第34話
みんなでビーチバレーもして午前中を目一杯使いくったくたになるまで遊んだら、軽く水着の上からシャワーを浴びて着替えてお寺に帰る。みんなでお寺のシャワーに入り直してから冷やし中華の準備を手伝って、お昼ごはんにした。
「おいしー!」
「めちゃくちゃ腹減ってたもんな」
「人生で一番おいしい冷やし中華かも」
「ふはっ、先生の語彙が俺らに寄ってきちゃった」
「それは大変だね。先生駄目だよ、あんまりこの人達といると馬鹿うつっちゃうから」
「菅さんひでえ!」
けらけら笑いながら食べ終えて、他の人が台所と砂だらけにしたお風呂場を片付けている間に東と私で洗濯物。朝干した、昨日私達が除霊した時に着ていた服はみんなからからに乾いていて、全部回収してさっき着ていた水着を洗って干す。昼から干しても夕方には余裕で乾くだろう。回収した大量の洗濯物は、よく寝るときに借りる和室に運び込んで二人で手分けして畳んだ。
「東、畳むの早くて綺麗だね」
「俺ねー、洗濯は好きぃ」
「ふふ、嫌いな家事もあるの?」
「洗い物」
「じゃあこの分担で大正解なんだ」
「そう。みんな知ってっからねー」
畳んだ物は菅さんのタワー、稲辺さんのタワー、というように人別で分けて積み上げる。
「ふぃー。つっかれたー。後はみんな回収しにくるっしょー」
東がそのまま後ろの畳にごろりと転がった。
「ふふ。海、楽しかったね」
私もつられて隣りに寝転がる。顔を見合わせた東はくふふ、と笑みを漏らした。庭ではアブラゼミの大合唱。じっとしていても汗が滲んでくる。東の綺麗な腕がだらりと差し伸べられたので頰を乗せたら、思惑通りだったようで笑みが深くなった。
「腕痺れない?」
「それでも良いからくっついてたい」
「んふふふ」
あほらしいけど愛ある発言が嬉しくて笑ってしまう。
「暑いでしょうに」
「あ゛っつい。先生は?」
「暑いよ」
頰の下、くっついている部分の肌がじっとりと濡れてくる。
「でも離れないんじゃん。一緒だ」
「そういうことは思ってても言わなくていいんだ」
「どふ! あっはっは」
お腹を小突いたら東は白い歯を見せた。そうやってぽそぽそと囁き合っているうちに、心地よく疲れた体は眠くなってきてしまう。口角の上がった優しい顔で見つめられたまま頰を撫でられているのを感じつつ、私の目蓋は下りていった。
「ちょ、みんな来てみ」
「何? 亘」
「なんか静かだしいないと思ったら。いっぱい遊んでいっぱい食べて、お昼寝して。こいつらまんま夏休みの子供か」
「あっついのによくこんだけ引っ付いて。相変わらずひとかたまりだな」
「暑くないのかな」
「いや汗かいてるじゃん。暑そうだよ」
「わざわざこんなクーラーもない部屋で寝るから」
「疲れてたのかもね。最近除霊仕事多いから」
「あー、やっぱ多いよなあ。夏は肝試しとかお盆とかあるから毎年多い時期とはいえ」
「ここんとこ毎週だもん。だいぶ多いよ」
「先生が引きつけてんのかね」
「颯太。それ先生に言ったら絶対駄目だからね」
「分ーかってるよ。別にだから先生を省こうって言ってる訳じゃないし。原因があるなら何か対処しないといけないんじゃねえのって思ってるだけ」
「うん。でも先生は自分で気にしてるからさ」
「はいはい。ま、東が何とかするっしょ」
「扇風機持ってきたよ」
「おー。菅さんもすっかりうちの物自由に動かすなあ」
「心配そうに見てたの亘でしょ。まああんまり暑かったら起きると思うけど、もうちょっと寝かせてあげてもいいかなって」
「お、涼しそうになったじゃん。いいんじゃね」
「じゃ、お子様あずぽんは置いといて俺らで先ビール開けようぜ。喉渇いた」
目が覚めると私たちに向けられた扇風機が首を振っていて、お腹にはタオルケットが掛けられていた。東は隣りですぴょーと幸せそうに眠っている。誰か見にきたんだ……。恥ずかしさに天を仰ぎながら東を起こしたら、彼はそんなことより居間で既に出来上がっていたみんなを見て自分の参加が遅れたことを悔しがっていた。
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