第6話 はぁ...外出たい
この世界に来て早くも1週間が経過した。
結果的に言えば特に問題は無かった。訓練とは言っても基本的な剣と魔法の使い方を教わっただけだったし、剣の方は実際に身になったのかどうかはわからなかったが魔法の方は正直凄く助かった。
俺のスキルは実際に見た物じゃないと具現化できないみたいだし色々な魔法を直に見れたのはかなり大きい。
(まぁでも設定上火属性以外は出さない様にしないといけないからまだほとんど試せていないのだが…)
そして全く別の話にはなるのだが、この世界で生活していく上での新たな悩みが生まれた。
それはこの街にいる大体の人間が俺の苦手なタイプの人種―――だという事。
というかそれはきっと俺だけではない筈、元の世界にいた大体の人間はこの国の貴族連中の事を好きにはなれないんじゃないかと思う。
俺を召喚したという事で飼い主気分にでもなっているのか、やたらと偉そうな王と王妃、そして息子娘諸々。
このレスティアにはオームハルト・ウォン・レスティアという名の王とその妃(名前知らない)、そして第一王子のレクト、第一王女のカーレット、第二王子のスイルがいる。
皆が皆、全身をくまなく派手な装飾品で包んでいる為多少の貫禄の様なモノは感じたが、明らかにこちらを見下している様子の王。
王妃は俺の前で何かを話す様な事は基本的に無いのだが、それはただ寡黙的なだけって感じでは無く俺なんかと話す事など無い。という感じがありありと伝わってきていた。
王子たちはどちらも大体俺と同じぐらいの年って感じで、姫様は高校生ぐらいに見えた。
とりあえずこいつら全員に言える事は………俺に魔王討伐を頼んでるんじゃない
――――命令してるんだ。まるで俺を生みだしたのがさも自分達かのような振る舞い。
正直な話、確かにこの世界に俺を呼んだのはお前らだよ。でも別にお前らに命を貰ったつもりなんて無いし、なんならお前らの都合で勝手に呼ばれただけだ。
だから間違ってもこいつらに感謝なんて出来るわけが無いのだ。
後は貴族達も、俺が魔王を倒す為に召喚された勇者だと知っても特に態度を変える様な事はなかった。
(もしかして勇者って平民と同じ扱いなのかな……泣ける…)
この国では力が強い。とかそういった事はさして重要じゃないのかもしれない。
「あーあ、なんかモチベ上がらないなー。少し考えたんだけど――――サザンさん俺冒険者になってみたい!修行の一環て事でどうにかならないかな」
このサザンと言うのは最初に俺の案内をしてくれていた騎士が急に他の仕事に駆り出され、ポツンと1人でボーっとしていた俺に声をかけてくれ、そのまま色々と教えてくれている騎士の事だ。
歳は20代半ばを少し過ぎた様な感じで兄貴肌ってやつなのだろう、この人だけは他の奴らに比べ少しだけ俺に優しい気がした。
だからか個人的には最近結構打ち解けてきた様な感じがしている。
(たまに暗い顔をして考え事をしてるのが気になるけど……)
「なるほど。悪くないかもしれないな。お前もずっと城の中じゃ息が詰まるだろうし……わかった。私の方から陛下に進言してみるとしよう」
「まじ?ありがとサザンさん!」
なんだかんだと言ってもやはり異世界と言えば冒険者。そんな風なイメージを持っている人も多いのでは無いだろうか。
そして俺もその枠から漏れる事は無く、中世ヨーロッパの様な街並みを見ても、騎士や魔法使い達と鍛錬をしていてもやはり心の中にはいつも冒険者願望があった。
(ギルドとかも行ってみたいし……そこで受付のお姉さんや他の女性冒険者達と奏でる愛のハーモニー…)
怪訝そうな表情を浮かべているサザンを横目に俺は、これから始まるであろうほろ苦くも甘酸っぱい冒険者ライフを夢想する。
(正直……たまりません。)
「……フフフ」
「なに気持ち悪い笑い方してんだ。まだ許可が下りるとは決まってないからな」
「俺はサザンさんを信じてますから。」
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