第27話 side:U 事後とはじまりと
俺が意識を取り戻したのは夜中だった。
というか、多分夜中だと思うのだが、部屋の中が暗くて時計が見えない。ただ少しだけ空いているカーテンの先は暗いので、まだ夜明けとかではなさそうだ。
少し前に目覚めてから、俺はぼんやりとしている。ちなみに、絶賛嗣にぃの腕の中である。疲れないのか、この腕は。
嗣にぃの腕になんとなく額をつける。そこで、お互いの身体がベタついていないことに気付いた。きっと事後に嗣にぃが拭いてくれたのだろう、清潔になっていた。嗣にぃ自身からも、あの浴室にあったボディソープの匂いがするので、シャワーでも浴びたのかもしれない。俺たちは二人とも汗だくだったし。
ボディソープといえば、うちにあるものと同じ香りだ。うちにあるのは定期的に麗華さんが届けてくれるもので、市販はされてないようだった。ドラッグストアなどでも見たことがない。一度母さんが『安売りで買ったー!』と弱酸性系のもの買ってきたことがあるのだが、次の日にはなかった。多分、麗華さんに回収されたのだと思う。
ちなみにタオルも同じように、3ヶ月に一回ほどの周期で新しいふかふかしたものが届く。
もちろんこれも麗華さん経由で。麗華さん曰く『昼乃と同じものを使わないとね』らしい。・・・わからん。
どうやらここにあるのもタグを見た感じ同じメーカーらしく、うちはパステルカラーで揃えられているがこちらはモノトーンだ。
そういえばシーツもグッチョグチョだったけど綺麗になってるっぽい。・・・これどうやって替えたのだろう。よくわからないけど、凄い男だ・・・。
しかし、何というか・・・セックス、凄い・・・。
なにあれ、本当にネットに書いてあったことと違うんだけど。
苦しい、きつい、気持ち良い・・・初めはそれらが交互にあるいは一気にきて、後半はひたすらに気持ち良い、しかわからなかった。
受け入れたときに感じた圧迫感やちょっとした痛みはいつしか飛び去り、俺はぼやけた頭で嗣にぃを受け入れていて、とにかく、ガツンガツンと当たる腰に喘がされた。
嗣にぃがコンドームを付け替えるのを見た気がするのだが、濃厚で独特な匂いと雰囲気と衝撃に呑まれた俺は、それが一回なのか二回なのか、よく覚えていない。とりあえず俺が装着させられた、あの一回きりでないのは確実だから、体力があるんだろうな・・・。
俺はと言えば嗣にぃとは対照的に自分で動いたり喋ったりする体力は前半で奪われていて、その後は譫言のようなことしか言えなかったと思う。
つか、変なことを口走ったり、約束したりしてなきゃいいのだが・・・嗣にぃの声はよく聞こえたので『この人よく喋れるな・・・』なんて、ぼんやりと思っていた。
途中途中で、抱きしめられたり、撫でられたり、キスをされたり・・・ほぼほぼ受け身でしかなかった俺は所謂「マグロ」になっていたのでは、と心配になる。が、もうね、無理。あれは無理だ。少し慣れなきゃ・・・いや、またするのかな、これ。
『ゆうくんとはもういいかな』とか言われたらどうするよ・・・。
腕の中から隣で寝息を立てる嗣にぃを見上げる。俺を抱き枕にしてるところを見ると、嫌ったわけではなさそうだが・・・。
まあ、俺がどう考えたところで嗣にぃの気持ちなんて計り知れない。結局は、この人が目覚めた時勝負だ。
俺は一つため息をつく。あー・・・それにしても、喉が渇いた。
うろ覚えでしかないが、ずっと声は出ていたし出させられてた。射精も何度かした気がするし、圧倒的に水分が足りない。まあ、嗣にぃのことなので口移しとかで飲ませてくれた可能性はあるけども。
とりあえずは水分だ・・・!俺は嗣にぃの腕をゆっくりと退けて、起き上がる。
・・・・・・裸ですがな。なぜ起きた時に気が付かないのか、俺よ・・・。
どこかに引っ掛けるものはないかと思いながら、台所へと向かうために俺はベッドから立ち上がったーーはずが。
「あ・・・?」
カクン、と足が力無く崩れてヘナヘナと床に座り込んでしまった。
・・・嘘だろ、立てない。これはもしかして、嗣にぃとのアレで腰が抜けてるって・・・こと?俺は目を白黒させる。
え、えー・・・腰抜けるの・・・。てか、どんだけしたのかな・・・。
「・・・ゆうくん?」
不意に声をかけられて、ひぇ、と情けない声が俺から漏れる。
てか、喉も枯れてないか?!ん、ん?!
