人間
山田
生誕
ある夫婦のもとにロボットがやってきた。彼は夫婦の第三子として迎えられた。彼は自分自身を人間だと思い込んでいた。それは彼のCPUが誤作動を起こさないよう仕組まれたプログラムによるものだった。だから彼はまるで人間のように過ごした。物心がついてからは周りの子と一緒に遊んだり、スポーツの習い事なんかをして過ごしていた。彼は身体も大きく、運動神経も悪くなかったので、存分にスポーツを楽しんでいた。その中で起こる失敗や挫折も、人間だからこそ起こりうるものだと彼は思っていた。そして家族や周りの大人たちも、彼がそれに苦しむさまを見て、なにか満足気な顔をしていた。
中学生になると、彼の状況は一変した。周りの人間たちが彼を攻撃したのだ。しかしなぜ自分が攻撃されるのか彼にはわからなかった。同じ人間なのに。だが周りから見れば、彼は不気味なロボットであった。得体の知れないもの、正体のわからないものだから攻撃して自分の配下に置こうとした。犬を躾けるのと同じことだ。どちらが上かわからせてやろうという魂胆だったのだろうと思う。彼も最初は戸惑ったが、彼の中にある適応プログラムが働き、彼を変えた。彼はそのような関わりが普通なのだと考え、自分よりおとなしい人間に対し攻撃をしかけた。そうすると彼の中にある種の快感が生まれた。おいしいご飯を食べたときと同じだと彼は考えた。だから何度もそれを味わった。依然まわりの人間たちは彼を攻撃していたが、彼もそれを他の人間にやることにより、彼の世界はぐるぐると回っていた。
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