回る車輪
この暑さで適切な服を見つけるのはほぼ不可能だと感じる。彼の持ち物と言えば、学校の制服と最低限の衣類だけだ。それも、この高温には到底適していないものばかりだ。
しかし、この暑さを耐え忍ぶか、家にこもり続けるかしか選択肢がない。そして、家にいる時間はすでに十分すぎるほど過ごした。
家の間取りや中にある物の配置は完全に頭に入っているが、クローゼットの中身にはほとんど注意を払っていないのも無理はない。実際、季節や気温に合わせた特別なシャツやパンツを多く持ちたいと思うことはない。
祖母が買い与えてくれた服だけが残っている。それらは質が良く、今でも十分着られるし、買い替える必要もない。
だからこそ、白いTシャツとスウェットパンツがこの天候でも十分なのだ。というより、彼はすでにそれを着ている。部屋に閉じこもって同じ四つの壁を見つめるという選択肢だけは避けたい。スウェットパンツの重みすら耐え難く感じるのだから。少しでも動くためには、この暑さに立ち向かうしかない。
長く外に出るつもりはないので、持ち物はシンプルなガラケーと市場用の財布だけだ。
床板がわずかにきしむ音を立てながら、彼は家を歩き抜け、玄関のタイルに靴下を擦りながら履き慣れた靴を履く。同じ結び方で靴紐を結びながら、つぶやく。「そのうち新しい靴、買おうかな……」
ため息をつき、体を起こすと古びた重い障子を引き開ける。スムーズに動くことのないその枠が嫌でも気になる。光と熱が押し寄せ、細い廊下や彼の顔、目に入るもの全てを明るく照らす。本能的に手を上げて目を覆う。どれだけこの光景に慣れても、この光だけは受け入れがたい。
「中も外も空気は同じだな……。ああ、暑いけど湿気がないだけマシか。」
外の空気に救いを感じることはできず、海へ行く意欲が少しそがれる。それでも、涼しい浜辺の期待が彼を動かす。加えて、この町の海は、美しいダイヤモンドのような輝きを見せる。まるで上質な写真の一コマのようだ。
家の外観は、彼にとってもはや動かず変わらないものの一部だ。かつて濃い色をしていた木の壁板は、長年の日差しで灰色に漂白されている。屋根の瓦には苔が群れをなし、雨どいは葉っぱの溜まり場となっている。それらに手をつける気力はまだ湧かない。
排水管の修繕のような細かな手入れはしてきたが、外観全体を修復する作業は彼にとってあまりに大きな負担だ。いっそ冬になり、雪が降る前の寒い季節に少し手を加えようかとも考える。しかし、今はただこの夏が早く終わることを望むばかりだ。時間がもっと早く過ぎてほしい。
手を下げて日差しをまともに浴びる。目を細めながらも、彼は敷居を越え、障子を慎重に閉めた。
いつも置いている場所に――彼の自転車がある。正確には、祖母が使っていたものだろう。年季が入っているが、家と同様、信頼できる存在だ。それを処分する気にはなれず、新しい自転車が必要になる場面もなかったので、この四年間ずっと一緒だ。
ギアはない。ハンドルにはテープが巻かれ、リムには小傷が目立つ。近所の買い物程度の短い旅に耐え続けたその自転車は、彼にとって大切な道具であり、今では学校に停めておいても盗まれる心配すらない。
周囲の通りは静かで、人影もまばらだ。ただ疲れた鳥のさえずりと、もちろん蝉の声が響く。自転車にまたがり、馴染み深いその感触を確かめながら、携帯と財布をスウェットパンツの深いポケットにしまい込む。この真昼の暑さの中、町全体が息をひそめているような気がした。
砂利道を蹴って進み、最初のペダルが少し引っかかりながらも回り始める。動き出すと、彼はわずかに意識を手放す。孤独の感覚が吹き飛ばされるのは、ただ動いているという事実のおかげだ。
しばしの間、すべてが少しだけ生き生きとして見える。中学生の頃、この道をどれだけ全速力で駆け抜けたか。そのたびに町の人々から叱られ、事故の危険を警告されたものだ。もちろん、この暑さではそんな無茶をしたくはないが、その記憶が少し楽しい。
家々はベージュや茶色のぼんやりとしたコラージュとして流れていく。屋根は電線で絡み合い、日陰で休む野良猫や、ただ動くためだけに掃除をしているおばあさんたち――多くが見覚えのある人たちだ。どこかで水を撒いたばかりの庭の匂いがかすかに漂う。この暑さで植物が十分に世話されているのはいいことだ……自分も後でちゃんとやらないと。
町全体が彼の家だけで構成されているわけではないと、時々思い出す。それでもすべてを見尽くしている彼にとって、この小さな冒険がもたらす気晴らしは歓迎されるものだった。
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