第6話 乙女ごころ
私は自転車通学である。その道程は険しく、自宅から高校まで自転車で片道が一時間の距離を毎日通っている。そこは若い高校生なので何とかなっている。
結果として筋肉質になり、女子からの憧れ度が増すのであった。運動部ではなく書道部を選んだのもこれ以上モテるのを防止する為である。
そして、日常の授業が始まり、学業に勤しむ。この高校は進学校ではないが国立に行けたらいいなと思う日々である。
それから授業の合間の事である。廊下にある水道水を飲んでいると。かすみが寄ってくる。
「麗葉、遊ぼ」
私は女子にモテるのは慣れているが、このかすみは違っていた。最初から自分の所有物として私に接してくるのだ。
運命の出会いと言えばそれまでだが、私はこのかすみに恋をしている。そう、あのファースト・キスが忘れられないのだ。
「遊ぶって何をするのだ?」
「勿論、演劇でのお姫様ごっこよ」
詳しく話を聞くと私が王子様でかすみがお姫様になり、演劇の様な遊びらしい。
「居た、居た」
かすみが声をかけたのは書道部の佐藤、鈴木、田中であった。
「三人は悪役ね」
結果、廊下にて五人で簡単な演劇の様な立ち振る舞いをした。休み時間の廊下で行われた一コマは目立つに目立った。
『キャー、麗葉様カッコイイ』
私のファンから叫び声が聞こえてくる。
「はい、お終いです。佐藤、鈴木、田中はお疲れさま」
三人は機嫌が悪くなる事なく去って行く。
このお姫様ごっこは私とかすみに人徳があって始めて成り立つ遊びである。人徳が無ければヤジが飛んできただろう。
しかし、これなら演劇部に入れるなと思うのであった。
私は頭をかきながら教室に戻ると、お王子様か……私は女性であり、心も乙女なのである。改めて考えると複雑だ。
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