帰り道
「あ、ファミマ寄っていい?」
私のブレザーの肘のあたりを優しく引っ張りながら、あの子は笑いかける。
『ん、まあ、いいよ』
私の答えを聞いて、ちょっとだけ申し訳なさそうな顔。
もう少し、乗り気な感じで答えた方が良かったかな。
あの子の後ろを歩きながら、そんなことを考えていた。
店内の暖かな空気に、マフラーを巻いた首元や、顔が火照るのを感じる。
あの子はそんなことも気にならない様子で、足早に店の奥に進んでいく。
アイスクリームが並んだフリーザーを覗き込んで、何かを探しているみたいだ。
『冬にアイス?』
「うん。ハーゲンダッツの新しいやつ出たんだけど、ここにはなさそうかも」
多分違うんだろうけど、その声が本当に悲しそうで、私も一緒に探してみる。
どうしても、見つけて欲しいと思ったから。
ここにないなら、駅前のお店にも行けばいい。
見つかるまで一緒に探す。
それもきっと楽しい。
そう考え始めたすぐ後、少し離れたところに、もう一つ、冷凍の棚があるのを見つけた。
『あの棚は?』
指をさした先に、小走りで近づくあの子の目が輝いて見えた。
私は勝手に、始まった宝探しがすぐに終わってしまうような、そんな気分になっていく。
「あ!これ!」
私はただ、あの子が棚の扉を開けて、確かに美味しそうなそのカップを手に取るのを眺めていた。
『あ、私のも』
そんなに食べたいわけじゃないのに、思わず言ってしまった。
あの子はそのまま、笑いながらもう一つのカップを手に取る。
「実際見て食べたくなったんでしょ?」
笑いかけるその顔を見て思う。
楽しいな。
可愛いな。
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