第3話 霊能力 零


話しは少し飛ぶけど……墓石店や葬祭の仕事で一番重要なのはなんだと思う?


そうねぇ……短期じゃなくて、長ぁ~く続ける為に。


営業力? 人当たりの良さ?


確かにそれもあるわよぉ~


だけど、一番大切なのは『霊能力がない事』なのよ。


それが一番重要なの。


特にお寺や霊園などの区画を販売するタイプの石屋は、かなりの時間を墓地で過ごすから……霊能力なんてあったら最悪な訳よね。


だから、もし石屋……特に墓地を販売するタイプなら、霊能力や霊感が無い。


これが大切な条件なのよ……


◆◆◆


それで私なんだけど、ご先祖様から受け継いだ物があるのよ。


江戸今泉の名を持つ今泉石材の歴史はかなり古いのよ。


実際には江戸時代よりはるか前から存在していたのね。


だけど、江戸時代に坂出藩のご用達になり葬祭と墓石を受けるようになり、江戸今泉と言われる様になったのよ。


そこから8代目が私のお父さん保なわけ。


なんで坂出藩の出入りになれたのかって?


それはね……今泉の人間には『霊能力が無いの』


世の中に霊能力が低い人間は沢山居るわ。


だけどね……霊能力が全く無い人は殆ど存在しないのよぉ。


この、全く霊能力が無い人間が今泉家の人間なのね。


尤も、全員じゃ無くて一世代に一人しか生まれないのだけどね。。


お父さんは4代目だけど、婿養子。


私の前の世代では男の子が生まれなかったから婿養子を迎えたのね。


だから能力と言うならお母さんの真理子なんだけど……


女だったせいか、私を産んだらもうゼロじゃ無くなったのよ。


それでも霊能力は少ないんだけどね……


話しは戻るけど、今泉家のこの霊能力が無い事に目をつけたのが坂入藩の殿様なわけ。


霊能力が無いと言う事はいかな悪霊でも干渉できない。


お互いに何も出来ないのよ。


だから坂入藩の殿様は呪われたり祟られたりする工事を全部、今泉家に頼んだのよ……その仕事の結果大きくなり江戸今泉と呼ばれるようになったのよ……尤も今は歴史が長い老舗なだけで、弱小石屋だけどね。


そして、真理子の娘……私、陽子はこの霊能力が無い人間なのよぉ。


つまり『霊能力 零』その後継者が私なわけ。


そのせいで……やたらと……面倒くさい事に良く巻き込まれるのよね。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る