第29話 巨悪たちの語らい
「いやー、やられたね。まさか四百四病の王に対するガンメタを張った相手が出てくるとは」
漆黒の空間で三体の影が語らっている。
「ふん。たかだか微生物が我々と同格であったこと自体がおかしいのだ」
「そう言わないでよ。彼も結構頑張ったんじゃないかな?」
「そうだ。俺たちはまだ動けないからな。その間を埋めるいい端役になったんじゃないか?」
その影が何者であるかは、その場所にいたとしても伺い知ることはできないだろう。
いいや、そもそもこの影のありかにたどり着くことすらできないはずだ。
なぜならここは、彼らの精神世界の中なのだから。
「それにしても恐神キョウマか。要警戒対象だね」
「そうか? 所詮は生産職だろう? 俺たちの相手にはならないんじゃないか?」
「まあ、基本的にはね。彼の今のレベルは大体2500ぐらいだから、前衛系ステータスで言うところのレベル1000程度。それじゃあ、僕たちの命を脅かすには足りない」
「それに奴の本領である病は俺たちには効かない。所詮奴は不用意に動いた四百四病の王が生み出した、特効薬のようなモノ。我々には通用しない」
「そうだね。そうだといいんだけどね」
「意味深だな。何かあるのか?」
「もし彼がさ、何か怒り狂うようなことがあってさ、人類を殺し尽くしたら、どうなると思う?」
「レベルが上がるな。……そういうことか?」
大勢の人間が死ぬという仮定であっても、感じたのは一つだけだった。
レベルの向上。
彼らは人の命を何とも思っていない。
「そうなんだよねぇ。彼が人類の敵となった時に、僕ら以上のレベルになりかねないって言うのが不安なんだよね」
「レベルは上げれば上がるほど必要なリソースが膨大になっていく。国を複数落としている俺たちでも、4000程度で頭打ちになっている程度にはな」
彼らは、『大国滅亡級』のネームド。
『天秤』。
『巨獣』。
『荒天』。
その名を聞いただけで震え上がる者すら存在するほどの、極限の強者で、絶対の悪だ。
「ならば育つまで待つべきだな。奴がより強くなってから収穫すればいいだろう」
「ひゅー。流石、『巨獣』。自信家だね」
「お主、我の事馬鹿にしておらんか?」
「してない。してない。核兵器を雨あられと打ち込まれて、ピンピンしてるような子に喧嘩なんて売らないよ」
「それで、どうするんだ? ニホンを攻め落とすのか?」
「そろそろ我らの力も、国を落とせる程度には回復したことだしな」
「うーん。ちょっと今回は暗躍してみようと思うんだよね。人間たちを使ってさ」
「どうするつもりだ『天秤』」
「悪だくみをさせたらお前に勝る奴はいないからな。聞かせろよ」
天秤と呼ばれた影は、嗤う。
「いやいや、大したことじゃないよ。人間ってさ、案外脆いんだよね。例えば家族や恋人を人質に取られただけで、あっさりメンタルのバランスを崩しちゃんだ。で、恐神キョウマに関してなんだけど、何でも彼、とっても大切にしている人がいるらしくてさ」
「そいつを殺すのか?」
「ただ殺すんじゃだめだよ。今から、恐神キョウマ目掛けて、多くの国からいろんな人間が派遣されてくる。そいつら全員彼を狙っている。篭絡・隷属、やり方は様々だろうけどね。そのうちの一つでも、その大切にしている人を殺したら、彼、どれだけ怒り狂うと思う?」
「はっ、相変わらず性格が悪いな」
「これぐらいはしないとね。人類が手ごわいなんて、みんなよく知っているだろう?」
「確かにな。では悪だくみはお主に任せよう」
「任せてよ。それじゃあ、人類滅亡のために、僕らも頑張ろうか」
「人類滅亡のために」
「人類滅亡のために」
□
邪悪たちは、語らう。
人類滅亡のために。
世界の破滅のために。
今その魔手が、一人の少年とその親友に向けられようとしていた。
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万病の覇王 ~ジョブ『キノコ農家』の俺、菌の力で無双する。燃料確保・食料生産・消毒治療・環境保全・疫病攻撃、何でもできます。え、美少女たちが次々に恋の病に罹っている? 何それ、知らん。怖……~ ポテッ党 @poteto_party
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