第17話 私の王子はちょいМ…?です
俺が親友に恋の相談をするのは、今に始まったことじゃない。でも前までと違って、一緒に暮らすようになってからは親友に話したい事が、沢山あって……ありすぎて、困っちゃうくらいだ。まぁ、て言っても、上手くいかないから泣きつくんだけど……
「話聞いてたけどよ、そんなにアタックして、なんで好きって言ってもらえねえんだろな」
「俺も俺なりに頑張ってるんだけど……」
「顔悪くねえし、なんでだろな……他の子にするとかは考えねえの?」
「そんなこと、考えないの知ってるだろ……」
「……俺だったら、そんなのやめてすぐ次に行くけどなぁ」
「……どうしてもあの子がいい、それだけは変わらないんだ、ずっと」
「……はぁ、なんでそんなに惚れるかね。でも今、全っ然好きって言ってくんないんだろ? てか割と冷たいんだろ? そんなんで、よくもそこまで好き好き言えるよな……」
「……うーん」
「はっ、お前、まさか……」
「え、何? どうしたの?」
「そういうことか……?」
「どういうこと?」
紅茶を置いた親友は、俺を指さして、溜めてから言った。
「お前、Мなんじゃね……??」
「……М? ってなに?」
「知らねえの? ほら、意地悪されるのに興奮する人のことそう言うんだよ」
「……え、俺が? なんで?」
「だって、冷たい女が好きなんだろ?」
「え、でもあの子は別に……」
「一回、意地悪してみてって言ってみればいいじゃん? それで嬉しかったら、Мなんだってよ」
「へ、へえ……でも、あの子は意地悪なんてしないし……」
「冷たくされんのにほんとは喜んでんじゃね? お前」
「え、ええ!?」
多分、違う気がする。俺はあの子が好きで、あの子を愛しているだけで、別に意地悪されるのが嬉しいからじゃ、無いと思うけどな……うん、そんなこと無いと思うけど……
「違う気がするけどな……」
「今度機会あったら、試してみろよ」
「え? 試す必要ある……?」
「ある」
「ないって……」
「だってお前がそうだったら面白えから」
「はぁ……」
なんていうか、乱暴だな……
「ま、それでМなだけだったら、今からだって違う女探せるかもしれねーじゃん?」
「探さないってば」
「細けえなぁ、ったく……」
「おはようございます……」
「あ、おはよう!」
相変わらず天使みたい、可愛い。朝起きてばかりで少し掠れて高い声も凄く可愛い。朝に俺の部屋に来る時、というか今日も、ちょっと寝ぼけて無口になるのも可愛いし……。こうして、また新しく知らない一面も知れるから、一緒に暮らせるのが本当に幸せだ。
「……」
「今日のも美味しそうだね、このお肉とか」
「……そうですね」
「あ、今日のお昼は暇?」
「……はい」
「天気がいいから、外で食べてピクニックとかどうかなって、楽しそうじゃない?」
「そうですね……」
「いつものお庭か、裏の方どっちがいい? あ、たまには遠出もいいかも」
「……いつものお庭で」
「ふふ、わかった! じゃあ楽しみにしてる!」
「……はい」
まだ眠そう……さっきからうつらうつらしてる。それも可愛い。
「……冷たくないけどなー」
「? スープがですか?」
「あ、いや、なんでもない」
声から出てた、危ない……正直、されて嫌なこととか全然ないから、それってМにならないんじゃ……?
「ね、あのさ」
「はい……」
「ちょっと、意地悪してみてくれない?」
「……」
「……」
「……はい?」
俺を見たまま固まってしまった。
「なんか、なんでもいいよ」
「え……? 意地悪……??」
「うん」
「意地悪……? って言いました?」
「うん!」
「……???」
混乱してるのか、そうだよな、急に言われたらそりゃそっか……
「あ、うん……この前、親友に聞いて……」
「あの、一昨日くらいに来られた方ですか?」
「うん、試しに意地悪してみてって言ってみろって言われて」
「???」
「ね、やってみて!」
「え、ええ?」
彼女に向き合って、何かされるのを待ってみる。
「……」
そんな風に真剣に考えながら見られると、正直それだけで照れてしまう。
「……」
「……どうぞ」
「……えっと、じゃあ、失礼します」
「どうぞ!」
そう言うと、彼女も俺に向き合ってくれて、俺のほっぺを少しつねった。でも、全然痛くない。
「……どうですか?」
「ふふ、どうしよ、凄く可愛い、凄く嬉しいかも」
「そ、そうですか……痛くないですか?」
「全然! もっと痛くしてみてもいいよ」
「え?」
そう言うと、ぎゅっとつねってきた。ご、ごめん、ちょっと痛い。
「……」
「あっ、ごめんなさい、痛かったですか?!」
「ううん、だ、大丈夫……」
「すみません……」
慌ててつねったところを手で少し撫でてくれた。どうしよう、優しい、好き……顔が熱い……嬉しくて仕方ない……
「……やっぱ俺、Мなのかな」
「えっ?!」
思わず出た言葉を聞いて、また彼女がびっくりして俺を見てくれた。
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