第5話

中学三年の冬ー。




「うわぁああああっ」




あたしは港町に居た。



もちろん受験しに、である。



そして初めて、本当に初めて、ココで冬の海を見た。



荒々しく最早青というより、黒いっ。



波も荒く、泳げたものじゃない。




「冬になり泳ぐとか、バカか」



「潮の匂いも凄いーーっ」




風が強いからか、町中に潮の匂いが。




「カッコ良し、冬の海!!」



「目、キラキラさせて」




隣にはいつもの太洋。



父と母を説得して、母はすぐに許してくれたけど、父がなかなか許してくれず……。



祖父母の家から通うとようやく許しを得て、ココの高校を受ける。



受かれば、ずっと大好きな祖父母と海と……太洋と一緒だ。



今からワクワクが止まらない。




「海」



「うん?」



「受かるぞ」



「おうっ」




あたし達は拳を合わせ、高校の門を潜った。



























そして春ー。



結果は……
























二人とも合格だったーー。




「やったぁあああっ!!」



「よっしゃぁああっ!!」




張り出された合格者の張り紙の前で、あたし達は嬉しくて抱きあった。




「「!!!!」」



「「……」」




もう、自分の気持ちはわかっていた。



あたしは太洋が好きだーー。

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