第16話 side:H 堕落への誘いと悪戯と

ゆうくんの甘い声が僕の脳に響く。

部屋に入るなり、見え隠れしていたゆうくんの頸に、僕は我慢出来ず齧りついていた。

まるでつい最近交尾を覚えた猿のように盛っているなぁ、と内心苦笑ものではあったけれど、手の届くところにいるゆうくんに触れないでいれるはずもなく・・・欲望の赴くままに、抱き寄せてキスをする。

これが通常運転では断じて、ない。自分でも驚く程の思いと行動だ。

色々と葛藤があるにはあるのだが・・・まあ、また、戸惑いつつもゆうくんが僕を受け入れるものだから・・・踏み止まる術もなく。

・・・いやぁ、ゆうくんのせいにするあたり、駄目だろうな。

うん、これは新婚旅行なわけだし、いっそもうハメを外させてもらおう。


「ちゃんと言えたね・・・いい子だ」


朱に染まる目元に口付けつつ、一度だけ手に中にあるゆうくんのものを強く握り込み離した。「ひぁ」と上がる短い悲鳴がまた可愛い。小さな背中と膝裏に手を入れて抱き上げる。うーん、軽い。


「わ、あ・・・っ、ちょっ・・・!」


驚いたゆうくんが、咄嗟に僕の首へと両手を回してしがみついてくる。

こういうのがまた可愛いわけで・・・。

安心させる為に頬へと口付けを落としつつ、ベッドへと向かう。


「・・・嗣にぃ、あの、この後・・・また、出かけるんだよな・・・?」

「うん?ああ、そうだね。どうしたの?」

「あ、あんまり・・・すると疲れるので・・・その、や、優しく・・・?」


ゆうくんは腕の中から上目遣いに小首を傾げた。まじまじとその顔を僕は見てしまう。

・・・控えめに言っても、興奮した。臍の奥の方をぎゅっと掴まれた感覚だ。

・・・・・・・・・え、これ煽られてる?え?いやいやいや、違うだろう!落ち着け、僕。


「・・・嗣にぃ?」

「そうだねぇ・・・善処するね?」


辿り着いたベッドの上にゆうくんを降ろしながら、答える。確約はちょっと無理そうなので、そんな風に濁して笑った。

ゆうくんを横にした場所は既に清掃が入っていて、清潔なものになっている。

まあ、うん。自分をどうこうする気はそもそもなかったので、心を落ち着けて触ろう。


「・・・嗣にぃ・・・」


ベッドの上にいるゆうくんはワンピースを着ていることもあり、本当に女の子のように見える。それもとびきりの美少女だ。この子は気付いていなかったが、一人にすると不逞の輩が即様声をかけようとするので気が気じゃなかった。

ついて行きはしないと分かってはいるが、かといってあーちゃんのようにけんもほろろに断りを入れることができるかだ。変に気を遣うところもあるし、何より断るのが下手くそなところがゆうくんにはある。

ーーそこにつけこんでいる僕が何よりの不逞の輩ではあるが。

大学生活が心配・・・と思うのはすでに何度目だろう。

おかしなもので、こんな風になるまで、僕はそこまで気が回っていなかった。

そりゃ多少の心配がなかったわけではない。ゆうくんの気質は知っていたし。

時期的に自分の結婚式が近かったのもあるだろうが・・・こうまでゆうくんが気になり出したのは、恐らく結婚式が発端だ。

あの時、ベールを捲った時。それがゆうくんだというのは顔を見て一瞬でわかった。いや、その少し前の誓いの言葉の時から違和感はあったのだ。

しかし、まさか姉と弟が入れ替わるだなんて思いもしなかったので、ゆうくんだと分かった時の衝撃は凄まじく、驚いたなんてものではなかった。

驚いたし、あーちゃんに逃げられたと言う事実はショックだった。たった数日前のことなので、記憶に新しい感情だ。

ただ、目の前にいる花嫁がゆうくんだということに、不平も不満はなかった。驚きは深かったが、その姿に見惚れた。

結果、妙ちくりんな発案をした挙句、こうして触れている。

ただ、まさか。こうも自分の中にーー独占欲があるとは、僕は、知らなかった。


そう、これは独占欲だ。


結婚式のあの時からじわりじわりと湧いて、ゆうくんに触れることを皮切りに、この気持ちは急速に発露した。

心配、なんてオブラートに包んでいるが、本当はもっと違う。


「ゆうくん、可愛いね・・・閉じ込めてしまいたい・・・」


ゆうくんの身体の上に乗り上げながら、口の端にキスをしつつ僕は呟く。

そう、紛れもなくこちらが本音だ。

ゆうくんとの生活を送る上で、二人で色々と行ってみたい所もあればしたいこともあるけれどーーゆうくんを部屋の中に閉じ込めて日がな一日中、僕だけで満たして可愛がりたい。僕なしで生きれないくらいに塗り替えたい。ゆうくんに触れれば触れるほど、そんな仄暗い気持ちが湧き上がっていた。

あーちゃんと一緒になっていたら、僕はあーちゃんにも同じことを思っていたのだろうか?

