第5話

写真撮ろう写真、と言って俊介くんがスマホを向けてくる。


「えー? はる達じゃないんだし私の写真なんていいよー」

「いーや、兄ちゃんに見せる! お嫁さんお洒落したの久しぶりに見たもん」

「いつも適当な格好ですみませんねえ……」

「そういう意味じゃない。いつも自分のこと後回しで子ども育ててんのほんとかっこいいよ。ほら、かわいく笑って!」


真剣な声で普段の頑張りを認められて、なんだかぐっと胸が詰まる。その途端に有無を言わさずパシャア、パシャアとシャッターを切られた。


「ね? かわいいっしょ」


見せられた画面には照れ臭そうに笑っている私がいる。


「兄ちゃんに送ろー。仕事中絶対テンション上がるわ」

「あはは、今更私で? そうかなあ」

「絶対だって」


さっさっさ、と片手でスマホを操作して写真を送ってしまい、俊介くんは私に手を振った。


「美容院行くんでしょ? そしたら兄ちゃんが帰ってきたときもかわいいの直接見せてやれるけど、今は今で化粧とか一番崩れてない状態だもんね」


俊介くんはにこにこ微笑んでわざわざ写真を撮った理由を説明する。


「ありがと」


こんなに言葉を尽くして褒めてくれて、きっとモテるだろうなあなんて思った。彼女とかは連れてきたことがないからいるかどうか知らないけど。


「はる、お母さんおでかけする間おいたんと待っていよう。ほらいってらっしゃーいって」

「おかあさんおでかけ? いっちゃっちゃーい! きをつけてねー!」


はるは寂しがるかな、なんて思ったけど俊介くんがいてくれるから全然大丈夫だったみたい。

いつもの私の口癖まで真似ていて、ふふっと笑みがこぼれる。


「いってきます!」

「ごゆっくり~」


俊介くんは目を細めて片腕にひよを抱きながら見送ってくれた。

ようやく一人になってもやっぱり気になるのは娘たちのことばかりで、あっあの服似合うかな、とかそろそろ靴買い換えないと小さくないかなとか。ちょっとおいしい物を食べても、同じようなの作ってあげられるかなあなんて考える。

今頃大丈夫かな、と美容院でスマホを見れば俊介くんは抜かりなくて、定期的に連絡をくれていた。


<すげー人気のお店でおもてなしを受けてる>

<カレーって頼んだのに来たのプリンだった>

<お嫁さん最近プリン作った?>


添付されている写真には肩やら膝やらぎゅうぎゅうにぬいぐるみに囲まれた俊介くんが一生懸命なはるに空の器を出されているのが写っている。

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