第8話(リベラsaid)

「リベラ、聞かせてくれてありがとう。」


透空とあが微笑みながら言ったその瞬間、胸の奥に突き刺さるような痛みが走る。

息を吸おうとしたところで、喉の奥からこみ上げてくる鉄の味に気づいた。

咳き込むように口元を押さえた瞬間、紅いものが指の間から滴り落ちた。”また“だ

最近心なしか吐血の頻度が増えているような気がするし、少しだけど体調まで悪化してきている。


「リベラ!?」


透空の声が耳に響くけど、僕は無言のまま壁に手をついて体を支える。もう慣れたものだ。ただ、透空に見られたのは…不覚だった。きっとめんどくさい事になってしまう。


「…ちっ。」



僕は小さく舌打ちをして、口元を拭う。血がぽたりぽたりと床に落ちていく。

透空が慌てて近づいてくるのが見えた。


「リベラ!どうしたの!? 大丈夫じゃないよね!?」



彼女の声には、明らかな動揺が滲んでいる。


「…別に、これくらい平気だよ。」



僕は笑みを作り、軽く肩をすくめる。


「平気じゃないでしょ!これ、病院行かないと…!」



彼女が僕の腕を掴もうとするのを、さっと手で制した。


「必要ないよ。こんなの、ただの持病みたいなものだから。」


「…そんな風に言わないでよ。」



彼女が低い声でつぶやく。その声には、怒りとも悲しみともつかない感情が混じっていた。


「なら、どう言えって?」



僕は少し挑発的に返しながら、体を起こす。痛みは引いてきたが、立ち上がるたびに残る倦怠感はどうすることもできない。

透空は何も言わず、ただ僕を見つめていた。その目は、僕を責めるわけでもなく、ただ僕をどうすればいいか悩んでいるようだった。


「ほら、そんな顔しないで。」



僕は笑みを作り、透空の肩を軽く叩いた。


「リベラ…」


彼女の声が沈み込む。僕がこれ以上何も言わないことを悟ったのか、透空は深いため息をつき、それ以上問い詰めることはなかった。ただ、その目には消えない疑念と心配が浮かんでいた。




おまけ

念願の土曜日、目が覚めた私はリベラの方を見て、思わず二度見した。ふわふわの猫耳が彼女の頭についていて、柔らかそうに揺れている。


「…それ、いつから?」


私は少し戸惑いながら静かに尋ねた。

リベラはちらりと視線を返し、


「結構前から。でも隠すのもめんどくさいし、もう必要ないかなって思ってさ。」


と軽く答えた。

私は猫耳から目を離せないでいる。リベラは気にする様子もなく、普段通りにくつろいでいるようだった。

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