第21話 私の王子は負けず嫌い?です
「じい、強いね!」
「いやはや、坊っちゃんも大変お上手でした。じい、もう少しで負けてしまうところでしたよ……」
「うーん、あともうちょっとだったのにな〜」
王子とじいの二人が話しているのを見つけた。
「二人とも、何かしてたんですか?」
「あっ、君もやる?」
二人を挟んだ机には、オセロが置いてあった。
「オセロですか?」
「うん! やらない?」
「いいです、けど……」
「ほんと? やった! やろやろ!」
「ふふ、ではじいは、紅茶を持ってきますね」
「ありがとう!」
「ありがとうございます」
「よし、負けないぞー!」
……黒だけで埋まった盤面を、王子がキラキラした目で見る。
「……強いね!!」
「すみません……」
「え、ううん、凄い! あっという間に負けちゃった……ね、オセロ得意なの?」
「はい、まぁ、人よりは……」
「へ〜、オセロ好きなんだ〜、ふふ、他にも好きなものある?」
「割と、ボードゲームとかは好きですね、お母さんとよくやるので……」
「えっ、じゃあやろ! チェスとかどう?」
「好きですよ」
「待ってて、今持ってくる!」
王子は隣の部屋に行って、チェス盤を持ってきた。二人で向き合って、駒を一つ一つ並べていく。
「じいとはよくやるけど、他の人とはあんまりやったことないんだよね」
「ああ、私もお母さんとはやりますけど……」
「そうなんだ! ふふ、お母さん強いの?」
「いえ、どうなんでしょうか……」
「……やっぱり強いね!!!」
「ありがとうございます……」
また勝ってしまってどうしよう、と思いながら見上げると、目が合って、王子は凄く嬉しそうに笑った。
「他にも!他にもやろ!トランプは?」
「トランプも好きです」
「じゃあ……」
「あがりです…」
「……強いね!!!!」
「……ありがとうございます」
「ううん、凄いね、俺全部負けたし!!」
「……すみません」
絶対やりすぎた……なぜ手加減しなかったのか……
「うーん、俺、もっと練習しよっかな……」
れ、練習……!? やっぱり絶対やりすぎた……私だったら、こんなに負けたらちょっと泣くぐらいなのに……純粋無垢な王子にこんなことを……
「すみません……」
「え!? あっ、大丈夫だよ?」
「そ、そうですか……?」
「うん、そりゃ、ちょっぴりくらいは悔しいかもしれないけど……なんていうか、君とこうして勝負できるのが楽しくて、ふふ」
そう言うと、王子はクスッと笑った。
「でも、あんまり俺が弱いと君が飽きちゃうかな?って思ったから……また、やってくれる?」
「……やります、いくらでも」
「ほんと? 嬉しい!」
私だったら泣いちゃうのに……私もこういう器の広い人になりたいものだ。うん、そういう人は……
「かっこいい……」
「へ……?」
「え、あっ」
見ると、王子が目を見開いて固まっている。
「すみません、声に出てました……?」
「……俺、かっこいい?」
「はい…」
「そ、そう、かな……俺全然勝ててないけど……」
真っ赤になって王子は目を逸らした。
「……かっこいいですよ」
「えっ、え、うそ、」
「……ほんと」
私もなんだか照れてきて、声が小さくなる。
「……」
「……」
「…………可愛すぎる、俺、もうダメ……」
顔を手で覆ったまま、王子が椅子に深く腰掛けて動かなくなる。
「お二人共〜、じいってば、ついお菓子も焼いていたら遅くなってしまいまして!ふふふ!とっても美味しいと思っ……」
扉を開けたじいが固まる。
「……」
「……」
「……」
沈黙が流れて、じいはお菓子と紅茶を置くと、そのまま静かに出ていってしまった。
「ありがとうございます、じい……」
「……ありがとう」
じいが出ていってしまった扉に控えめに声をかける。
「……次は何しますか?」
「そ、そうだね、うん、何しようか…」
何事もなかったように、私たちは他の遊びを再開するのだった。
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