第16話 クライムvsユミー
にらみ会うユミ―とクライム、二人より少し離れた場所にエルマはいた。
「赤く染まった目、そしてその目を囲むように染まる黒い白眼。鋭くとがった
爪。これら全部の特徴に当てはまる者は…」
風が通り過ぎる。
「バゴン!!」
拳と拳がぶつかる激しい音がする。
ユミ―の指が光り、指先は魔術の紋様を描く。
「ファイヤーマシンガン!!」
描いた紋様から炎のたまが無数も出てきた。
「ハリケーン!!」
炎の弾はクライムを中心にぐるぐると回り、散りばめられた。
クライムの周りで炎の爆発がする。
「スキルか」
「ケッケッケ!!よくわかったなぁ!」
「俺はさっきあんな風に飛ぶようにしていないからな」
クライムはそこら辺にあった、石をつかむ。
「筋力眼!!」
クライムは空気を切り、石を投げる。
「ドス!!」
投げた石はユミーの腹部を貫通する。
「くっ!」
ユミーは手を腹部に抑えた。その隙をクライムは見逃さずにユミーに襲いかか
る。
「ばぁか」
うずくまったユミーの頭部を横からクライムは殴る。
「ごふっ!!」
ユミーは殴られた衝撃で、木材で建てられていた家が8件ほど崩れた。
一直線にユミーは飛ばされ挙げ句の果てには壊れて、水も出ないようなコンクリ
ート性の噴水にぶつかった。
「こ、こんな威力のあるパンチは初めてだ」
コンクリートを辺りにに飛ばし、起き上がる。
「ケッケッケ!!驚いたなぁ、俺のパンチを食らって立ったのはお前が初めて
だ」
「なるべく、家を壊さずに殴ってほしいね。住人が居るから」
ユミーの腹部に空いた傷口緑色の光に包まれて塞ぐ
「ケッケッケ!!ここら辺に人なんかいねぇよ!ここら辺は昔のスラム街だ。少
し前に新型のウイルスが蔓延して、大量の生物が死んだんだ。それ以来ここは国
にも見放され、侵入が禁止されたんだ。まだここら辺にはウイルスが漂うような
地域もまだあるみたいだぞ?どういうわけか、日光を浴びても死なないとか」
「それは危ない…な!!」
勢いよくユミーはクライムに殴りかかる。
「エレクトロパンチ!!(ただの殴り)」
「ケッ!」
クライムはユミーの攻撃をかわす。
「ファイヤーマシンガン!!」
ユミーは横に避けたクライムに向かってパンチをかました反対の手で魔術の炎を
発射した。
「ハリケーン!!」
又もや炎の弾はクライムの周りを避け、クライムの目が青く染まると、道端の石を
ユミ―に投げる。
「くっ!」
上手くかわせた!防御魔術を!!
ユミーは魔術の紋様を正面にはる。
クライムはもう片手に持っていた石を投げる。
「バキン!!」
勢いよく、魔術の紋様にぶつかり石は貫通してユミーの頭頬を切る。
「チッ!!」
後退りするユミ―。
「筋力眼!」
ユミーの目が緑になる。
後ろを向きユミーは勢いよく走る。
「ケッケッケ!!俺から逃げられると思ったら、大間違いだぞぉぉぉ!!!!筋
力眼!!!!」
クライムの舗装されていた、床が弾け、クライムは斜め上に飛んでいった。
「灼熱眼!!」
炎の弾が真っ直ぐユミ―に向かって迫る。
「何!?」
ユミ―は直撃は免れたが足元で炎の弾が爆発し、ユミ―は地面に倒れた。
「うお!?」
クライムはユミ―より少し離れた場所に着地する。その時ユミーはうずくまって
いた。
「ハハハ!!だっせぇ!うずくまって、弱者かよ!てか、そんな力でよく俺を殺
そうとしたもんだぜ。ケッケッケ!!」
「お、俺は、絶対にお前は殺さない…俺は生き物を殺さないと、決めている!」
「そんなに命が尊いのか?俺はそんなに命なんてなにも思わないからな。でも、
お前は善人ぶってるようだな。直ぐにあの世に逝かせてやるよ!!」
クライムはユミ―に飛び掛かる。
ユミーは少し後ろに跳ねる。
「タイムトラップ」
「あ?」
「バァン!!!」
クライムの辺りが爆発する。
こいつ!!まさか、あのうずくまっているときに!!
