第3話 両親
「ふふ、いつ見てもうちの坊やは可愛いわね。」
「当たり前だろう。君と僕の子なんだから。」
「まぁ、あなたったら…」
目を開けると知らない男女がこちらを見て話していた。
「(この状況は…?)」
俺は状況を理解するため一旦目を閉じた。おそらく、あの創造神とやらに転生させられたのだ。そして俺はこの夫婦の子になったというわけか。
なるほど、頭では理解したが全く心が追いついていない。ひとまず再び目を開ける。
「(まぁ、なんかいい両親らしい。よかった…)」
わちゃわちゃと話す二人を見て少しだけ安堵した。だが、
「(なぜ俺を名前で呼ばない?)」
先ほどから坊やだったり、この子だったりと名前を一切呼ばないのだ。だが、すぐに理由がわかった。
「よし、そろそろ時間だな。神殿に行くぞ!」
「えぇあなた。この子の名前がやっとわかるんですね。」
「あぁ、楽しみだ!」
…どうやらここでは神殿で名前がつけられるらしい。俺が転生した子は生後1ヶ月程度。この両親は1ヶ月も名前を呼ばずに過ごしていたのか。
「(それはそれですごいな…)」
両親は俺を抱き上げて外へと連れ出した。
「(おぉこれが外の世界か!)」
外は思っていたより、のどかな光景が広がっていた。暖かく心地よい。
「(平和そうだな…)」
歩き始めてすぐに神殿についたらしい。俺と同じくらいの年頃の子達が親に連れられ集まっていた。
「これから、名付けの儀を行う。呼ばれた家族は神殿の中に入ってくるように。」
急に厳かな声が響き、儀式とやらを始め出した。
門番らしき人物が名前を呼んだ。
「アーロン一家は中に入れ。」
するとある家族が中に入って行った。他は名字が呼ばれるまで外で待機のようだ。
約20分ほど経ち、ある家族が呼ばれた。
「ハーバー一家、中に入れ。」
それを聞き両親は前へと動き出した。どうやら我が家の名字はハーバーというらしい。神殿の門をくぐると、大聖堂のようなところの最奥に祭壇があった。
台のようなものがあり、上には石板が浮かんでいる。
「(魔法!?この世界魔法があるのか!?)」
驚いていると母は俺を台の上に置いた。台が光り石板に文字が浮かび出てきた。
母と父はそれをじっと見ている。そこには
『Sion harbor 』と書いてあった。
「(シオン・ハーバーか)」
人間界にいた頃と同じ名前だ。これが初期設定というやつか。違和感がなくていい。
「シオン、坊やの名前はシオンっていうのね。」
「いい名前をいただいたな。」
両親は俺の名前を何度も呼んだ。それからは大司教という人に名前を記録され、帰ってもいいと言われた。
「シオン、帰ったらパーティーね!」
「あぁ、シオンの記念日だからな!」
今まで見てきてわかったが俺の両親はラブラブのようだ。変に厳しい家ではなくてよかった。
それは置いといて、
「(魔法!この世界には魔法があるのか!なら最強を目指すしかないだろう!)」
俺は人間界では地味男だった。実は陽キャというのに憧れていたこともある。
なら、ここで最強になって派手に生きていこうじゃないか!
まぁその前にこの世界をちゃんと知るとしよう。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます