物語
白原がテーブルの上で写真を並べる様子を見つめながら、小笠原はその行動に疑問を抱かずにはいられなかった。「どうして…どうしてそこにその写真を置いたんですか…?」
「ん?」動きを止め、自分の作業を見下ろして、一瞬確認するように沈思する。軽くうなずき、白原は微笑みながら視線を上げた。そしてコラージュの一部を指でなぞった。
「ほら、私は写真ボードで物語を作るのが好きなの。イベントに来られなかった生徒でも、雰囲気を感じ取れるようにね。」
一枚の写真をそっと少し手前にずらしながら、それを軽く指でトントンと叩いた。「例えば、この写真。焚き火の親密な雰囲気には、踊っている人たちのクローズアップが合うの。視界の端に見える周囲のぼけがちょうどいい感じよ。ボード全体をたどれば、一つの旅のようにすべてがつながるの。」
霞は少し困惑した表情で白原を見つめた。言われたことを理解したとは言えない。恥ずかしそうに頬をかきながら、小さく首を振った。「ごめんなさい、私にはよくわからないです、白原さん…」
「ふふ、それはいいのよ。無理もないわ。」椅子を少し横に動かしながら、白原は片方の口角を上げてテーブル越しに霞を手招きした。「こっちに来てみたらどうかしら?そしたらもう少しわかるかも。」
霞は一瞬ためらい、小さく何かをつぶやきながら言い訳を探しているようだった。しかし、彼女自身もなぜ言い訳を探そうとしているのかわからない。さらに数秒考えた後、ゆっくりと席を立ち、テーブルの周りを回りながら、座っている白原の隣に立った。
霞が一歩近づくたびに、白原の存在感の温かさがその間の空間を満たすように感じられた。霞は微妙な緊張感を覚えながらも、白原がコラージュを指差して促すのを目にして、その場に立ち止まった。
「これはね…記憶を切り取って、そこに命を吹き込むようなものなの。それぞれの写真はただの画像じゃなくて、その場の感情の一部なの。霞ちゃんもその感覚をよく知っているでしょう?だから、最初から見てごらん。」
霞は少し顔を近づけて、白原が指差した写真をじっと見つめた。その顔には曖昧な表情が浮かんでいる。「最初…?うーん…」
「最初」とは、一体何を指すのだろう?最初に配置された写真のことだろうか?白原の言葉を考慮すれば、自分の感覚で判断するしかなさそうだ。
霞の視線は白原が作り上げたゆるやかなコラージュの写真をたどった。校門から見下ろす景色が日没直前に撮影された写真。ポーズをとる生徒や笑い合う生徒たち、まさに祭りの一場面だ。しかし、写真から伝わる感情には、時の流れが描かれているように感じられた。
ゆっくりと進行する—まるで昼から夜へと時間が移ろうように。写真は、日が沈む前の市場を前景にしたものから、暗い空を背景に人々に焦点を当てたものへと変化していく。
写真の移り変わりは、そこにいた時間をそのまま追体験しているような感覚をもたらした。それまで霞にとって写真は、目にした出来事を確認するためのものにすぎなかったが、今は違う。霞は指先をわずかに動かしながら視線を写真の流れに沿ってたどり、言葉にしようとしたが、すぐには出てこなかった。
「今なら少しはわかるでしょう、霞ちゃん?同じ雰囲気の写真を近くに配置するのが大事なのよ。そうすれば、見る人も祭りの物語を感じられる。」白原は霞の柔らかい脇腹をつつきながら、にやりと笑った。
「にゃっ!」霞は思わず飛び上がり、驚いて後ずさりした。「し、白原さん…!」頬を赤く染めながら、霞は下を向いて呟いた。
白原は小さく笑いながら肩をすくめた。「ごめんごめん、ついね~真剣な顔があまりにも可愛かったから。」
「な、なおぉ…」霞はかすれた声で抗議しながら、首を振りつつ脇腹を手で押さえた。白原に「可愛い」と言われるたびに、霞は妙な気持ちになる。それが女の子に言われるからだろうか。それともただ単に恥ずかしいからだろうか。「しーっ…」
「ふふふ…ただからかってるだけよ。」白原は小さく伸びをしながら立ち上がり、霞の隣に並んだ。そして、自分が並べた写真をもう一度じっと見つめた。思案にふけったような表情で最終確認をしている。「でも、霞ちゃんはちゃんとわかってくれるのね。他の人は、私が考えすぎだって言うけど。でも、あなたならこの気持ちを理解できるでしょう、小笠原さん?」
白原の期待に満ちた視線を受けながら、霞はぼんやりと立ち尽くしていた。もう一度写真に目を走らせると、その変化が再び目に入ってきた。空気のように軽やかな始まりから、焚き火の温かく親密な夜の感覚へと進んでいく。
霞はスカートの端をぎゅっとつかみ、少しだけ身を落ち着けるようにしながら、そっとうなずいた。「うん…なんとなく、わかる気がする…」
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