“一黄 リキ”は怒りっぽい(マジで面倒くさい)

第5話

晩ご飯を済まして、一黄(いちき) リキの部屋で、日課になりつつあるゲームをしていた。



「ああ!!クソッ!!また負けた!!」



金髪に染め上げた短い髪を、クシャクシャと掻く。

あたし達が対戦しているのは、格闘ゲームだ。

あたしに勝てるまで、毎晩挑んでくる。



「リキ弱っ〜」



「うっせぇ!黙れブス!俺はこれでも強い方なんだぞ!!」



「ブスってダイレクトに言うな!分かっとるわ!もう少し年上を敬いなさい!」



リキは、シトと同学年の一個下である。

ほんと、年下共は生意気に育ったな。



「くるめのどこを敬えっつーんだ!そっちこそ、俺を敬えよ!財務大臣の息子だぞ!」



「はぁ?!そういう風に扱われるの、嫌いな癖に何を今更?!」



「くるめは、敬らなさ過ぎるんだよ!」



「めんどっ!めんどくさっ!ゲームに負けたら、威張り出すのやめくれない?!そういう風にしてると、好きな子に愛想尽かされるわよ!」



「はぁあああああああ?!」




ズザザザっと、後ろに思いきり下がるリキ。その顔は真っ赤に染まっていた。

ほほう。照れてとる照れてとる。



「い、いねぇし!!そんなヤツ!!」



「へぇ〜?確か今日、校舎裏で、女の子に告白されてたでしょ?『好きなヤツいるから、付き合えない』って断ってたじゃん」



「何で知ってんだよ!」



「たまたま、通り掛かったの。いや〜甘酸っぱい青春送ってますなぁ」



リキだけでなく『セブンモンスターズ』全員がモテる。が、今のところ、彼女らしき存在は見受けられない。



「ニヤニヤすんな!気持ち悪い!」



「いいじゃん、いいじゃん。で、どんな子なの?教えてよ」



「誰が教えるか!」



「ふーん、じゃあ、このゲームにリキが勝ったら聞かない。あたしが勝ったら、どんな子か教えてよ」



「ふざけんなっ、俺不利じゃねぇかよ」



「なんだ。負ける気満々じゃん?」



「なっ、負けねぇし!勝てばいいんだろ?勝てば!」




そして、再びゲームのコントロールを握るリキ。

基本負けず嫌いなので、こういう風に言えば乗っかてくるので、扱いやすい。

まぁ、何度やったところで、あたしには勝てないが。




「なんだよ、今の技......今まで隠してやがったな?」



「そう易々と手の内は明かさないものよ。さぁ、観念したまえ。約束通り、好きな女の子を教えなさい」



「ーーっ、クソ!むかつく!」




リキはコントロールを投げると、あたしに背を向ける。



「ーー名前は教えねぇけど。ソイツは、年上の癖にガキっぽくて。誰に対しても分け隔てなく接してて、まぁ、時々口煩いけど。あとはーー笑うと可愛い」



「ほほぅー?年上かぁー。いや〜見てみたいな」



「もう見てるだろうが」



「え、なに?なんて言った?」



「別になんでもない!それで、くるめはどういう男が好きなんだよ」



「あたし?」




なんで急に恋バナ?乙女か。




「え、興味あるのリキ?」



「ね、ねぇーーいや!あるッ!!参考に聞く!」



「参考ねー別にいいけどさ。まずは、ガタイが大きくてーー」



「ガタイか......」



自分の身体を触るリキ。まぁ、あたしの理想には全然遠いのだけど。



「筋肉モリモリなのに、動きが素早くて、しかも技のキレが半端ない!そんでもって、ダンディーな顔であれば尚よし!」



「ーーふーん......って、それ、くるめが好きなプロレスラーだろ!」



「え、そうだけど」



「全然参考にならねぇよ!!アホか!バカか!ブスっ!!」



「悪口のオンパレードはやめてくれる?!聞いてきたのはそっちでしょ?!もしかしたら、その子もプロレス好きかもしれないでしょ!!」



「そりゃあ、好きだけどよ!!ーーっ、やばっ!!」




慌てて口元を押さえるリキ。だが、既に遅い。

バッチリ聞いてしまったのだ。




「嘘でしょ!?この学園にそんな子いるの?!『プロレスってなぁに?ウフフ』って、頭にお花が咲いてそうなお嬢様に、そんなレアな方が!」




あたしの反応に、虫けらでも見るかのよう目をするリキ。そんな目を向けるな。




「大概、くるめも失礼だよな」



「教えてよ!あたしと同級生の子!?是非語り合いたい!お友達になりたい!!」



「やめろ!近づくな!ぜってぇ、教えねぇ!もう、出てけし!」




グイグイと、部屋の外へと押し出すリキ。




「ひどっ!学園に友達が出来ない、あたしが可愛そうだと思わないの?一体、誰のせいだと......」



「うっせぇ!もう、二度とこの話すんなよ!」




おもいっきし、部屋の扉を閉めるリキ。

おまけに鍵を掛ける音までする。



くそぅ!

何としても、見つけ出してやる!



そんでもって、リキの恥ずかしい幼少時代を暴露してやるんだからね!



覚えてろよ!!

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