「どうしたの?どこ?」
嗣にぃは起き抜けで目が慣れないのか、ベッドの上で俺を探しているようだった。
俺は手をベッドの上へと乗せて、嗣にぃの手を探す。
「こ、ここ・・・ちょ、たてな・・・」
やはり俺の声は枯れていて、ガッサガサだった。酷使しすぎですね、わかります。
俺の手と嗣にぃの手が重なると、嗣にぃが起きてから、俺の身体を引き寄せて抱き上げる。
「どこに行ったのかと・・・」
嗣にぃにしては、ちょっと弱目の声だった。俺のことを、ぎゅ、っと抱きしめながら髪へと頬ずりをする。
・・・こんな裸じゃどこにも行けないけどな。
「ん、喉かわいて・・・」
「ああ、なるほどね。ちょっと待ってて、水を持ってくるから」
嗣にぃが、枕元へと手を伸ばすと部屋はほんのりと明るくなる。どういう仕組みか俺にはさっぱり分からないが、眩しくない程度に調整されているらしい。便利・・・。俺をベッドへと置いて、嗣にぃが一度頭を撫でる。足元のガウンを羽織るとそのまま、部屋から出た。
ああ、足元にあったんだな。羽織るもの。つか、ガウンとか初めて見た気がする・・・こう、ドラマとかに出てきそうなお洒落なやつだ。てろん、とした素材の。あれはきっとポリエステルじゃないぞ。シルクだろ、シルク。
嗣にぃが実家にいて、俺が泊まりに行っていた頃はパジャマだった気がするけど・・・。嗣にぃは大人なんだなぁ、と変なところで実感する。
しっかしね!さっきも思ったけど本当に凄いね、セックスってやつね!
腰は抜けるわ声は枯れるわ・・・あと動いて分かったけど、中の違和感が半端ない。まだ何か入ってるみたいで、ジンジンする・・・。
いやぁ・・・本当にねぇ・・・。最初の恥ずかしいターンを過ぎれば、気持ちよくなるけれど・・・大変すぎる。
俺は上掛けを手繰り寄せてーーだって何せ裸だーーベッドの上へと横たわった。
「あれ?ゆうくん・・・大丈夫?」
そうしていると、嗣にぃがちょうど部屋に戻ってきた。横たわった俺の隣に座って、片手で俺の頬を撫でる。
「初めてなのに、無理をさせちゃったね。せめて気持ちよく、って思ったんだけど・・・」
大丈夫?と首を傾げた。
確かにね。結構激しかったようにも思うけれど・・・俺は経験皆無なので、どこまでが優しくてどこまでが激しいかハッキリとはわからない。
嗣にぃの手に、一度頬ずりをしてから俺はノロノロとその場に座る。
「だ、いじょぶ・・・その、気持ちよかったと・・・良かった、し・・・」
思い出すと照れるもので。耳が熱くなるのを感じながら、ぼそぼそと答えた。嗣にぃは俺へとグラスを差し出しながら、良かった、と微笑む。
あーくっそ、良い男だなぁ・・・何気に引っ掛けているグレーのガウンもよく似合う。
俺は手渡された水を一気に飲み干した。あーーーー!いきかえるーーーーーーーー!
