第22話 私の王子はニヤニヤです
「……かっこいいですよ」
「えっ、え、うそ、」
「……ほんと」
かっこいい、と言われただけで一気に耳が熱くなっていた俺には、彼女が照れながらも上目遣いで俺に言ってきた「ほんと」が、もうトドメの一撃で、俺は、凄く、胸が苦しくなって……本当に、本当に可愛すぎて……今も、頭に残ってしまって抜け出せずにいる。
「ふふ、」
「坊っちゃん?」
「ん〜? あっ、ううん、なんでもない……ふふ」
最近、ついにあの子が、俺をかっこいいと言ってくれた。思い出す度に幸せでいっぱいで、つい口がニヤけてしまう。
「……以前、お二人でオセロなどをなされた時から、ずっと坊っちゃんは嬉しそうにされてますね」
「……えっ、わかっちゃう?」
……そういえば、義兄さんに会った時も
『……どうしたんだ』
『……えっ??』
『何かあったんだろ?』
『ええ、な、なんでもない、ですけど……』
『ふぅん……?』
そういや、メイドもなぜか……
『……!? 王子!?!?どうなされたんですの!?!?』
『え、ええ!?』
『な、何かありましたの!?!?!? ぜひお聞きしたいですわ、わたくし!!!!!』
『え、でも……』
『アッ、そうですわよね、言えませんわよね!!! わかっておりましたわ!!!!!』
『え、ええ……? だから何が…』
『ご安心くださいまし!! 王子の恋愛事情に首を突っ込むつもりはございませんわ!!! ただもし!!!!もしまた進展しましたら私達にもお教えくださいね!!!では!!!!』
『あ、待っ……行っちゃった……』
「はい、じいにはわかりますよ。何があったのか、こっっそり、こっっっっそり教えてくださってもいいんですよ……?」
「実は、」
「はい……」
「ついにね……」
「つ、ついに……!? ついに!?!?」
「……あの子が、俺のことかっこいいって…」
その瞬間、ズコーーッとじいが倒れる。
「えっ!? あっ、ごめん、好きって言われたわけじゃないんだけど……」
「……すみません、じい、戸惑ってしまいました……ですが、良かったですねっ、坊っちゃん!」
「うん、なんでかっこいいと思ってくれたのかイマイチわかってないんだけど、ふふ、かっこいいって、ふふふ」
「うふふ……坊っちゃんはいつでもかっこいいですからねっ」
「えー? ふふ、そうかなぁ?」
「そうですよぅ!もう!うふふ!」
じいが窓を拭きながら、うふふと笑っている。
「じいって、いっつも俺のこと応援してくれるよね」
「当たり前じゃないですか! じいはいつだって坊っちゃんの味方ですっ!!」
「……ありがとう」
「ふふん、じいも昔はモテたものですよ……まぁ、今もモテるかもしれませんが、女の子たちにそれはそれは……」
「う、うん……」
「あの頃はかなり、じいもイケイケでしたから……まぁ、今でもそうかも知れませんが……」
「イケイケだもんね、じいは」
「ええ、そうですよ、ですが若い頃なんかは女の子に囲まれて……」
「うん……」
「それで、前に俺の親が……」
「うん、そう?」
「へ?」
「ん?」
「……お前、なんでそんなに上の空なんだ?」
「えっ……あっ、ごめん……」
へへ、続けて、とまた話を聞こうとすると、唐突に親友が息を呑んだ。
「……はっ」
「……?」
「もしかして、いけたのか……?」
彼は急に立ち上がった。
「え、いけたって……?」
「ほら、その……お前さぁ、相談乗った仲じゃねえか、へへ」
「え、ああ」
「まじか……!?」
「そのことなんだけど、実は……」
「……おん、」
「あの子が、」
「……」
「俺のことかっこいいって言ってくれて、へへ……」
照れてしまって、頭をかく。
「……あれ? どうしたの」
「……」
親友は黙ったまま動かなくなった。
「どうし」
「そ、そうか、よかった、な……」
「わっ、急に動いた……」
「いや、悪い……先走った俺が悪いよな、お前は……いつだって本気であの子が好きなんだもんな……泣」
「な、なに、どうして泣きそうになるの!?」
「泣いて、泣いてなんか……いや、これは男泣きってやつだ……お前、ほんと……頑張れよっ、うっ……」
目元を手で抑えた親友に、なぜか肩を叩かれる。
「う、うん……ありがと、ずっと応援してくれて」
「当たり前だろ……俺ら親友だしさ……お前があんまりにも、一途なもんだから……ぐす、」
「ふふ、なんでちょっと泣くの」
「だってよぉ……」
本当に、彼はいい友達だと思う。
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