第8話

「先生も言っただろう?安定してるって。だからそんなに俺の心配ばっかりしなくていいよ」

「その油断が危ないの」

母の言い分を聞いて、郁は苦笑いになった。

そういう生活をしていた郁だから、康孝が言った一言に驚いた。

「何が?心臓が悪いだけだろう?」

子供の頃から、開口一番でその事を言われ続けた。

走っちゃいけません。

これは食べちゃダメ。

可哀想な子ね。

生まれながらに心臓が悪いなんて……

周りの大人達はみんなそう言った。

いつも特別扱いだった。

特に母は一挙手一投足すべてに口を出した。

だから中学で出会った康孝の言葉に本当に驚いた。

普通じゃん。

ただ心臓が悪いだけ。

そうなんだ。ただそれだけ。

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