2日目

第6話

その次の日。

私は毎日欠かさず通っていた花屋に顔を出さず、真っ直ぐ大学へと向かった。



「はぁー、もう花屋に行けないじゃん」


気を抜くと思い出してしまう、あのキスの感覚。



(ーーーーっ!変態か私は?!)



『お前がずっと昔から好きだったんだよ!!』



思わず耳を塞ぐ。



(好きってそういうことだよね……友達同士じゃなくて恋愛の意味で)


こんなの、産まれて初めての経験だ。どうしたらいいのか分からない。


(誰かに相談したいけど)




ふと、頭に思い浮かぶのは、自分の子供のように可愛がってくれるフレアおばさんだった。



***************





放課後。私はフラワーショップの前に来ていた。



(勢いで来ちゃったけど、カイルいないよね?)



おばさんの顔が浮かんでここまできたが、すでに後悔。カイルだってここにいるのに。



「エレンちゃん!よかった来てくれて!」

「フレアおばさん、ごめんなさい......今朝は来れなくてーー」

「いいのよ、そんなの。あっ、カイルなら今配達に行かせてるから安心して。エレンちゃんが来てくれるだろうと思って」


バチッとウインクをする。ああ、長年付き合って来たが、今日ほど頼もしいと感じたことは無い。


「今の時間帯はお客さんも少ないし。さぁ!ここに座って。今ローズティー入れるわね」


数分も経たないうちに、私の前にはローズティーが差し出された。


「おいしい......」


仄かなバラの香りと甘さが広がってくる。


「落ち着いた?」

「はい」

「そうよかったわ」


フレアおばさんの優しい笑顔は私をいつも安心させてくれる。


「あの......実はですね......」

「大丈夫よ。どうせカイルが、エレンちゃんに告白した話でしょ?」

「…うっ」

「いつか、我慢できなくなって襲うんじゃ無いかと思ってたけど......まさか本当に襲うなんてね」

「フレアおばさん、楽しんでませんか?」

「…ふふふ。可愛い娘が恋で悩んでるんだもの。嬉しいのよ私は」


そう言って私の手を包んだ。


「そりゃ、昨日は突然で色々あって頭も混乱してるだろうし、1人じゃどうしようもなかっただろうね」

「はい」

「でもね、ゆっくりでいいから、カイルの気持ちを真剣に考えて欲しいの。あの子も色々苦しんでるから」

「カイルが?」

「ええ。カレンちゃんが自分の事を家族の様に大切にしていることを知っていて、その関係を壊したくなかったのも事実よ。それでもーー」


フレアおばさんは悲しそうな表情を見せた。


「それでも……嫌われてもいいからエレンちゃんに正直な気持ちを打ち明けたかったのよ。だからエレンちゃんも自分の正直な気持ちを考えてみて」

「私の正直な気持…」

「ええ。【好き】という感情は難しいものだから」

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