第6話

高校合格のお祝いに、あたしはスマホを買ってもらった。



嬉しくて一番に太洋に報告した。




「マジかっ」



「良いでしょ」



「良い、けどまぁ、お前がこっちに来るんだから俺は必要ねぇな」



「っっ」




どうしてこの男はサラッとこういうことを言うのか。




「もうすぐ行くけど、電話番号教えとくから、寂しくなったらいつでも掛けてきて良いよ」



「おー、お前も寂しくなったら掛けてこいよ、家電に」



「家電かっ」




そんな会話をして笑いあったんだ。


笑いあったんだよ。




その二日後ーー。



スマホが着信を告げる。




「ん?太洋?」




なんだ?なんだ?


まさか本当に寂しくなったの?




「どうした?太洋。あたし明後日にはそっちに」



「海ちゃん」



「……光さん?」




太洋だと思って話した相手は、太洋のお母さんだった。



どうして、光さんが?



ザワザワする心。


何故だろう、この後の話を体が、心が全力で拒否している。




「海ちゃん……」




それは光さんの声が悲痛に満ちていたからだろうか。




「気をしっかり持って聞いてね」



「え……?」



「「…………」」




息苦しい沈黙の後

























「太洋が死んだの」



「……え?」




なんて?


太洋が?




「光さん、まだエイプリルフールには早」



「太洋が死んだの、海ちゃん」



「!!」




淡々と言われる言葉。



太洋が死んだーー?



嘘だ、だって、そんな


あたし




「海!!」




立ち眩みを起こしフラついた体を母に支えられる。




「海ちゃん!?海ちゃん!!」




太洋、太洋。


嘘だよね?


海に行けば会えるよね?



そこであたしは意識を失った。




“海っ”



太洋ーー。

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