第4話
私が店先に着くと、数人の女の子達がカイルを囲っていた。
「ねぇ今度遊びに行こうよぉーカイルー」
「カイル君ー!!私とも遊んで!」
(あらあら、また女の子達にチヤホヤされちゃって)
性格に難はあるが、小さい頃から人より飛び抜けて顔が良く、女の子達にモテていた。
「てめぇら、店の前でうるせぇんだよ。花買わねぇなら帰れっ!!」
「カイル怒ったのー?怒ってもかっこいい!」
「冷たいこと言わないでよカイル君〜」
こういう時は真正面からお店に入れないので、
私は店の裏から花屋へと入った。
「お邪魔しまーす......」
恐る恐る裏口から店内へ入る。フレアおばさんは今いない様だ。
何気なくレジカウンターへ視線を向けると、新聞紙が机の上に広げられていた。
その一面の見出しにはーー
『第1王子そのプロフィールは未だ明かされず』
そう書かれている。
(そう言えば、第1王子の名前なんて言うんだろう)
ページをめくっていくととある記事が目につく。
『そんなまだ未知数な人物像ですが、誕生祭当日は婚約者を発表するとの事』
(この記事だけ読むとーー鼻息荒く書いてる貴社の顔が浮かんでくるな......)
ふと、今日の日付に目がいく。
カイルの誕生日まであと5日。もうこの際直接聞いた方が早い気がする。
どうせ毎年あげてるし、サプライズにもならないだろう。
「たくっ......たりーな......」
女の子達を何とか追い返してきたのか、疲れきった姿で戻ってきた。
「お疲れカイル。相変わらずモテるね」
「お前、いつの間に来てたんだよ」
「ついさっきよ。ねぇ、カイル。今年のプレゼント何が欲しい?」
「ーーーーお前、そういう物は本人に黙って準備するもんじゃねぇのかよ」
「だって、どうせ貰えるって思ってるんでしょ?いいじゃない」
「いらね。つか、今年は俺の誕生日パーティー出来ねぇからな」
「えっ?なんで?!」
「…用事があんだよ」
「用事って、もしかして彼女?」
「んなワケねぇだろ」
「なーんだ。カイルはモテるから彼女の1人や2人いるかと」
「2人もいたら浮気になるだろう」
「そうだけどーー」
ちらっと、カイルの横顔を伺う。
「私には、フレアおばさんとカイルが家族みたいなものだから、誕生日を祝えないのは寂しいな」
「…家族...ね」
「でも......用事なら仕方がないよね。別の日にでもやれば」
「ある」
「えっ?」
「俺が欲しいものが、1つだけある」
カイルが真剣な目で私の視線を捉える。
「ど、どうしたのカイル?真剣な顔して」
「俺は」
強い力で肩を掴まれる。
「ちょっ......カイル?」
「お前が欲しい」
「えっ…何言ってーー」
聞き返そうとした口がカイルのそれによって塞がられた。
最初は何が起きたのか分からなかった。
それ位、触れるような優しいキスだった。
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