第4話 投擲の名手

「みっみみ道に迷ってここまで来たんですね伊吹様…」

「言いたいことあるなら言ってみろよ」

「ほっほほほ方向音痴ですね」

「ぐぐふぅ」


 分かってはいても人から言われると効くな…。


「じゃっじゃあ私が道案内しますね」

「助かるよ紗奈」

「はっはい任せ…ん?あれ?おいしょっ!…あれぇ?」

「どした?」

「…腰…抜けちゃってて歩けないです…」

「えぇ…」


 腰が抜けて立てない紗奈をおぶりながら道案内をしてもらい脱出を図る。


「てかこの船いつ到着すんの?」

「えっええええと、あと3時間くらい…ですかね多分」

「3時間かぁ…何する?紗奈」

「そっそそそそうですねぇ…」


 こんな感じで雑談を重ねながら一旦甲板の方へと案内してもらう。


「おっおお重くないですか伊吹様…」

「んー?全然重くないよ。役得もあるし」


 紗奈って所謂ロリ巨乳みたいな体型だから背負うと胸が背中に押し付けられるんだよね。男の夢が俺の背中に…!


 正直これだけで守る価値あるよ。うん。

許してくれ、男なんてそんなもんなんだ。


「役得…あっそそそそう言うことですか…でっでは、えと…お楽しみ…ください?」

「おう、楽しませてもらうわ」


 波長が合うのか少し言葉を交わしていくだけでどんどんと紗奈と仲良くなれていっているのを感じる。


 話が合うし適度に話も振ってくれるから話しやすいんだよね。なんで陰キャやってたんだろこいつ。


「そういや紗奈って何歳なの?見た感じだと中学生くらいなんだけど」

「しっしし失礼ですよ伊吹様…高校二年生の16歳です…」

「えっ同級生なん?」

「えっ伊吹様高二なんですか!?」

「過去一声でかくなったな」

「すっすみません意外すぎて…」

「何歳だと思ってたの?」

「20後半くらいかなって」

「老けすぎだろ俺」


 そんなこんなな雑談を交わしながら甲板へと到着する。


「んーやっぱ波の音って心地いいねぇ〜」

「どっどど同感です…いっいいですよね」

「癒され…ん?」


 辺りを見回していると視界の端に青い目をした異形の怪物が映る。


 遠く離れすぎて全長は分からないが恐らくかなりの大きさだろうことが伺える。


「ごめん、ちょっと降ろすぞ紗奈」

「りょっ了解です…」


 ゆっくりと紗奈を降ろしてから軽く準備運動を始める。


「紗奈ー?」

「はっははははいなんでしょう」

「投げやすい骨って出せたりしない?」

「投げやすい…骨…?ちょっちょっと待ってくださいね?」


 しばらく準備運動をして体を温めていると紗奈に骨を手渡される。


「どっどどどどうぞ」

「サンキュー紗奈」

「あっあのっ、なっなな何に使うんですか?」

「んー見てりゃ分かるよ」


 骨を軽く握りながらフォームを整える。


「えっなっ何を…」


 そんな言葉を背中から受けながら文字通りの全力で骨を視界の端に映った怪物へとぶん投げる。


 視界の端で骨が直撃し怪物がバラバラになったのを確認し、フォームを解く。


「よし、んじゃこれから何する?」

「そっそそその前に説明してくださいよ!」


 えー…しょうがないにゃあ紗奈えもん…。


「視界の端に星獣が映ったからバラバラにしただけだよ」

「…着弾した所が見えないくらいには遠くに投げてましたけど…」

「うん。距離にしたらkg単位で遠くだったからね」

「なんでそれが見えてかつ投擲でバラバラに出来るんですか…」

「鍛錬の成果かな」

「鍛錬って凄いですね…」


 理解が及ばなすぎてキョドりすら出来なくなった紗奈にかるーく説明しつつやることもないので海を眺める。


「落ち着くなぁ…」

「私の荒ぶる精神を放置して落ち着かないでください」


 その言葉を完全に無視して「ちょっとー?伊吹様ー?」海を眺め続けていると船の中の方から足音がして甲板に人が入ってくる。


「ここにいたんですか篠宮さん…探しましたよ」

「あれ?いおりんじゃんどしたの」

「伊織先生です…ちゃんと仲良く出来てるか見に行こうとボードゲーム会場行ったら来てないと言われたので迷ってないか探してたんですよ」

「バチバチに迷ってましたね」

「やっぱりですか…えと…どうして井上さんと一緒に?」

「迷った時に助けて貰って話も合うので流れのまま」

「…はっははははい!伊吹様とは凄く話が合って…あ」

「あ」

「伊吹…様?…篠宮さん、申し訳無いんですが少し話を聞かせて貰えますか?先生としてスルー出来なくて今の言葉は」


 うーん……どうしよ。


 どう話そうか悩んでいると焦って動揺していた紗奈に全部正直に言われてしまった。

それはもう…赤裸々に。


「もうそこまでスキルを扱えるんですね井上さんは。それに…」


 そこまで言っていおりんが俺を見る。


「あのスキルでなんでそこまで強いんですか篠宮さん」

「なんでと言われても…鍛錬の成果としか…」

「あっあああのスキルって…いっ伊吹様はどんなスキルなんですか?」

「「視力強化です(だよ)」」

「…え?身体能力強化系のスキルとかではなく?」

「あれは全部自前の身体能力」

「…えぇ」


 ドン引きされてる…。


「ともかく…まぁ双方合意の元での隷属なら何も言いません私は」

「おっ流石いおりん話が分かるねー」

「しかし…本当に篠宮さんって男なんですか?」

「いやいやいやいや、何処からどう見ても男の子でしょうが」


 この魅惑のボデーが見えないのかね。


「私の知ってる男性はナヨナヨとして自信がなさげでなのに攻撃的な人だったんですが…どれにも該当しないじゃないですか篠宮さんは」

「たったたた確かになんか同人誌の世界から出てきたみたいな感じですもんね伊吹様」

「あんな奴らと一緒にせんでください」


 ツイフェ〇思考になんてなりたくないよ俺。

散々甘い汁ばっかり啜ってきたくせに他人がそれを啜ることを良しとせず攻撃するカス共じゃんあいつら。(個人の感想です)


「まぁこの話を始めると終わらなさそうなのでここまでにしておいて…私も井上さんの戦うのが怖いという気持ちは分かりますし…色々と便宜を図っておきますね」

「あっああありがとうございます」

「ありがてぇー」


 先生が味方についてくれるのはありがたいな。いつまで続くか分からん学校生活で先生が味方は大大大大勝利だろうきっと。


「んー…てかいおりん戦うの怖い気持ち分かるって言ってたけどさ。いおりんも戦うのが怖いの?」

「えぇ…数年前に1度大きなミスをして怪我を負いまして。それからトラウマになったのか戦う度に冷や汗が止まらないんですよね」

「そいつは…大変ですね」

「それなのにスキルがスキルなせいで戦わないのも出来なくて…」

「大変すぎるねいおりん…。そういやいおりんって何のスキル持ってんの?」


 生徒でAランク居るなら先生とかはやっぱりSランクとかなんかな。


「…そうですね。その様子ですと篠宮さんは何も知らなさそうですし教えましょう。…私の持っているスキルは七美徳シリーズの1つたる『勤勉』と言うものです。例外と言われているEXスキルと言うやつの1つですね」


────────────────────

いおりんは結構重要人物です。何故ならプロットに設定が書いてあるので。


読みにくかったり分かりにくい箇所あれば教えてください。


死ぬ程モチベになるので感想や♡や星無限に下さい。

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