第8話

大声で叫ぶ。


「ごめん俊介くん、ごめんね……! 私ったら浮かれて、出かける前に干していくのすっかり忘れちゃってた!」


俊介くんはハンバーグをひっくり返しながら私を見つめて微笑んだ。


「全然。そんなに嬉しかったなんて、もっと手伝いにきてあげたいくらい。それに、洗濯のこと覚えていてくれたのははるだもんねー?」

「えっ、そうなの?」

「はるが、『おいたん洗濯しないのー? 今日晴れだよ?』って聞いてくれた」

「そうなんだ……!」


本当、子どもって意外な程に大人がすることを見て覚えている。


「はる良い子にしてたんだねー! ありがとう!」

「うん! おかあさんはかわいくなったね!」

「わああいい子! ありがとう! はるの方が百倍かわいい!」

「しってるー! 『きらりんまじかるー』!」


自分の捏ねたハンバーグを見るのに飽きたのか、はるはお気に入りのアニメの呪文を唱えながら居間の方へ走っていった。


「にひひひ。幸せ空間ですなあ」


俊介くんはご機嫌でフライパンを揺する。

あの、ハンバーグなのでそんな揺すらなくて大丈夫です。

でも放っておいて私は付け合わせのサラダを作った。

みんなが帰ってきておかえりラッシュをしたら、全員で晩ごはん。


「はんばあぐ! あのね、あの。はんばあぐはるがつくったんだよ!」

「えっ、まじ」


はるが豪快にフォークで突き刺したハンバーグを口に運びながらご機嫌で報告して、圭介さんが目を丸くする。


「そうそう。捏ねて成形してもらった。なー? おいたんと作ったもんね」

「ねー!」

「すげえじゃあん」

「おいしいわねえ」


圭介さんははるを褒めながらますます味わうように食べ、お義母さんたちも目を細めた。

この兄弟、食べるときのおいしいって顔が特にお義母さんそっくりなんだよな。

同じような幸せそうな表情が並んでいるのがおかしくて微笑む。

圭介さんも俊介くんも食べ方が綺麗で、お義母さんがどろどろに汚しながら食べているはるの世話を焼いてくださっているのを見ると同じように育ってくれそうで有難い。

お義母さん達も「美由紀さんだってゆっくり食べて」と子育てを助けてくださるので、私はとっても楽をさせてもらっている方だと思う。


「兄ちゃんもお嫁さんのでっけープリン食べたの」

「ん? 超うまかったよ」

「いいなー!!」

「来るの予告してくれたら作ります、作りますから!」


まだプリンの話をしていた俊介くんに笑ってそう言っていたのに、次に彼に会うことになったのはまたしても突然だった。

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