ユミーの目が緑に変わる。
「筋力眼!!」
ユミーはクライムに背を向けて遠くの方へ行く。
「なめんじゃねぇぞ!!」
クライムは石を掴み、離れた場所に居る、ユミ―に向かって投げる。
石は一直線にユミ―の背中を襲う。
石はユミーの背中を貫通し、そのまま真っ直ぐに突き進んで行った。
「くっ!!」
ユミーは止まらず走っていった。
回復能力があって良かった。
「なぜ止まらない!?情報では、少しの衝撃で倒れると伝えられていたのに!!あいつ!!騙しやがったな!!筋力眼×ジャイロスキル!!」
クライムは目の色が変わり、一気に走る。
それは、風をも追い越すような速さでユミ―に追いつき、横から殴りを入れる。
「ケッケッケ!!遅いぞ!!!」
「ぐッ!!!」
5件ほど家が倒れ、一直線に土埃が舞う。
土埃の中から下を向いて、ユミ―が立っている姿が見えた。
「よく、これで立っていられるもんだぜ。さすが、アールグレイ様の一員ではある
な」
ユミーの目が緑に輝く。
ユミーは勢いよく、地面を蹴りクライムの側に移動する。
「エナジースパークナックル!!(ただの殴り)」
「はやっ…」
「バァン!!!」
クライムが勢いよく後ろにぶっ飛ぶ
「お前のスキルが分かったぞ!!お前のスキルは、軸を中心として好きな速度で
回転させられる能力…てな感じか?」
「…正解だ」
顔に殴ったはずのユミーの拳は首の回転で弾かれていた。
「いつ気づいたんだ?」
「俺が遠くに居たのに対して真っ直ぐに石が飛んできたこと、足の間接の動きが
変だったこと。その他もろもろ」
「その他もろもろが気になるな。ケッケッケ!!それでも俺は強いけど!!」
クライムがユミ―に飛び掛かる。
「おらぁ!!」
クライムはユミーの横腹に殴りを入れる。
「ぐっ!!」
ユミーは片手で殴りを受け止める。
「そりゃあ、自分を駒にして回せば自分の好きな速度で殴れるからなぁ!!!」
ユミーは紋様を描く。
「ボムガン!!」
魔術の紋様からいくつかの弾がクライムに当たる。
「バァン!!!」
激しい爆発音が走り、クライムが遠くへぶっ飛ぶ。
「よっしゃあ!!倒したか!?」
土埃が舞い、家の崩れる音がする。
空を切るような音がすると、ユミーは胸辺りに衝撃を感じた。
胸辺りを見るとガラスの筒の様なものが刺さり、毒々しい液体が体の中に注入さ
れているようだった。
「グブッ!!」
ユミーの口から緑のネバネバした、液体が出た。
「クソ、こんなウイルスを使わないと勝てねぇなんてな情けねぇぜ」
「こ、これは?」
「さっき話した新型ウイルス、virus to kill(殺すためのウイルス)略してvtk。こ
れは、ある組織の新型ウイルスだ。生き物の細胞を壊して、殺すウイルスで、ここ
ら辺には撒かれたのは、たしか戦争での威嚇のようなものとニュースでは報道さ
れていた。俺はその組織からお前を捕まえる以来があってな、アールグレイの内
部操作でお前をこの俺と戦うようにしたんだ。まあ、要するにアールグレイでは
裏切り者がいるって訳だが、まあ!?それを分かったところでお前はもうすぐ死
ぬんだから、冥土の土産にちょうどいいなぁ!!ケッケッケ!!!」
「まて!!!」
力強い声がした。
「ま、まさか!?ウイルスを食らって死んでないというのか!?ウイルスを受け
て30
秒で舌も回らなくなるはずなのに!?」
「どうやら、アールグレイには裏切り者って奴がいるみたいだなぁ!!」
「ま、まずい!!本部に知られたら計画が台無しになってしまう!!」
「計画?」
「んな!?ま、またいってしまった!!どうしよ!?どうしよ!?」
クライムはなぜか、さっきと一変して落ち着きが無い様子だった。
「くッ!!」
クライムは自分の腿を殴る。
顔を見ると片目の色が黒から青に染まっていった。
「お、お前は黙ってろ!!今この体は俺が支配しているんだ!!」
クライムは目が両方とも同じ色になると、落ち着きを取り戻す。
「ふう、身体の乗っ取りは短時間しかできない。だから、そろそろフィナーレと
いこうじゃないか!!」
辺りにおぞましい空気が流れる。
「じゃあ、切り札を使うしかないか、俺も」
