第3話 骨の女
右へ左へ適当に練り歩きながら目的地もないまま歩き続ける。
既にもと来た道も分からなくなったのでしっかり帰れなくなっている。もしかしたら俺の死に場所はこの船の中なのかもしれない。
奥の方に向かっているのか段々と暗くなってくる。いや奥の方に向かってても暗くなるか?まぁいいや。
そうやって歩いていると浴場と書かれた暖簾が下がっている場所に行き着く。
ふむ。ハーレム系のラブコメ主人公ならここで浴場に突撃し裸の美女と遭遇するのだろうが…そんなんしたら叫ばれて変な噂流されて孤立するだけなので後ろ髪を引かれつつもその場所を後にする。
◈
歩き始めて幾星霜…そろそろ後ろに戻るべきかなぁとかなんとか思っていたら急に向こうの壁から骸骨がぬっと出てくる。
「…」
「ぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
バキィ!
突如現れた骸骨にビビり散らかしてしまった俺は咄嗟にその骸骨の顔面に黄金の右ストレートを叩き込み木っ端微塵にしてしまう。
「なになになになになに!」
動揺が口から出て止まらなくなりながらも冷静にどうしてこんな事が起きているのかと必死に考えてみる。
ががががが骸骨がががが何故ここここここここここここ…。
うん。駄目っぽいわ。
冷静に考えるのは後回しにして焦り散らかしながらもこれが明らかな異常事態であることは明白なため骸骨が来た方向に向かっていく。
え?何故迷いなく突き進むのかって?ここでいおりんが知らなそうな事件を解決しといたら後で知ったいおりんからの好感度が爆上がりするのではと考えたからである。
我ながら馬鹿だとは思うが、前世も女性にモテることなく命を散らしてしまったため今世こそはと気合いが入ってしまうのだ。
あまり積極的に戦いたくは無いがモテモテの未来のためなら頑張れるというものである。
骸骨がいたであろう場所を目指して練り歩いていると前方からゾロゾロと骸骨たちが向かってくるのでその全てを粉々にしながら突き進んでいく。
時には拳、時には脚、時には頭突き、時には骸骨から引きちぎった腕をぶん投げて破壊したりと飽きがこないように工夫して戦っていく。
ずっと同じ攻撃してたら飽きちゃうからね。仕方ないよね。
腕を引きちぎって別の骸骨に投擲して粉砕した時何故か他の骸骨たちから引かれたような気がしたけど気にしない。
そうやって突き進んでいくと小さな部屋の前にたどり着く。
「おっ邪魔しまーす」
この向こうに元凶が居るだろうと当たりをつけたので警戒しながらも、まぁ骸骨の強さ的に組み手の相手をしてもらっていた姉ちゃんより弱いだろうと高を括り、ドアを音を立てて開け放つ。
その部屋にはあまりにも美しすぎる土下座を決めながら白旗を振る少女がいた。
「…?」
状況が呑み込めず困惑する俺をよそに少女が喋り始める。
「こっここここ降参です!あああ、あの、あやっ謝るので命だけは!命だけはどうか許してください!なっなんでもしますから!」
「…いやまず誰?」
焦り散らかしている人間を見て落ち着きを取り戻したので目の前の推定犯人の女から話を聞こうとする。
「わっわたっ、私は…いっいいい
言葉をつまらせながらも必死に言葉を紡いでいく骨女の話を根気強く聞いていく。
話をまとめるとこの骨女は俺と同じで今回のスキル検査で関西八百万学園に入学することになった生徒の1人で、人とあまり関わりたくなくてこの船の最奥部に篭ってスキルで人払いをしていたそうだ。
最奥部まで来たんだ俺…。
己の方向感覚の雑魚さ加減を実感し少し落ち込みながらもう少し話を聞く。
話してくれたスキルの名前は『亡者の愛し子』と言うものらしく。先程粉砕しまくった骸骨の他に幽霊やゾンビなどを生み出して使役出来るらしい。スキルランクはAランクだそうだ。格差凄くない?
俺Fランクだよ?え?格差凄くない?
練習もなく骸骨を操れたとの事なので相当にスキルの才能もあるやつなのかもしれない。あまりの格差に泣きそうである。
「どっどどどどうしたんですか伊吹様…なっなな、何かありましたか…?」
「いやちょっと現実に絶望して…伊吹様?」
「おっおおおお嫌でしたか…?」
「嫌ではないんだけど…なんでまた」
「ふっふふふ服従のあっああ証です…」
なんで服従されてんの?
「服従?」
「わっわわ私は…今からいっいい伊吹様のどっ奴隷です。なっなな何でもするので…私を守ってください…」
「守る?」
駄目だ次から次に疑問が湧いて来るからずっとはてな付けて喋っちゃう。
「はっははははい…わっわたっ私は…死ぬのが怖くて…戦いたくなくて…でっでででも学園に行く以上絶対たっ戦わされるし、いっいい命の危険にも見舞われるだろうし…なっなら奴隷になってでも私より強い人に守ってもらおうと…」
「意外と考えられた上での服従か…考えられた上での服従って何?」
まぁいきなりなことで面は食らったが一言で切り捨てるほど悪い提案でもない。
守る人がいる方が戦闘のモチベーションは上がるだろうし言うことを聞いてくれるのはエロ抜きにしてもありがたい。
出来るならエロいこともしたいが。
しょうがないよね。男の子だもん。
「いや俺は良いんだがよ…」
「ほっほほ本当ですか…?」
「…何でもする奴隷になるって事はどういう事されるか分かってんのか?」
そう言いながらずっと目を逸らされていたので、頬に手を添えて目と目を合わせる。
「はっははははい。覚悟の…上です。しょっ正直なことを言うと伊吹様の顔がもうドタイプで…わっ私はドMですし…これから先恋人が出来るチャンスも無さそうなので良いかなって…えへへ…」
ただの変態じゃねぇかよこいつ。
「まぁそう言うことなら…よし、この伊吹様がお前を全力で守ってやろうじゃねぇか」
「あっああありがとうございます…わっわたっ私の事は紗奈と呼んでください」
「おうよろしくな紗奈。んじゃ早速なんだけどさ」
「はっはい!」
紗奈の顔が段々と朱色に染まっていく。
何を想像してるんだろうか。いや分かるけどね?何考えてるかくらい。そんなすぐな訳なくない?
「道案内お願い出来ない?」
「…はい?」
そうして繰り出された恐ろしい程ピンクじゃないお願いに、キョトンとした顔で紗奈が首を傾げた。
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キャラを勝手に動かしてたらプロットにないキャラが生えてきて気が付いたら奴隷になってた。どゆこと?
読みにくかったり分かりにくい箇所あれば教えてください。
死ぬ程モチベになるので感想や♡や星無限に下さい。
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