第12話

「ねぇ、リベラ。行こう‼︎」


私はそう言って彼女の前に身を乗り出した。リベラはティーカップを手にしながら、少しめんどくさそうな顔をして私を見ている。


「……何が『行こう‼︎』なの?」


「だから、学校の噂だって! 赤い目の女が鏡に映るって話、気にならない? せっかくなら一緒に見に行こうよ!」


リベラは少し驚いた顔をした。私は内心で「よし」と思った。いつも余裕そうなリベラの顔に、こんな表情をさせるのは珍しい。


「……透空とあ、あのね」



彼女は笑いながら首をかしげた。


「それ、ただの作り話か、悪ふざけだと思わない? わざわざ夜の学校に忍び込むなんて、リスク高すぎるでしょ。先生とかに見つかったら大変だよ。」


「そんなの分かってるけど!」



私は力強く言い返す。


「でもさ、今までリベラと一緒にいたら、普通じゃないことがたくさん起きたでしょ? あの化け物だって、ただの噂じゃないって分かったし……今回も、きっと何かあると思うんだ」


「……」



リベラは黙ったまま私をじっと見つめていた。その瞳には、どこか諦めと、それでいてほんのわずかな興味が混じっているように見えた。


「ほら、リベラなら怖くないでしょ? 私ひとりじゃ心細いし……一緒に行こうよ。ね?」


彼女は小さくため息をつくと、いつものように肩をすくめた。



「まったく、仕方ないね。ここで断ったら透空が1人で勝手に行きそうだし……いいよ、付き合ってあげる。でも、変なことに巻き込まれても文句言わないでね。」


「ほんと!?」



私は嬉しさを抑えきれず、思わず身を乗り出した。リベラは呆れたように笑う。


「はいはい。」


その軽い調子に少しだけ安心する。リベラと一緒なら、どんなことが起きてもきっと大丈夫だ――そんな不思議な安心感がある。

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