一時、辺りが静まり返る。それはまるで嵐の前の静けさのようだった。
「ハリケーン×サイクロンナックル!!!」
クライムは台風の様な風を纏い、クライム本体もベイゴマのようにぐるぐると回り始める。
「俺の必殺技、受け止められるかな???」
「昨日の内に究極魔術の一番簡単な物を覚えておいて良かった」
ユミーは両手を広げる。
両手は光だし、ユミーは空に大きな魔術の紋様がユミーの目の前に浮き出し始め
る。
「究極魔術……無風陣円!!」
ユミーのから空間のようなものが広がると、クライムの動きが遅くなり、回りの
風が消えた。
「んな!?」
「究極魔術の無風陣円は範囲内に一定風速10キロ以上の風を起こさなくする。つ
まり、風を発するほどの動きは封じられる」
「ケッケッケ!!それじゃあ自分の動きも封じられるんじゃあないか!?」
「そうだな、でも、俺にはスキルがある。少し前までは筋力増加までだったが、
今は違う」
ユミーは手を前に挙げる
「破滅弾!」
手の先に紫色の丸いものが出現し、ノロノロとクライムに向かって進む。
「こ、これはなんだぁぁぁ!?!?!?」
「俺は体に流れている、破滅エネルギーを体外に出すことができるようになっ
た。破滅エネルギーは原子を破壊して吸引する。壊せないものはない、絶対的な
矛だ。空気も何でも破壊して進むから、こいつの早さに風は影響しない!!!」
「なんだと!?」
「残念だったな!!seeyou!!!」
破滅弾は風を破壊しクライムの両腕を飛ばした。
「ぐあああああああ!!!!!!」
クライムが激しく声を挙げ、倒れる。
「失血か?まあいいや。無風陣円、解除」
辺りの空間がガラスのように割れ、無風陣円は解除された。
「やっぱりこっちの方がからだが軽いな」
ユミーから少し離れたところに魔術の紋様が地面に浮き出る。
魔術の紋様が光るといつの間にかエルマが紋様のところに立っていた。
「スキルは使ってはいけないと言いましたよね?」
「えーと…まあ、究極魔術を一つ覚えたんで、良かったかな~、何て…」
「まあ、たしかにそうですね。おめでとうございます!クライムは逮捕なんで、
止血はしておきましょう、死んでもらうと困りますからね」
「なんで困るんだ?敵だったら思いやる感情以外にいかす理由はないだろ?」
少しユミーの顔を見る。
「まあ、たしかに。でも、命は簡単には奪っていい訳ないじゃないですか。こう
いうやつでも生かしておくんですよ」
「ふーん」
ユミ―は少しエルマを怪しむ。
「まてぇ!!」
「!?」
クライムが目を覚ました。
「あ、あいつ!!動けもしないはずなのに!!」
「よくも!!よくも!!」
エルマはなにも言わずに紋様を空に描く。
「風の鳥かご」
クライムの周りを風の壁が囲む。
「こんなもん!!破ってんよぉぉぉぉ!!」
クライムの切られたはずの腕が再生し、黒い腕が生えた。
「仕方ない、殺さない程度に燃やして挙げましょう」
エルマはまた、別の紋様をくうに描くと
「エクソシストブレス!!」
大きな火の弾がクライムに当たり、爆発する。
「ぐぐぐぅぅぅぅぅ!!!!くっそ!!ここまでか…」
クライムは地面に倒れる。
「な、何だったんだ?」
「多分、悪魔憑きだったんでしょう」
「悪魔憑き?」
「はい、悪魔に呪われて、体を乗っ取られている人のことです。昔は人を不幸にさ
せる程度で済んだのですが、最近はあの世とのこの世の繋がりが強くなっている
ので、精霊も出てくるようになったんですよ」
「じゃあ前までは出てきてなかったってことか?」
「はい。そうです。知りませんでした?」
「初耳だな」
「さっきの魔術は悪魔の嫌いな精霊を混じ合わせた火です。悪魔はこれで悪魔憑き
から解放されます。僕が研究して分かったことです」
「そうなのか!?よく見つけたな!!」
「努力の賜物ですよ。まあ、とりあえずお疲れ様です」
エルマはユミ―に肩と同じ位の高さに手を上げる。
「おう!お疲れ!!」
エルマの手のひらを叩きハイタッチをした。
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