申し訳ない…でもいぶきちも私がそのスキルだったら大爆笑でしょ?」
「3日は笑い続ける」
「死ぬよ?」
当たり前かのように爆笑した後死なせないために全力を尽くすよその時は。
友達だからね。本人には言わないけど。
「…これからの戦いとか平気なの?」
「身体能力が人よりちょっと高いから大丈夫だよ」
「…ちょっと?伊吹様の想定してる人って何者ですか?」
「えそんなに?」
「少なくともCランクの人なら身体能力で圧倒出来ると思いますよ?全力がどれ程か分からないのでその先は分かりませんけど…」
「FランクスキルでそれならBとかでも持ってたら化け物になっちゃうかもしれないヨ」
「私からしたら既に伊吹様は化け物枠ですけどね」
失礼極まりなくない…?実際やった事からしてそう思われるのは分かるから声には出さないけども。
「まぁこの話はここまでって事にしといて…夜も更けてきたし解散する?」
「そうですね…明日10時から座学があるので10分前には着席しててくださいね2人とも」
「はーい」
「了解ザンス」
「余たちは依頼も無いしのんびりしとくヨ」
「頑張ってねー2人ともー」
そんなこんなで解散し各々の部屋に戻る。
風呂の説明とかしてもらってないんだけど時間とかどうしよう…かち合ったら気まずいしなぁ。ド深夜とかにしとくか。
部屋に入り船に乗せてた荷物が部屋にあったので中から小説を取り出す。
今回はこれを読もうかな、サマーアイ先生の『あちきは猫でありんす』。不朽の名作であり1000年以上の時がたっても全く色褪せず読み手を楽しまてくれる。
姉ちゃんが調達してきてくれてから俺の宝物だ。
◈
ページをペラりと捲ると丁度一区切り着いたので、一旦休憩しようと小説を閉じる。するとそのタイミングでコンコンと控えめにドアがノックされる。
「少し良いですか伊吹様」
「紗奈?良いよ」
どうやら話がある様子の紗奈が入ってきたので小説を棚の上に置く。
「失礼しまーす…」
「どしたん?こんな夜中に…」
そこまで言って少しだけ紗奈から視線を逸らす。紗奈が不思議そうな顔をしているが許して欲しい。
端的に言って色気が凄すぎて直視出来ないのだ。え?何言ってんだこの変態がだって?いや変態なのは否定しないけど今の紗奈見たらお前もこうなるって。
今の紗奈は先程まで風呂に入っていたのか
肌からうっすらと湯気が立ち上り、頬は少し赤みがかって髪も少しだけ濡れている。
格好は普通のパジャマなのだが立派すぎる胸部のせいで可愛いよりも色気が勝ってしまっている。
「えと、何か変…ですかね」
「いや変…では無いんやけどさ。その、少し目のやり場に困って…」
こんな時百戦錬磨のギャル男ならどうするのだろうか。一度も戦ったことの無い童の帝たる俺には到底理解が及ばない。
「これなら…」
小声で何かを紗奈が言ったようだが動揺していた俺は聞き逃してしまった。
「実はこれからのことで話したいことがあって…」
「これからのことで…あぁ了解」
恐らく奴隷を辞めたいって事なんだろうな。SランクにEXランクと俺以外に強者が現れたからこそお前なんてもう要らねぇぜって感じだろう。
「私は伊吹様の奴隷ですし…これからもお仕えする気満々なんですけど…伊吹様私に全然命令してくれないじゃないですか」
思ってた方向と全然違った…。
予想してたものとは全く違った話に軽く狼狽えているとピタと紗奈が身を寄せてくる。
「私はもう準備出来てますよ…伊吹様」
そう言い紗奈は俺の頬に手を添え唇を重ねてくる。
…お母さん、お父さん、前世のお母さん、前世のお父さん…。俺、大人になります…!
◈
隣で寝息を立てる紗奈を起こさぬようにベッドから抜け出し着替えを持って風呂場へと向かう。
深夜3時だし風呂入ってるやつもこれから風呂入るやつも居らんだろ。多分。
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『あちきは猫でありんす』リアルであったら買いたいぐらい名前が好き。
後半の2人は完全にキャラが動いた結果なので僕は悪くありません。
僕もびっくりしてます今。
読みにくかったり分かりにくい箇所あれば教えてください。
死ぬ程モチベになるので感想や♡や星無限に下さい。
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