第2話 前途は多難

ザァー…ザァー…


 ザァザァと波の揺れる音がする。


 船の甲板に身を預けながら揺れる波を見つめる。


 あれからトントン拍子にことが進み気がつけば俺は海の上だった。


 どうやらスキル持ちを育成する学校…えと名前は…なんだっけ、八百万学園だっけか。

そんなんだった気がする学校は本土から離れた島に立っているらしく俺が乗っている船は今そこに向かっている。


 なんで島?って思うかもしれないけどどうやらその島が星獣との戦いの最前線の1つだかららしい。

他にもそんな場所があってそれぞれに八百万学園があるようだ。


 俺たちが今向かってるのは関西八百万学園である。

お察しの通り関東八百万学園なんかもあって住んでた所で分けられているようだ。


 もう滅んだ国々から大日本帝国に進行しようと襲ってくる星獣たちを狩りながら教育も出来る最高の立地…らしい。

そう言っていた。


 そんな学園に向かうこの船には前述した通り関西から集められた凡そ30人くらいの人間が乗っている。見事に全員女性だ。いや当たり前だけれども。


 小学生っぽい子から社会人っぽい人まで様々な年齢層の人たちが居るようだった。


 一緒の学園に通うなら仲良くしたいなと思って色んな人に話しかけたがノータイムで皆から顔を逸らされ心が折れたので諦めて甲板にいる。


 小学生から社会人まで幅広い年齢層の人たちがいるのに全員から顔逸らされるって何?


「なんも上手くいかんなぁ…」


 思わず口から愚痴が零れるのも仕方ないことなのである。


「何してるんですか篠宮さん。皆さん向こうでボードゲームしてますよ」

「その皆さんから顔逸らされまくって心が折れたのよいおりん」

「せめて伊織先生と呼んでくださいよ…」


 この生真面目そうな女性は俺たちの高校の検査を担当してくれた検査官の田中たなか伊織いおりさんである。


 どうやら関西八百万学園の教師だそうで生徒たちとの顔合わせも兼ねてこの船で学校に戻っているらしい。


 最前線である学校には特異なスキルを持つ人間が多いようで転移能力を持つ人もいるらしい。

普段はその人のスキルで帰っているようだ。


「てか顔逸らされるって、その服装のせいでは?」

「えっ何か変?」

「いえとても良く似合っては居るんですが…何分露出が激しくないですか?」

「いやおへそしか出てないですけど!?」


 いおりんから露出が激しいと言われた今の俺の服は姉ちゃんから譲り受けたへそ出しパンクコーデである。


 そう…あれは出発前姉ちゃんと喋った時…。





ホワンホワンホワン


「伊吹!明日はいよいよ出発だな!」

「行きたくねぇよ俺」

「寮生活になるからあまり会えなくはなるが私はいつだって伊吹を思ってるからな!」

「ありがと姉ちゃん」


 ばっと手を広げて誘ってくる姉ちゃんと熱い抱擁を交わす。


「あっそうだ伊吹。お前に託さないといけない物があってな」

「託さないといけない物?」


 抱擁を解くと姉ちゃんがドタドタと隣にある自分の部屋に向かって走っていく。


 帰ってきた姉ちゃんはいつも来ているへそ出しパンクコーデを持っていた。


「ふっふっふっふっふ」

「ねっ姉ちゃん…それって…!」

「そう!私が普段使いしているパンクなコーデだ!」

「…えっこれ託されんの?」

「あれいらないか?」

「いや…似合うかな俺…」


 身長は180超えで同じだから着れはするだろうけど…不安になるな…。


「伊吹は他のなよなよとした男たちと違ってかっこいいからな!絶対似合うぞ!」

「えっそう…?」


 照れるなぁ…。


「これさえ着れば伊吹はもうモッテモテのモッテモテだ!」

「モッテモテのモッテモテ…!?」

「モテすぎて女に飽きるくらいにモテモテになるぞ」

「マジかよ…ありがたく託されるよ姉ちゃん!」

「存分にモテてこい!伊吹!」


ホワンホワンホワン




「そんな姉の託した物を露出が激しいとか言うんですかいおりん!」

「伊織先生です…いや分かりますよ?女性ならそれくらいの露出は大丈夫ですし…でも篠宮さん男性じゃないですか…」


 ん?あぁー…前の世界の感覚だったけどこの世界の男はプールなんて行かないし行ったとしてもラッシュガード着るくらい露出しなくなってんだった…。失念してたぁ…。


 姉ちゃんの反応が何も変わらなかったから忘れてたなぁ。


「…良くない?へそくらい」

「その過程でお腹も見えちゃってますけどね?私ですら話してる間そこに目を奪われそうになるので他の人なら多分凝視してきますよ?顔逸らした方々は恥ずかしくて逸らしちゃったんだと思いますよ」

「着替えた状態で話しかけたら返してくれるってこと?」

「恐らくは…ですが」

「着替えてこよっかなじゃあ」

「それなら篠宮さん用の制服が完成したのでそれを着ますか?」

「おっ早いね」

「スキルで作ってもらったので耐久力も保証しますよ」

「助かるー」


 当たり前だがこれまで女しかいない学校だったため男用の制服なんてものはなく…事前にいおりんが話を通してくれていたのだ。


 手渡された制服を脇に抱え更衣室に向かう。


 何故か更衣室は男用があるのだ。

なんでかは分からないが。


 着替え終わり、脱いだ姉ちゃんの形見を肩にかけていた鞄に押し込み更衣室を出る。


 着替え終わったことだし、早速誰かに話しかけに行こうと船内を散策する。


 うーん…いおりんからボードゲームしてる場所教えてもらえば良かったなぁ…。


 とりあえず人が居そうな食堂とかに向かって歩いてみるか。






 迷った。


 完全に迷った。


 食堂とか場所分からんけど着けるだろとか高を括ってたらこの有様だよ。


 地図貰えば良かったなぁいおりんに。

今頼れるのいおりんしか居ないから助け求めるの全部いおりんになっちゃうなぁ…。


 そんな事を考えながら道もよく分からないままにフラーっと歩いていく。


 何処に向かってんだろうなぁ…今。


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読みにくかったり分かりにくい箇所あれば教えてください。


死ぬ程モチベになるので感想や♡や星無限に下さい。

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