「美味しい?僕にも少し・・・」
問いかけに俺は小さく頷いたのだが、後に続いた台詞に首を傾げた。え、飲んじゃいましたけど?!と。しかし、その言葉を出す前に嗣にぃが俺を引き寄せて、俺の唇へと自分のそれを重ねてきた。
「んっ・・・・・・」
そういう意味か!と理解した時には既に嗣にぃの舌が、俺の咥内に入り込み、動き回っている。そして、俺を引き寄せた手が背中を撫でて臀部へと落ちて、さらに狭間も通り過ぎて、入り口を突いた。グラスはいつの間にか、サイドテーブルの上に置かれている。
え、ちょっ?!この流れ、とてもまずい気がする・・・!てか手際が良すぎる・・・!
「んんっ・・・!ん、ぅっ・・・!ん?!」
俺は抵抗をするために身体を捩らせたが、嗣にぃのもう片方の手が俺を抱き込んで、動きを封じた。力で押されると身長も体重も小さく低い俺ではまるで太刀打ちが出来ない。俺はされるがままに咥内を舐めまわされることとなり、入り口を叩いた指先が、つぷりと中へと入ってくる。それはぐるっと入り口を拡げるように撫でてから、さらに奥へと進んできた。散々と嗣にぃのものを受け入れた場所は、まだ時間が経ってないこともあってか、易々と拓く。そこで漸く、俺の唇から嗣にぃのものが離れた。
「・・・ふ、っう、つ、つぐにっ・・・だめ、だめ・・・っ・・・ぬいて・・・っ」
水を飲んだことで声は多少戻っていたがーーそんな場合じゃない。俺は嫌だと示すために何度も首を振る。嗣にぃは笑みを浮かべつつ、俺の耳元に顔を寄せた。
その間も指は中へ中へと進んできて、今日見つけた俺の弱い場所上を撫でる。どうしようもない快感が弱く走って、俺は息を呑んだ。
どこでエロモードのスイッチ入ったんだよ、この人さぁ?!
「どうして?ゆうくんの、ここ柔らかくて喜んでるよ?」
「や、あ・・・ちが、っ、だめっ・・・つぐにぃ・・・っ」
いやいやいやいや?!『嬉しいでーす!』とか言ってないじゃん?!それとも俺の体内が嗣にぃの脳内に勝手に電波でも送ってますかね?!
けれどそんな言葉を言おうにも、指は遠慮なく俺のそこを刺激してきて、俺から出るのは情けない声ばかりだ。指はリズミカルに叩いたり、ぐっと強く押してきたりする。まずい、まずいまずい!気持ち良い・・・!しかもキスや射精と違う快感で、今まで経験したことがない感覚で、抑え込む対処方法が分からない。しかもそこからの刺激はダイレクトに俺のものへと伝わってくるのだ。
このままされたら、間違いなく勃ってしまう・・・。
「おね、おねが・・・っ・・・ひんっ、やああぁ・・・」
「ああ、可愛いね。ここ、ふっくらしてきた」
指先が絶妙な力加減を持って、そこを圧迫してくる。駄目とお願いを繰り返すのに、嗣にぃは全く聞いてくれる気がないようで。抱きしめてくる手には変わらず力が入っていて、俺は逃げられないままだ。
そして、危惧したように、俺のものは硬くなってきていた。
もうやだああああああああああああああああっ。こんなん絶対にまた、アンアンコースじゃないですか・・・!
「あ、あ、あ、あっ、だめ、おさない、でっ・・・つぐにぃ・・・っ」
「本当に、ゆうくんは・・・もう一度、抱きたくなってきた・・・」
耳元にあった嗣にぃの唇が俺の耳朶を噛む。強く噛んだり弱く噛んだを繰り返されて、そこも感じてしまっていた。濃厚なーーだと思われるーーセックスの後のせいもあるのか俺の身体はやたらと敏感で、快感をすぐ捉えてしまうらしい。
てか、アンアンどころじゃない。これ再戦コース・・・!セックスが伴うやつ・・・!
