吐き気

 しかし高校生になり、彼は考えた。“本当にそれが人間の行いなのか”と。だから彼は攻撃するのをやめた。しかし周りからの攻撃はなおも続く。彼は耐えた。“あれは人間ではない。同じにはならない”彼はそう固く信じていた。そのように過ぎていった3年間は彼にとって苦しいものだった。いい思い出などなにひとつとしてなかった。

 家ではどうかといわれれば、それもまた彼にとって苦しいものだった。彼をロボットとして迎え入れた夫婦は、彼を真っ当な人間に育てようとした。スポーツをやらせたのはおそらく母親の指示だろう。彼の母親はスポーツ好きで、我が息子もそのように育てたかったのだと思う。彼になにか辛いことがあっても「何でできないの?」と彼を恫喝するばかりだった。彼にはもはや選択権などなかった。言われたことをやって、できなければ罵倒されて、またやらされる。そのような日々が続いた。また彼は大の偏食家であった。おそらく製造時にミスがあったのだろう。彼は野菜やきのこ類などを毛嫌いした。しかし真っ当な人間に育てようとした母はそれを許さなかった。彼がいくら吐き気を催そうとも、彼の口にそれをねじこみ、切迫した彼がそれを口から吐き出すと、母はそれを蔑むような目で見て、大きなため息をこちらに見せ付けるのだった。そして繰り返しこう言う、「なんで食べないの? もうあんたにご飯つくってあげない」彼にしてみれば難しい話だ。製造時のミスが原因なのに、彼自身は自らを人間だと思い込んでいるせいで話がややこしくなる。彼にとってどうにもできない日々は、まるで永遠であるかのように続いた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

人間 山田 @tyakjokejdmnkogkjjdhj

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る