第7話 策士の勝ち

戦いの衝撃が止んだ。


「これで終わりか?」


「まだ戦争は続くぞ」


凍りついた声が後ろから聞こえた。


切迫した表情でトミーはすぐさま後ろを向く。


「まさか…」


トミーの額から汗が垂れる。



「おい、ヘファイストはどうした?」


リミーが恐る恐る聞いた。


「殺した。」


辺りが凍りついた。


「ふう、ふう、今やることは…ただ怒るだけじゃないだろ。」

息づかいの荒いユミーがトミーの盾に寄りかかっていた。



「ヘファイストは生きてる。そんな感じがする。それに、殻に籠ってばかりじ

ゃ、飛べないぜ。」


「お、おう」


トミーは盾を解除した。


深い深呼吸をして目を瞑るユミー、緊迫した雰囲気を纏う、トミーたち。


最後の決闘が始まる。


ユミーは目をゆっくりと目を開くと、眼の色は黒から黄緑色に輝いていた。


「いくぞ!!」


「「うおー!!!!」」


7対1、普通なら勝てるはずだかそうならないのが現実だ。


「リミー!!」


リミーが真っ先に走り足を蹴り転ばそうとした。だがそれはすぐに避けられてし

まった。


(チッ!俺がマッハ5で走れるのは、一日に一回まで。それと今回、勝つにはコミ

ーの摂理で相手を眠らせる。それが必要条件だ。つまり、今回の決闘で鍵を握る

のはコミー!!)


次にケミーが上から口を開けて降ってきた。


「ふん。」


だが、ラッチェはすぐさま避けて手袋の弾を3つ握り、弾の速度でケミーを彼方へ

ぶっ飛ばした。


次にアミーは物凄い重力をラッチェにかけた。


「グッ!!こんな、ゴミの分際で!!」


革箱から銀の弾が転がり、重力の掛かっていない所に出るとすぐさま、アミー目掛けて飛んでいった。


「ぐッ!!」


アミーに弾が当たってしまった。


さらにラッチェに掛かっている重力は解けてしまった。


(たしか、コミーというやつが一瞬で俺の部下どもを倒していたな。コミーを警

戒しておかなくては。)


ラッチェはしっかりとコミーの動きを見ていた。


「余所見は危ないよ。」


地面から木の根のような物が生えてきた。


「最近、地面から生えさせられるようにもなってね。」


「くそッ!」


木の中から弾が出てきて根の様なものを切っていき、ラッチェは木の根から脱出

してしまった。


「ふう。できた。」


ラッチェは落ち着いた様子でため息をついた。


「何だって!?」


「レミーだっけか?とりま寝てろ。」


レミーは後ろから手袋に入っていた弾が当たった。


「革箱のストックが全部ダメになってしまったな。」


「うおお!」


ラッチェの背後からコミーが飛びかかってきた。


「甘いな。」


ラッチェはコミーを真っ正面から弾を5発ほど撃った。


コミーは撃たれたところを抑えた、がすぐに力が抜けて手が床について、そのあ

と起きる様子もなかった。


ラッチェは撃った弾を全て手袋にしまった。


その様子をトミーは汗を滴ながら少し遠い所からじっと見ていた。


「お前はたしか、コミーだったか。条件を満たせばそのとうりになる。例えば1メ

ートル以内のやつは全員、眠れとか。まあしょせん一日に五回らしいがな。俺を

倒せる可能性のあるやつは潰した。もう、3人しかいないのか。」


ラッチェはトミーを見ると


「あのシールド使いはもう諦めたようだな。」


「おれの…おれの出る幕はもうない。」


ユミーが下を向きながら言った。


「弱すぎるせいでな。」


ユミーが首を振りながら前を向いた。


そのときには目は黒くなっていた。


「もう、俺らは勝っている。」


「な、何をいっているんだ?」


「残念だがここで終わりだ。」


「1分以内に手に触れたもの全て爆破しろ!!!!」


倒れこんでいたコミーから声がした。


「ボン!!!!!」


爆発音がラッチェの手からした。


ラッチェの周りには煙が舞っていた、そしてラッチェの腕から血が流れ両手は無

くなっていた。


「グアーーーー!!!!」


ラッチェは激しい断末魔を放つ。


「な、なぜだ!?なぜ、俺は…」


ユミーが笑いながら


「説明してやるよ。」

と言った。

「俺は仲間全員に音眼で言っていたんだ。音眼には一人だけに聞こえさせること

ができる。で、コミーに伝えた内容はわざと技を受けて傷口を押さえるようにし

て、受け止めた弾を触れと。」


ラッチェの額の汗が顎から垂れる。


「だが!!弾はからだのなかに埋め込んだはずだ!!!」


「トミーの盾を小さくしたものを傷口の中に先に作っただけだ。手の角度で大体

わかる。」


「何だと!?」


「全員、トミーの盾で軽症。気絶も全て演技何だよ。」


全員が立ち上り腰を地につけているラッチェを見下ろした。

「クソッ!!!」


ラッチェはすぐさま立ち上がり上に跳び、家の屋根に乗った。


「今回は引き分けにしてやる。次はお前ら全員捕まえてやる。」


そう言ってラッチェは目が光り消えてしまった。


ユミー達は気が抜けたのたか、地面に腰をつけた。


「ふううう」


トミーはコミーを見て、拳と拳を軽くぶつけ合った。


~~~~~~~~~~~~後日~~~~~~~~~~~~~


「結局ヘファイストも軽症でよかった。」


ユミー達は家にいた。


「ヘファイストを見に行った時は核を撃ち抜かれているようだったからな。」


コーヒーを飲みながらリミーが言う。


「でも、ヘファイストは常に防具を着ていて、その防具は絶対防御なんだって。」


「な、なるほど。まあ、今回の戦いで得られた物は大きいな。」


少し首をかしげたケミーが質問した。


「てか、何でユミーは音眼ができたん?」


「確かに。」


「現場に向かってるときヘファイストに教えてもらったんだ。基礎のアイは今か

らでも習得できるほど簡単なんだ。」


皆が理解したようで


「へー」


と、口を揃えて言った。


「なんなら今、みんなに教えてやるよ。」


ユミーはやる気満々だった。


この頃…

アールグレイ本部会議室


「どうやらあの、新人どもが凶悪指定犯罪者のバンク・ラッチェと戦闘をしたようだぞ。」


アールグレイの幹部が話し合っていた。


「何だって~!?」


とても高い女の人のような声がした。


「ちょっと興味あるな~!!その子達の話!!」


「会議中ですよ、マースさん。」


マースと呼ばれている彼女の周りには少し光を帯びていた。


「ユミーとかの話ですか?」


「それ!そのユミー!!会ってみたい!!」


彼女は目を輝かせて言った。



会議が終わった後も彼女はユミー達のことを考えた。

「よーし!今度会いに行ってみよっと☆」

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