第4話 弁当と水泳

「この前はありがとう」学校に行くと土曜日一緒に遊んだ子からお礼を言われた。

「こちらこそありがとう。みう!楽しかったよ」

「名前、覚えてくれたんだね」

「もちろん!」みうと楽しそうに話ていると他のクラスメイトからも話しかけられる。

「私のことも名前で呼んで!」「俺のことも名前で呼んでくれ!」などクラスメイトから名前で呼んで欲しいとの要望が多くなってきたため早く名前を覚えようと思った。

「静かにしろ!」名前の呼びあいで騒いでいると担任の先生が来て静かにするように注意される。

「ホームルームを始める。日直は号令!」

「はい!」今日の日直は誰だろうか。知らない子だな。

「ありがとう」号令が終わると先生は日直に礼を言って来月からプールの授業が始まるから水着を忘れないようにとの連絡がされた。

「もう、プールの時期なのね」

「かなは、来たばかりだから分からないだろうけどうちの学校は施設内にプールがあるからプールの授業も他の学校と違って始まるのが早いんだよ!」

「早すぎじゃないかしら?まだ6月よ?」

「早い方がいっぱい泳げるから楽しいじゃん!」

「それもそうね」

「放課後、プールに案内するね」

「ありがとう。助かるはみう」

「そんな、感謝されるようなことなんてしてないよ!」

「そんなことないわよ」私は時々、みうのことが分からなくなることがある。土曜日から飛躍的に話しかけられる機会が増えたからだ。もちろん、1度遊んだからというのがあるのだろうが果たしてそれで片付けてしまっていいのかが今の状況では判断することが出来ない。

「どうしたの?叶」

「なんでもないわ」

「ならいいんだけど」みうと話していると先生に話を聞くように注意された。それから、数学、社会、音楽と授業を受け昼休みになるとみうともう1人の少女に弁当食べようと誘われた。なぜ弁当なのかというと今日は午前放課のためだ。どうせ食べないといけないから姉さんに弁当を作ってもらっておいた。

「叶は歌うまかったね」

「そんなことないわよ」

「謙遜しちゃって!褒め言葉は素直に受け取りなさいよ」

「ありがとう!悪かったわね」

「私はみうの方が上手だと思ったわ」

「みうも上手いよね」

「歌に上手いも下手もないわ。楽しければそれでいいのよ。何事もね」

「それはそうだよね」

「それで、みう。そちらの方は誰なのかしら?まだ名前を聞いていなかったわ」

「この子は私の隣の席の光井朱里ちゃん」

「あかりね」

「あかりだよ!かなだよね?」

「えぇ、星宮叶よ」

「よろしくね。これから。ところでさ、」

「なにかしら?」

「このクラスにも星宮さんっていたんだけど知らない?」

「私が知るはずないじゃない」

「ふむ。それもそっか」

「その星宮さんがどうかしたの?」

「ん、なんでもないの。気にしないで」

「分かったわ」あかりの表情が少し寂しそうに見えた。

「さて、もうご飯も食べ終わったことだし、帰りましょうか」

「そうね」

「叶は迎えくるの?」

「もう少しで来るの思うわ」

「じゃあ、私たち自転車だから先に帰ってるね」

「おつかれさま」

「またね!」そう言って2人は帰路に着いた。

「おまたせ!」少し遅れていた姉が迎えに来てくれた。

「もうちょっと早く来てよ!」

「悪かったわね。それで?友達と弁当食べれて楽しかった?」

「えぇ。それと姉さん、弁当美味しかったわ」

「口にあったなら良かったわ」

「早く帰りましょ」1ヶ月後、プールの初回授業の日、全員楽しそうに泳いでいたが1名のみ泳げない者がいたため、放課後はクラスメイト全員で水泳教室をすることになった。講師は水泳の得意な生徒だ。

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