第11話 正義
正義感があるというのは、自分の正義があるということだと思う。
例えそれがどんな悪役だろうと、自分の正義を貫く。
戦隊物の怪人も自分の正義を持ち、ヒーローも自分の正義を持つ。
だが、ヒーローと怪人じゃあ、明確な違いがある。
それは、その正義同じ正義をどれだけの人が持っているかだ。
ヒーローを応援する人は全員がヒーローと同じ正義を持つ。
怪人は自分だけの正義を持つ。
どれだけ、批判されようとその正義を、自分だけの正義を貫くことは大事だ。
俺はどれだけの人を殺してもいい。
だから、唯一の本当の仲間のグライトだけは、死んでほしくなかった。
なぜなら、俺とグライトの正義は、一つだったから。
俺とグライトは兄弟だった。
俺が兄でグライトが弟。
俺ら二人と母さんと父さんの家族4人で仲良く暮らしていた。
父の口癖は、しっかりするんだ!マプス家に恥じぬようにな!だった。
俺は微笑みながら勇気の籠った力強い父の声が好きだった。
マプス家は代々町一番の戦闘スキルが与えられてきたそうだ。
父の仕事は村の防衛隊の隊長だった。
土曜日に帰ってきて次の月曜日に防衛隊の本部に戻るような生活をしていた。
でも、ある時に…
俺らの住んでいる町が、一瞬で炎の海に包まれた。
その日は俺とグライトは一緒に隣町の肉屋に行っていたからどうやってこうなっ
たのか、良くわからなかった。
家に行くと家の前に、虫のような体の奴がいた。
そいつは腹に穴が空いた、俺らの両親を6本ある腕の2本で持っていた。
すると、俺らの両親を担いでるはずなのにいつの間にか俺の後ろにいた。
「おまえら、マプス家の獣人だな?」
「そ、そうだ!おまえの仕業か!?こ、この火は!!」
俺は恐怖と両親を殺された憎しみで震えながらも、力強く言う。
「あぁ、そうだか?それよりも、お前は面白そうだな。俺と来い。でなければお
前ら焼き殺す。」
俺は断ってもいい。死ぬのが怖くないからだ。
だがグライトは死んでほしくなかった。だから、やむ終えずついていくしかなか
った。
「わ、わかった。行ってやる…」
そして俺はこの、組織に来た。
どうやら、俺らを殺したあいつはここのボスで、幹部になればあいつに直接会え
る機会も増えるらしい。
この組織で強くなって、幹部になって、親の仇を取ってやろうと思った。
そして、俺はこの組織で偉くなった。
俺の手はどんどんと汚れていった。
そんなとき、ユミーを捕まえればあいつが来ると言う噂を聞いた。
俺は一目散にユミーを探すために団を結成し、探した。
その結果、グライトは死んでしまった。
あいつの事なんか忘れて俺もグライトの居る天国に行こうか…
いや、まだだ。
せめて、まだ手の届くユミーを殺して!!それから死んでやる!!
