　「ほう。あの者がそんな事を…」

　「陛下、よろしいのではないでしょうか。わざわざ他の者を奴の教育なんぞに当てるよりも勝手に修行して強くなってきてくれるのならこちらとしては儲けものかと。

　それに今は奴にこの国の軍事力を見せない為に兵達にも軽めの訓練しかさせられていないですし、出て行ってくれるのなら早めに出て行って貰った方がこちらとしても損害も少ないかと思われます」

　「確かにエドの言う通りやもしれぬな。わかった――――許可しよう」

　「そういう事だサザン、奴に伝えろ。わかっておると思うが奴につけれる様な護衛など一人もいないからな。あんな者でも一応は勇者、魔王を倒すまでに馬鹿な事をして勝手に野垂れ死んだりせぬ様お前の方からもしかと言っておけ」

　「……っは！」

　ここは王宮の中の玉座の間――――私はナガヒサからの冒険者になりたい。という希望を陛下に伝える為にここに来ていた。

　この国で初めての勇者召喚によって呼ばれた勇者ナガヒサ。

　俺から見るにあいつは決して悪い奴ではない。少しばかり適当な所もあるし何を考えているのかわからない事も多いが……。

　だがこの国――いやこの王宮の中であいつはまるで腫物の様に扱われていた。

　そのわけは一部の者にしか伝えられてはいない……そしてそのわけを知る俺にはそれが仕方の無い事だとはわかっている。

　わかってはいるのだが果たしてそこまであからさまにする必要はあるのだろうか。あいつだって来たくて来たわけじゃない筈なのに。

「それに奴には色々と繋がりをつくって貰った方が後々……くっくっく」

　そんなエド様の呟きも聞こえていないふりをせねばならない。

　結局のところ俺にはどうしようもないのだ。

　俺は王に忠誠を誓う王国騎士団の一人、陛下に文句など言えるはずも無い。

　だがこの板ばさみ的な現状は――――正直かなり心苦しかった

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