流石にないだろう?!体力的にも死ぬ・・・!
「やあ、だめ、も・・・だめぇ・・・おれ、しんじゃう・・・っきゃ、んっ・・・ああああっ」
俺の言葉に嗣にぃは耳元で息を呑んだ。耳朶を一度強く噛むのと一緒に、俺の中にあった指が膨らみを強く強く押す。悦楽がガっと押し寄せて俺を飲み込む。何度目だろうか俺は中で達していた。息が上がって、自分の呼吸がうるさい。
「ごめんね?ゆうくん。我慢できそうにない・・・」
そう言いながら、嗣にぃはベッドの上へと勢いよく俺を押し倒す。
よく聞いてほしい。この男、異常な程に行動に無駄がない。
何せ押し倒された俺が気付かないうちに、嗣にぃは俺の足の間に入り込んでいて、俺の片足を持ち上げていた。
え、え、え、いつの間に?!俺が快感でのぼせていただけかもしれないけれども・・・!そして緩く立ち上がる俺の股間の向こうには、嗣にぃの嗣にぃ(隠語)がコンニチハしていた。俺のもそりゃ、反応してますけど・・・デカすぎやしませんか。相変わらずですけど・・・。もう完全体勢じゃないだろうか、それ。
「や、やぁ・・・つぐにぃ、も、そのおっきいの、むり・・・」
俺は、とにかく首を横に振った。逃げようと肘を使って、ベッドの上へとずり上がる。俺、結構疲れてる!俺のは放置してればきっと収まるから・・・!
しかし嗣にぃはそんな俺を許してはくれなかった。片手で逃げようとする俺の足を抑えて引き寄せる。俺は逃げた分以上に嗣にぃに寄せられていた。
もう一方の手がサイドボードに手を伸ばしたかと思えば、先ほどまで指が入っていた場所へと、小さな円球の何かを無遠慮に押し込んでくる。
ちょーーーーーーーー?!何入れた?!何入れた?!
「ひっ!やだっ!つぐにぃ?!あんっ・・・な、なに・・・っ?!」
「・・・中で溶けるローションだよ。柔らかいと言っても、ね」
ぐぐ、っと奥へとそれが押し込まれて、指が弱い場所を引っ掻きながら出ていく。
浅く息を繰り返す俺の前で。嗣にぃは、口元にコンドームの袋を咥えて、ビッと包装を破って中身を取り出した。袋がベッドへと落ちていく。
そんな男の顔は情欲に塗れてうっとりするぐらいに綺麗だ。
うううううううううう!無駄に格好良いから嫌なんだよ・・・!
そして慣れた手つきで自分のものへと被せてから、その先っぽを俺の入り口へと押し当てながら、俺の腹を片手で撫でた。
「ゆうくん、優しくしたいから・・・拒まないで・・・。そうじゃないと、メチャクチャにしそうだ」
「な、にいって・・・っ・・・ひ、ああっ・・・や、ぁあああっ」
言い終わらないうちに、それはズブズブと埋まる。圧迫感は凄まじいが、初めと違って、苦しさは少なかった。ローションが中で溶けているのもあってか、それはスムーズに俺の中へと入ってくる。
嗣にぃが、ぐん、と腰を押し上げると根元まで大きいものが埋まりきって、俺の最奥を抉る。
「ひっつ・・・やあああっ、ふか、ぃっ・・・」
目がチカチカするような感覚を俺は覚えて、頭をシーツに押し付けた。うっすらと開いてる視界に、蠱惑的に微笑みながら俺を見下ろしつつ、自身の唇を舐める男が映る。完全に目は捕食者のソレだ。
本当、嗣にぃのエロスイッチってどこよーーーー?!
俺は心の中で叫んだのだった。
追記。『ゆうくんとはもういいかな』は杞憂だった。それは嬉しいし、気持ち良いけどきっつーーーー!
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