Iblim外伝 「潰滅の騎士」
沼モナカ
第1話
神とは何であろうか。
この世に生を受けた者であれば誰もが通るであろう。
ライルはその事を生まれた時より考え続けていた。
本日も教会の聖塔の前で祈りを捧げ続けながら延々と自問自答を繰り返す。しかし、今までがそうであったように、結論は出ない。
他人であれば異常な時間が過ぎていた。彼にとって祈りは神との交信であり、2,3時間も塔の前に居続けるのは日課である。
宛の無い祈りが終わり、目を開けて聖塔を見上げる。この世界であれば教会に設置された聖塔は誰もが目にする。聖女が光と共に現れ、聖塔へと導く形を描いた彫刻であり、この塔に救いを求める者がいれば、悔い改めのために懺悔を行う者もいる。
ライルはそんな彼らを唾棄している。人は神に愛される存在だ。熱心そうに聖塔の前に座する人間など嘲笑されるべき道化ではないか。
立ち上がり、後ろを見るとよく知る人物が立っていた。ガイストという同期であり、仕事仲間である。
「よ。そんなにお祈りに時間を掛けて体が痛まねえか?鎧を着っぱなしてたら持たないぜ?」
「審問の鎧を脱ぐなど不敬だぞ。私達はその為に存在しているからな」
「まあ、硬い事言うなよ。仕事だぜ? その前の腹ごしらえの誘いを断るかい?」
ガイストは気さくであり、仲間内を取り持っているのはライルでも気づく。彼の誘いを無下にするほどライルは愚かでも無かった。
カン、カンと鎧の足音が遠ざかる。カン、カンと武具を鍛える音がする。ガヤガヤ、ガヤガヤと雑踏が広がり、パチパチと松明の音がすればここは教会では無い。
教会を抱えた対邪教徒審問部隊の前線砦は昼夜を問わず活動を続けていた。
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