第7話

中学の制服を最後に着るのが……



好きな人のお葬式だなんて……そんなの……ないよ。




太洋のお葬式が済んで、あたしは1人いつもの海に向う。



飾られた写真を見ても、寝ているような死に顔を見ても涙も出てくれない。



太洋の友達は皆、泣きに泣いていたのに……。




交通事故……だったそうだ。



飛び出した小さな女のコを庇って、車に轢かれたと。



光さんが教えてくれた。



その女のコの名前は
























“海”



ちゃんだったそうだ。



太洋?


太洋アンタ、本当に“海”が好きなんだねぇ。



自分の命を投げ打つほど。



潮の香りが濃くなっていく。



慣れた道。


海に続く道。



必ず……隣に……太洋が居た……のに。



居ない、居ないっ。


どこにも居ないっ。




「太洋?太洋?太洋!!」




来たよ!!


あたしが来たよ!!




「太洋っっ!!」




辿り着いた、いつもの砂浜。



あたしは叫ぶ。




「太洋!!」




初めて一人で見る海はー、冬のように黒くもなく。


夏のように澄んでキラキラもしていない。



凪いだ深い深い青だった。


全てを受け止めてくれるような、受け入れてくれるような青だった。



ずっと、ずっと、太洋とこの海を一緒に見れるのだと思っていた。



太…洋。


太洋。



バカタレッ!!


バカタレッ!!


バカ……タレぇええええっ!!



ジャブッジャブッジャブッ!!



あたしは海へ。




バシャァアアンッ!!



アンタが苦しんでる時、あたしはっ!!


あたしはっ!!



何も出来ず、知りもせずっ!!




「あああああああああああっっ!!」



「海ちゃんっ!!」



「ああああっ、太洋っ!!太洋ーーっ!!」



「ダメよっ。ダメ!!」




















「うわぁああああっ!!」




嫌だよ、嫌だよっ!!


太洋ーーーーーっ!!

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る