第6話 のぞみ荘

 歩くこと15分。目的の場所に到着する。


「えーっと…ここかね」

「ここっぽいですね。あそこにでかでかと『いらっしゃいのぞみ荘!!!』って暖簾が下げられてますし」

「元気で愉快なやつが居るのは確定したな」


 多分イベント事とかあったら皆でやろうよみたいな感じで誘ってくれる人がいるな。


 正直そういう人めちゃくちゃ助かるんだよなぁ…姉ちゃんがそんなタイプだけどすっげぇ助かってたもん。


「あそこが入口っぽいですね。行ってみましょうか」

「行くか。転ぶなよ」

「転びませんよ!何だと思ってるんですか!」

「道中で4回転んだのになんでそんな熱量で言い返せるん?」


 15分しか歩いてないのに転びまくっとったやん紗奈。


 そう雑談を交わしながら入り口からのぞみ荘へと入ると両脇からパァン!と音が鳴る。


 どうやら入ったと同時に両脇からクラッカーを鳴らされたようだ。

安全面と音に配慮してか少しだけ遠くで。


「いらっしゃい!のぞみ荘へようこそ!」

「余たちは主らを歓迎するヨ!」


 そんな、急に鳴らされたクラッカーよりも驚くことがあり、目をぱちくりとさせ動揺していると声をかけてきた推定先輩二人に背中を押され応接室のようなところに連れていかれる。


