沈黙の中で見つけた安らぎ

「はいはい、今回はこれくらいで勘弁してあげる。でも、霞、本当に可愛いよ。」そう言いながら、なおは霞のメガネをつまんでいた指を離し、代わりにおでこを軽くはじいた。「さて、写真を見直す作業に戻らないとね。提出してくれてありがとう、小笠原さん。」


「か、可愛いって…?!あ、あの……そんな恥ずかしいこと言わないでください…」霞は、頬にうっすらと赤みを浮かべながら、なおがまたからかう理由を考えつつ、自分のカメラのストラップやボタンをいじる。


 からかわれるのは決して嫌ではないけど、同じ女の子にこんな風に恥ずかしい思いをさせられると、自分が子供っぽくてバカみたいに感じる。


 …子供っぽい……


 彼女はいつも、子供らしく振る舞える機会があまり与えられなかったと思っている。だから、からかわれて恥ずかしい思いをするのも、そんなに悪いことではないのかもしれない。ある意味では、それは愚かに見える代償を払ってでも、少し解放される感覚だ。


 なおが再び机に座り、真剣に写真を配置する姿勢に戻ると、霞はその場に立ち尽くす。ただ考えているようで、実際はただ動揺しているだけだ。まだ低く暖かなオレンジ色の夕陽が、無機質な壁に柔らかく映えている。


 もしかして……もし白原さんみたいな人がもっと周りにいたら、こんなに自分が透明だと感じなくなるかもしれない。彼女が私をこんなにバカみたいに感じさせるのに、ちっとも小さく思わせないのは不思議だ。


「小笠原ちゃん。」


「ぁ―!」ぼんやりしていた霞は急に現実に引き戻され、なおの方に目を向ける。なおはただ、軽い微笑みを浮かべてこちらを見ているだけだが、霞は自分が何か口に出してしまったのかと慌てる。


「小笠原ちゃん。帰りたかったら帰ってもいいよ。私一人でも大丈夫だから…もちろん、いてもいいよ。どっちでも、君が決めていい。」なおは手の上に顎を乗せながら、自分のメガネ越しに霞を見上げる。


 ここで帰るとなると、家に帰って、今夜も兄に何を言われるのか耐えなければならない。それを思うだけで胃が痛くなる。わざわざ自分から耐えがたいことに向かうなんて、どうしても納得がいかない。


 でも、このクラブ室で、なおと一緒にいるなら……たとえ黙っていても、なおが自分に何かをするわけではないことはわかっている。学校では「怖い人」と言われ、いつも鋭い目つきで睨んでいると噂されるなおだが、少なくとも自分に対してそんなことをしたことは一度もない。初めて会った時ですら。


 数秒間、霞は立ち尽くし、答えを迷う素振りを見せるが、実際には答えはすでに決まっている。静かに机へ歩み寄り、椅子を引き出して座る。顔を少し伏せ、どこか恥ずかしそうに。「白原さんがよければ、ここに残ります……」


「もちろんいいよ。もしよければ、写真の配置を手伝って。私にはあまり向いてないかもしれないからね。」なおは小さく笑いながら、手を動かして写真を配置し続ける。それが人間のように互いにどう作用し合うのかをじっくり観察しているかのようだ。時折、なおは霞の方に目を向けるが、彼女の手は恥ずかしげに膝の上で組まれている。


 しかし、そこにあるのは沈黙だけだ。なおは話題を振ることも、何か言葉を繰り返すこともない。ただ黙々と写真の作業を続けることに満足しているようだった。


 昔覚えたフィンランドのことわざがあった――自分が人前で黙っている理由にしてきたものだ。『沈黙は金、雄弁は銀』というふうに覚えている。でも、それを実感したことはなく、他人の前で黙っていることを自分に納得させる浅い口実でしかなかった。


 けれど、今のこれは「気まずい」とは言えない。なおが自分ではなく、他の何かに集中していることに、不快感を覚えない。もしかして、これがそのことわざが意味する感覚なのだろうか?「こんにちは」や「おはよう」などの当たり障りのない挨拶ではなく、何か重要で価値あるものを待ち続ける、そんな感覚なのかもしれない。

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