第1話

私は世に言うダメな女に分類されると思う。






「何、突然語り出した?」と思うだろうけど、






そこはご愛嬌。是非とも最後まで付き合ってほしい。






まず、私というものを語ろう。






16歳を迎えた私には幼馴染がいる。

小さい頃からずっと片想いをしている相手。






いや、片想いというより失恋し続けていると言った方がいいかもしれない。





彼と私の攻防は小さい頃から続いてる。






例えば幼稚園の頃、人生初めての告白をした日。






「すき!」

と、私が言えば。



「カブトムシつかまえてきたら、すきっていってあげる」





今思えば、なんてクソガキって思うが、あの頃はまだ純粋で汚れがなかった事わかって欲しい。





結果はどうなったかというと、勿論全力で探し出して来てつかまえましたよ。





彼はなんと言ったと思います?





「メスだよこれ!ばっかじゃないの?!だいきらい!!」





オスとメスの違いが分からず、見事にフラれた。





小学生の時は


「僕と付き合いたいの?じゃあ、テストで5教科満点とったら考えてあげる」







正直鬼だと思った。テストで40点以上とったことのない私は、死に物狂いで勉強した。




結果は5教科全て満点。





ただ、、、







答案用紙に名前を書くのを忘れて、ノーカウントになった。





まあ、その後、


「相変わらずバカだね。でも勉強できない女の子嫌いだから、少しでも点数落としたら一生口聞かないからね」





お陰様で、頭が良くなりました。









中学にあがり、


彼はやたらとモテまくった。私はという、取られまいと焦りで連日のように告白をしまくった。





その度に、なぜか厳しい試練が与えられた。





運動会のでる種目では全て一位を取れだとか、





持久走大会では一位を取れだとか、





勉強は常に首位を取れだとか、




おまけに高校受験の際は、勝手に志望校書かれ、ここに僕も行くから頑張ってね、なんてキラキラスマイルで抜かしやがる。




おいおい、偏差値くっそ、高いんだぞ!!

やるけどさ!!





このように、まさに犬のように従順に従ってきたのである。






私も良く、諦めないなと思った。







その理由は自分でもわかってはいるけど。









春、見事に合格した私は正門をくぐった。







ただ、そこには幼馴染の彼の姿はなかった。






小さい頃から持っていた重い持病が悪化したのだ。





彼が私にカブトムシを取ってこいと言ったのは、病気で外に出歩けなかったから。





彼が私に、全教科満点を取れといったのは、勉強したくても出来なかったから。





彼が私に、運動会やマラソン大会で一位を取れといったのは、走ることさえ出来なかったから。





彼が私に、偏差値の高い高校に行かせたのも、憧れの学校だったから。






彼は、一度も憧れの学校の門をくぐることなくこの世を去った。






年は16歳。






夏の暑い日だったーーー。







彼が私に残した手紙があった。








『僕のことを好きになった君が嫌いだった。


君が、僕に好きだと言ってくることが嫌だった。


だから、君に嫌われようといっぱい酷いことを言ったのに、君は笑うばかり。

好きになんてなって欲しくなかった。



だって、君と一緒に生きていけない僕が1番嫌いだったから。


最後に君に命令するよ。


どうか、幸せになって欲しい



愛しい幼馴染へ』










彼の最後の命令を私は守らなければいけない。





なんていったって、私は従順な犬でダメな女ですから。






私の幸せは貴方の側にいる事だから。









これが私という人物であり。








“遺書”となる。

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遺書。 牟牟(むぼう) @3s10ry-rock_home

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