「さぁさ座って座って」

「…んじゃ、お言葉に甘えて」


 座るように促されたので紗奈と隣り合わせに座ると、正面に先輩二人が座る。


「さぁさまずは自己紹介!いぶきちは知ってるだろうけど神崎かんざき結衣ゆいって言うよ!よろしくね!」

「…お知り合いなんですか?」

「ここ来る前通ってた高校の時の友達」


 なんか突然転校してったなとは思ってたけどスキルに目覚めてたのか…。


 急な再会でまだ動揺してるんだけど俺。


「諸事情で最後に話すことも出来なくてごめんねいぶきち。これからは同じ荘の仲間になる訳だしいっぱい遊べるよ!」

「まぁ元気そうでよかったよ結衣」

「元気なんていつも有り余りまくってるからね私は!いぶきちも元気そうで良かった!」


 …何処か無理をしてそうなその様子の結衣に後で少しでも話聞くかぁと考えつつ、初めましての先輩の自己紹介を待つ。


「お?もう終わったのかヨ。じゃあ余の自己紹介始めるヨ。余は大天才、足利あしかがりんだヨ!よろしくだヨ後輩諸君!」

「よっよよ、よろしくお願いします足利先輩」


 初めましての人だとまだ怖いのかキョドりながら挨拶をする紗奈を一瞥して俺も挨拶をする。


 しっかしキャラが濃いなこの先輩。


「よろしくお願いします足利先輩」

「何だヨ二人して他人行儀で…これから一蓮托生の仲間なんだから凛と呼んで欲しいヨ」

「あっじゃあ凛先輩で」

「おーおー。話が分かる後輩は大好きだヨ」

「凛ちゃんは転送装置作った凄い人だから何かあったら頼ってあげてね」

「えっ凛先輩が転送装置作ったんですか?」

「そうだヨ!余の最高傑作なんだヨ!」

「そんなちっこいのに…」

「体型は全く関係ないんだヨ!」


 紗奈よりも背が低い本当のロリ体型なのに凛先輩…ちなみに結衣は170のスレンダー体型。皆から王子様とか呼ばれてたタイプだ。


 「余だって作れるなら身長を伸ばす機械を作りたいヨ!」と泣きわめく凛先輩をなだめてから本土から持ってきていた色紙にサインを書いてもらう。


「ありがとうございます凛先輩」

「なんで色紙を持ち歩いてるんだヨ?」

「姉ちゃんから頼まれてて…」


 ミーハーだからな姉ちゃんは。


 そういやいおりんからもサイン貰えばよかったかなぁ…失敗したなぁ。別に明日貰えばいいだけだけど。


「そういやいぶきちお姉さん居たもんね。お姉さんは元気?」

「ちょー元気。ここ来る前はひたすらクラブとかに連れてかれてたよ」

「変わんないねお姉さん」

「変わんねぇよあの人は」


 その後少しだけ世間話をして、それが終わると結衣が話を切り出す。


「じゃあ次は二人の自己紹介だよ!どうぞどうぞ!」


 紗奈とアイコンタクトで会話をし、最後とか嫌ですよ私と受け取れたので先に紗奈に自己紹介してもらう。


「いっいいい井上紗奈と言います。いっ至らぬところがあるかもしれませんがこれからよっよよよろしくお願いします」

「紗奈ちゃんだね!よろしく!」

「気負う必要はないヨ。肩の力を抜いて助け合って頑張って行こうヨ」


 結衣は言わずもがなだけど凛先輩も良い人っぽそうだなぁ…この様子なら1週間もあれば紗奈もどもらなくなりそう。


「んじゃ最後いぶきち」

「うい。篠宮伊吹って言います。スキルが目も当てられないくらい弱いけど身体能力は高いので足を引っ張らないよう頑張ります」

「…伊吹様が足を引っ張ることなんてあります?」

「いやいやあるかもしれんだろうが紗奈。結衣とか凛先輩が強すぎる可能性だってあるわけだし」

「それでも伊吹様が足を引っ張るイメージは湧かないですけど…」


 いやもしかしたらスキルがめちゃくちゃ強くて結衣が俺の10倍くらい強いかもしれんやんけ。


「…いぶきちって紗奈ちゃんに伊吹様って呼ばれてんの?」

「…ふっ。なんの事かな?」

「誤魔化せないよ!?」


 あっヤバみたいな顔をしている紗奈をちらりと見てからどう話すか考える。


 ここで馬鹿正直に守る代わりに何でもやる奴隷になってもらったんだよね!なんて言ったらこれまで積み上げてきた好感度が0超えてマイナスになっちまう。どうしよ。


「あっいや話したくないなら無理には聞かないよ?でもやっぱいぶきちって変だよね」


 事情を深く聞こうとしない結衣に安堵しながら変と言われたことに少しダメージを受ける。


「良い意味で男っぽくないヨね」

「でも普通の男の人よりいぶきちの方が好感持てはするよねーやっぱり」

「普通の男はカスばっかだからヨ」

「こんなこと言いたくないけどその通りだからねぇ…あはは…」


 この世界の男は本当にカスばっかだからなぁ。


「まっまぁこれで自己紹介は終わったと言うことで…あと1人居はするけど寝ちゃってるから起きたらまた自己紹介してもらうね」

「了解」

「りょっ了解です」

「じゃあ次はこののぞみ荘のルールとかを教えていくね。とは言っても1つしかないんだけど助け合いを大事にしようってルールだよ。この学校では星獣と嫌でも戦わされることになるし辛いことも苦しいこともいーっぱいある。だからこそ助け合って、協力して、一緒に乗り越えていこうねって感じ!おっけー?」

「おっけーおっけー助け合いね」

「わっわわわ分かりました」

「余も困ったことがあったら遠慮なく主らに頼りに行くから主らも遠慮なく余たちを頼るんだヨ」


 その後それぞれの部屋の場所やお風呂の場所を案内してもらった後、皆で遊ぶ時に使うと言う仲良し室に案内されそこに皆で入る。


「ふむ…凛ちゃんといぶきちたちはまだ出会って間もないし…親睦を深めるためゲームでもする?」

「余、大賛成だヨ」

「さんせー」

「がっががが頑張ります!」


 そんなこんななやり取りをした後、結衣が棚から取り出した愉快なパーティーゲーム大乱戦スラッシュブラザーズ略してスラブラで遊ぶ。


「ルールはどうする?」

「アイテムあり通常ステージでいいんじゃない?ガチでやる訳でもないし」

「余はガロンを使うんだヨ」

「わっ私はビッグマック使いましょうかね」


 ルール選択をした後に結衣がマルオ、俺がセヒロスを選択してスラブラが開始される。


 前の世界と少し相違点はあるがスラブラがこの世界でもしっかりあるのが何処か慣れない。


 芥リバー先生とかサマーアイ先生がいる時点で今更ではあるけど。




──1時間後


「余、最強なんだヨ」

「凛先輩横スラばっかすんのやめません!?俺のセヒロス軽いからすぐ夜空の星になっちゃうんですけど!」

「負け犬の遠吠えが心地いいヨ」

「うざすぎマジで!」

「話し合おう紗奈ちゃん!私たちはまだやり直せる!」

「しょっ勝負事に待ったは無いですよ神崎先輩…ではさようなら」

「うぎゃぁぁぁぁああああ!」




──3時間後


「もしかしたら余は最強じゃないかもしれないヨ…」

「そりゃあんだけ分かりやすく横スラ振りまくってたらカウンターされるでしょうよ…元気出してください先輩」

「余は悲しいヨ…」


 シレッと引っ掴んといてくれん?ゲームに集中出来んくなるからさ。


「その技は見切ったよ紗奈ちゃん!」

「見切っただけでは勝てないですよー神崎先輩」

「しまっ…うぎゃぁぁぁぁあ!」


 リアクション芸人かな?3時間声上げ続けてるけど疲れないのかな…疲れないんだろうな。


 偶に愉快じゃなくなりながらも俺たちは愉快なパーティーゲームスラブラを楽しんだ。


 ちなみに戦績は悔しくなるので言わない。

惨敗ではあったとだけ伝える。


────────────────────

次回に余たちのスキルは判明予定だヨ!楽しみにしとけヨ!


読みにくかったり分かりにくい箇所あったら教えて欲しいヨ。


死ぬ程モチベになるから感想や♡や星無限にくれヨ。

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