ダークロはユミーの真上にある、手術の装置を操り、ユミーを殺すことを企む。
「絶対に苦しませてやる。」
怪物用に改造された、刃をユミーの腹に向かって、指そうとする。
その時、ユミーの頭の横から黒い弾が現れ、刃に一目散に飛び、塵と化してしま
った。
ユミーのグライトに開けられた傷口が治る。
「何だ?」
ユミーは寝ているところの下にいた、グライトを見た。
「こいつ!何で倒れている!?」
ユミーはひどく驚いてる様子だった。
ダークロは窓のガラスを割り、ユミーを殺そうとガラスで剣を作った。
だが、ユミーを殺そうとしたときには、ユミーはグライトの死体に緑の光を当て
ていた。それも、傷口に。
「お前!グライトに触れるなぁぁぁぁ!!!!」
大きな声でダークロはユミーに叫ぶ。
そして、ダークロは片手に持った剣でユミーの首を斬りかかる。
ユミーは刃を頭と肩で押さえ止める。
それでも、緑の光を当て続けた。
「お前は!何をしているんだぁぁぁぁ!!」
怒り狂った声でユミーに問う。
「見れば分かるだろ!傷口を塞いでるんだよ!」
「なんだと!?」
「血ぃ流してるやつ、ほっとけねえだろ。」
「は?おまえが殺したんだろ?」
「そうなのか?俺は人は殺さない主義なのにか?とにかく、こいつの頭の治癒が
先だ!」
「そいつはもう死んでいる!」
「わからねぇだろ!まだ、行けるかもしれない!」
「そんなわけ無いだろ!もう死んでいる!」
「お前が殺したんだ!」
「諦めるな!希望が有る限り!」
「希望なんて無いだろ!どこにあるんだ!?」
「諦ないという、希望の中にある!」
傷が塞がると時期にグライトは息をし始める。
ダークロは座っているユミーにガラスの剣を向ける。
「さて、答えてもらおうか。なぜ一度殺した奴を治癒させたのか。殺人犯は許さないぞ?」
ユミーは呆れて言う。
「ちょっとした、気まぐれだよ。」
「こいつッ!」
剣を構える。
「でも、命は出来るだけ救えってのが俺の正義だ。」
「正義か…」
俺は今になって本当の正義を思い出す。
父の言葉だ。
「いいか!ダークロよ!正義というのは、いかなる者の命も尊しく大切に扱う事
が正義なんだ。」
「今になって、本当の正義を見つけるなんてな…」
ぼそぼそと小さな声で言う。
「何て?」
「何でもねぇよ」
ごまかすとダークロはユミーに言う。
「お前の名前…たしかユミーだったな。」
「あ、おう。そうだが」
「お前は一度、俺の弟を殺した身だ。だから、少しやってもらいたいことがあ
る。」
「なにそれ?」
「それは、ここのボスの捕まえてもらいたい。凶悪犯罪者でもあるから、アールグレイの仕事としても、受けられる。」
「ほう。」
「それと、俺は情報を集めるのが趣味で…」
「どんな趣味だよ」
ユミーは思わず、つっこんでしまう。
「まあ、いいとして。情報を何か上げよう。何かほしい情報があったら言ってく
れ」
少し間を置き答える。
「ないわ」
「今までの時間は何?」
ダークロはため息をつく。
「じゃあ、もし、何か知りたいことがあったら、ここに来てくれ。何でも答えて
やるよ」
「ありがとう!助かるよ」
こうしてユミーは任務をクリアし、新たな人望を獲得できたのだ
というのは建前。
ダークロはユミーがいなくなると、特定の壁に手をつける。
ダークロは周りに誰も居ないことを確認すし、壁に向かって
「DESTINO」
と言う。
すると、壁に穴が開く。
ダークロはその中に入った。
中にはいくつものテレビのモニターのようなものと机と椅子が部屋に置いてあっ
た。
机の上のボタンをいくつか押す。
すると、テレビに人が写る。
「ユミーが今、そっち行ったぞ…ユリ」
画面にはっきりと写ったのはユリの姿だった。
「あぁ、ありがとう。ダークロ」
画面越しに少し濁った声が聞こえる。
「何で、俺を人望にさせたんだ?確かに、いろんな情報は知っているが」
「お前が一番信用できるからな」
顔を手で覆い、
「だから、情報なんてお前から話せばいいだろ。」
「そうなんだがね。人望は多い方がいい。」
「はぁ、珍しいな、そういうの。お前のやり方じゃないような気がするよ」
「ふん」
鼻息を立てる。
「それで?お前の企みはなんだ?」
「企みなんて存在しないよ?」
「あるだろ。」
「・・・」
ユリはなにも答えなかった。
「あえて言えば?」
「あえて言えば…運命のシナリオどおりに逸らさせるためかな。」
「そこは変わらねぇな。昔から」
「それよりも、近々少し大きな戦争がある。その時はよろしくな。」
「ほいよ。じゃあ切るぞ。」
画面がまた真っ黒に染まり、画面に写る自分を見つめるダークロ。
「まさか、ユミーの目は俺のバイクで連れてきたロボット軍団を一瞬で殲滅する
とはな。ユミーなら生き物と間違えてすぐに捕まえられると思ったのだが。」
少し黙り混む。
「今度の戦争。ユリはあの様子だとダメそうだな。」
ため息をつき、そっと部屋から出る、ダークロは、
「バアルめ…」
と悔しそうに言った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます