第10話 未知の生き物
車から降り、巨大生物スクラプトを討伐しに行ったユミー。
森のなかで木の倒れる音が鳴り、地響きが森の奥まで届く。
「クソッ!」
ユミーはスクラプトと追いかけっこをしていた。
「何で俺が逃げる側なんだよ!!」
ユミーは木の枝を使って速く空中を移動していた。
「木の障害物レースかよ!!」
初めての危機にユミーはいつもより少し焦ってた。
ユミーを追うように木々を倒していくスクラプト。
8本中4本の腕で鋭い爪を使い、木を斬り倒しながら進んでいた。
ユミーの目の前に太さが5メートルはあろう木が現れた。
「よし!あの大木でスクラプトに急旋回してやる!」
ユミーは勢いを付け、大木に飛び出す。
ユミーの目が黄緑に光り
「筋力眼!!」
と、力のこもった声を放つ。
ユミーの足場にしていた大木が大きな衝撃を受け、大木が折れる。
スーパーボールのような跳ねで、反動を力に変えて勢い良くスクラプトの脳天に
衝撃を与える。
「超殴り!!!」
(普通のパンチ)
「グキャア!!!」
鋭い衝突音と断末魔が辺りに広がる。
「ドスン!!」
どうやら丁度、脳のある部分に当たったようだ。
ユミーが乗っていた車とは違うバイクに乗って捜索隊がユミーの周りを囲んだ。
バイクにはダークロが乗っていた。
大勢で捜索を行ったせいか、あまりダークロの存在には気がつかなかった。
「皆!スクラプトを運ぶぞ!」
ダークロはバイクから降りてユミー近づき
「有難うございます。ユファーさん」
「おう!まあこれで一任務出来た訳だし、これでお互い様って奴だ。で、ユファ
ーって誰だ?」
ダークロは口を開けてポカンとしていた。
「だから、俺の名前はユミーだ。」
「ユミー?アールグレイ所属の?」
「あぁ。と言うかお前誰だ?」
ダークロは一瞬で身の毛もよだつような顔になった。
「俺らのスクラプト捕獲計画はアールグレイのユミーに関する情報をかき集める
ための事前準備でしかなかった。だが、運命的に出会えたようだ」
ダークロとユミーに視線が集まる。
「総員!!ユミーに集中攻撃!!」
バイクに乗っていた捜査隊が背中に背負っていた銃をユミーに向けた。
「撃てぇ!!!」
ダークロの一言により、銃弾の雨がユミーを囲む。
辺りは一瞬で煙に包まれる。
「あぶねぇー」
木の上からユミーの声がした。
隊員は気づくと同時に銃弾の雨を一点に食らわせる。
「ザクッ!」
何かの切れる音がした。
「武器を持ってて良かったわー。スクラプトには歯が立たなかったけど」
隊員は霧のせいで辺りがよく見えなく、やみくもに撃つと隊員に当たる可能性が
あるので撃たなかった。
だが、続々と何かが斬れる音がした。
「まっ!…」
「おっと、何かを言おうとしていたな。まあいいか」
霧が晴れると其処には血の濡れたナイフを持っているユミーがいた。
周りには幾つもの斬られた首だけ。
「おやおや、随分と殺してくれましたね。」
「まだ、生きてる奴もいる。」
少し細目でにらみ合う。
「俺と闘うのか?」
「それはこちらのセリフですね。ユミー。さんはどうやら、ちょっとした怪力を
破滅だとか言っているようですが、一つ言わせてもらうとすれば、そんな怪力の
事を破滅なんて言わないですよ?」
「前まではな。今は違う。」
ダークロは少し前屈みになると
「カキン!!」
鉄のぶつかる音がした。
一瞬の間に剣とナイフのぶつかり合いがあったのだ。
「一瞬で剣が出てきやがったな。スキルは剣を生成するってとこか?」
「スキルは人にあえてバラさないのが基本ですよ?」
片手に剣を持ちユミーに斬りかかる。
「ッ!」
ユミーはナイフでそれを止める。
「甘いですね!!」
空けていたもう片方の手には鉄の剣が柄の部分からやいばに向かって姿を見せて
いくのが見えた。
「2刀流!!」
「オラッ!!」
ダークロの片方の剣をユミーは両手で弾き飛ばしユミーに斬りかかろうと向かっ
ている剣のはを受け止める。
「お見事!」
「ぐぅぅぅぁぁぁ!!!!」
もう片方の剣も弾き飛ばすと、少し後退りする。
「お前の能力は…物質を分けてるのか?」
まあ、そんなとこかと言う顔で
「まあ、大体合っていると言えば合っていますが正解は、原子を分離して個体と
して固める」
ユミーはスン!と鼻を鳴らす。
「知ってるか?スキル自分のスキルを敵にバラすのは、良くないんだぜ?」
少し鼻が高い。
「川の流れる音がしますね。今も川が見える」
ユミーは斬りかかる。
「川で気を逸らすなんて、酷いもんだな!!」
ナイフが空を切る。
ダークロはいつの間にか川の中に立っていた。
川からは煙が出ている。
「原子を分離させて個体にさせる。一見貧弱そうなスキルですが…」
少し濁った空気のクナイをダークロはユミーの周りに投げる。
「何だ!?」
ユミーはまた少し後退りした。
「水を分離させれば水素と酸素が出る。中学生ならわかることです。」
ユミーはいまいち話の内容が読み込めず
「すいそ?さんそ?」
ダークロは少し微笑むと
「分かりやすく教えてあげましょう!灼熱眼!!(しゃくねつがん)」
ダークロの目が赤と黒の2色に染まる。
一つの小さな炎の弾がダークロの掌から放たれた。
「まずは酸素ォ!!」
空気の濁ったような色をしたクナイが炎の弾に当たる。
「酸素でまず、急激に炎の出る量を増幅させる!そして、炎の弾の炎がクナイによって爆発する!」
ユミーに炎が降り注ぐ
「う、ウルトラパーンチ!!」
怯えながらもユミーは只のパンチをかました。
ユミーに炎の直撃は免れた、が周りの水素のクナイに引火した。
「炎の範囲拡大による水素クナイの引火!!」
ユミーの辺りはすぐに火と煙に包まれ爆発する音に包まれる。
しばらくして、煙の中から出てきたのは地面に倒れていたのはユミーだった。
「フハハハハハ!!!ウィンだ!!!」
しばらくして、ダークロの所にヘリが来るとユミーとスクラプトを吊り下げて組
織の箱に行った。
ヘリから降りたダークロは通路を通って暗い部屋に入る。
さっきとは全くの別人のようにオーラが違う。
「やあ、お前ら」
部屋の中にはユミーを迎えたあいつが立っていた。
「ボス!どこに行っていた?」
「少し野暮用だ。それより、いいものを手にいれたぞ。今から核抽出作業をするつ
もりだ。手伝え」
ダークロと男はスクラプトが倒れている周りが真っ白な部屋に来た。
其処には多くの機材が並んでおり、全て核抽出に必要らしい。
「始めろ」
気絶したスクラプトの上からまた、機材が降りてきた。
すると、鋭いメスのついたアームがスクラプトの頭の部分を切り、傷口を開け
る。
その中からは八面体の立体が出てきた。
「これがこいつの核か」
「ハズレだな」
核は基本的に角が少ないほどスキルの質やアイの覚えが早いと言われている。
だが、筋トレや鍛練をすることにより核の角は削られる。
「こんな核、闇市で売っても10万も入んねぇよ」
「一応見ておくか、ユミーって奴も」
「誰がやると思ってんだよ」
「おまえ」
「ですよね~」
どうやら、関係性的にはダークロの方が少し上司のようだ。
機械のコントローラのような物をいじるとスクラプトの床の下が開き、ユミーが
机のようなものに横たわっていた。
「このサイズは繊細だからちゃんと手でやらないと、売り物にならないんだよな
ー」
だるそうにゴム手袋を付け、帽子をかぶり、白衣を着る。
「ダークロはそこにいろ。ごみが入るからな」
ガラスでの窓越しにダークロは男がユミーの核を取り出すのを見ていることにな
った。
「失敗すんなよー」
ユミーの皮膚にメスの刃を入れるが、少しすると傷口が閉じてしまった。
「なるほど、鎮癒剤(ちんゆざい)が必要だな。」
鎮癒剤とは、回復能力を一時的に低下させる薬だ。
再びメスを入れ、核を取り出そうとする。
だが、出てきたのは緑色の光るドロッとした液体だった。
「な、なんだ?これは?」
男は戸惑いと混乱を隠せなかった。
「血は赤が基本なのに緑だと!?それに、核がねえ!?こんなの、生物的に…科
学的に信じらんねぇ!?」
ガラスの向こう側では…
「なんか、言ってんなぁ」
「こいつは闇市で売ったら、2兆は容易いぞ!?その前に色々見ておくとするか」
そんなとき、緑の液体が動いた。
「こ、これは!?血ではない!?」
「ピシャン!!」
液体はぐにゃぐにゃとしていたが、音をたてると同時に男の頭を貫いていた。
「バタン!」
男は倒れ、その場で息絶えたという。
窓越しにそれを見ていたダークロは叫んだ。
「グライトー!!!」
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