それとも、これがゆうくんだからなのか・・・。謎だ・・・。


「何言ってんだか・・・変なの・・・んっ・・・」


ゆうくんは少しばかり困ったように笑った。

僕はワンピースの裾をまたたくしあげて、膝から太腿、太腿から足の付け根へと指を滑らせる。息を詰めて、ゆうくんが口元を手で隠したが、僕を見上げる目は色が混じってて今からされることへ嫌悪も示してなければ、期待しているようにさえ取れた。

どういう気持ちなんだろうか、この子は。

僕にこんなことをされて、でも受け入れてしまって。勿論、僕の提案した『奥さん役』に徹しているということもあるのだろうがーー・・・。

本来ならば、僕が色々とセーブして然るべきだ。ましてやこんな風に触れるなんて言語道断な話であり、正直、許されるものでもないだろう。

花嫁の弟に手を出すなんて・・・ねぇ。

まあ、やめないし、触れるし、なんならズブズブに沼につけ込んでやろうと思ってしまっている。性的な意味も含めて僕なしで生きれない程度に堕としておけば、逃げられはしないだろう。

いやぁ、本当に僕は・・・一回、切腹した方がいいな。大濠くんじゃないけど。

ああ、それにしてもストッキングが邪魔だ。これ、ねぇ。

そうだ、替えはあるのだし・・・、


「嗣にぃ・・・?あっ・・・何してっ・・・」


足の付け根から、また太腿に指を落とし、ストッキングに爪を引っ掛けた。

ゆうくんの肌には傷をつけないよう、そこは慎重にだ。

意外と簡単にその場所は小さな穴があく。そこから指を潜り込ませて穴を拡げる。

ゆうくんは驚いたように声をあげた。

僕はもう一方の手も、ストッキングの穴にあてがい、ビーッと一気に引き裂いた。


「やっ・・・!嗣にぃ・・・!」


一回してみたかったんだよねぇ、これ。変態っぽいけど。・・・まあ、すでにそれは思われてるかもしれないが。

僕が裾をたくしあげたせいで、ゆうくんの下半身は曝け出されていた。下着は男物であるのだが、その上に破れたストッキングと、女物のワンピース。加えて驚きながらも上気したゆうくんの眼差し・・・。ゆうくんのものも、眼差しと一緒で興奮して下着を押し上げている。


あーあーあーあー・・・この、アンバランスさがこれまた・・・!目に毒。やらしさが過ぎる・・・!


いっそのこと、このまま明日の朝まで抱き潰してしまいたい・・・!

そう思えば自身の下半身にも血が集まるような感覚を覚えたが、我慢だ、我慢。

抑えろ、桐月久嗣・・・!

ゆうくんの身体は当たり前だが、男とどうこうするように出来ているわけでもないし、欲望のままに急いで繋がったところで、負担が大きいだけだ。

僕を完全に受け入れてもらう時には、しっかりと快感を得て貰いたい。

ならば、多少時間をかけて慣らしていく必要がある。今は我慢、だ。

なので、旅行中はひとまず僕が触れることに慣れてもらい、マンションに戻ってからは本格的に開発してあげようと僕は考えた。

それは、もう、僕好みに。僕だけのものを受け入れる為に。

はははは。下衆で最低だ。年端もいかない、可愛い幼馴染に向けるものではない。が、ゆうくんは奥さんなので、諦めて堕ちてもらおうじゃないか。堕ちてくれば、生涯をかけてゆうくんだけを可愛がってあげよう。精神的にも身体的にも、だ。そうしよう。

・・・くれば、じゃないな。僕の全力を尽くして、堕とす。


「ゆうくん、ワンピースをあげて胸を出して?」

「え、えぇ・・・じ、自分で・・・?」


僕が頷くと、ゆうくんは躊躇って視線を動かしたが、ゆっくりと呼吸を一つ落として、手を動かし始める。

ゆったりとしたシルエットのワンピースは、上から被って着るものだったので、ゆうくんがたくしあげていくと、薄い胸が現れた。

呼吸で上下する胸にある突起は、まだ平らなままだ。太腿に手を一つ残して、もう一つの手で胸の上を撫でる。何度もそうやって撫で続け、時折指の先で乳首を押してやれば、そこが硬くなり、姿を見せ始めた。


「あ、っ・・・やぅ・・・っ・・・」


ぴん、と指で乳首を弾くと、ゆうくんの身体がベッドの上で小さく跳ねる。

まだ快感と言えるものではないかもしれないが、悪くない感触だ。

小さな突起を摘んで、転がして、指を離す。僕は顔を下げて、乳首の上を舐め上げた。


「ひんっ・・・ちょ、や、なに・・・嗣にぃ・・・」


舌で押したり甘噛みしたりを繰り返すと、突起が固くなる。

ゆうくんは思っていた通り、感じ易い。不感症だったりすると色々と努力する部分が増えるがーーそれはそれで攻略のしがいがあるのだろうけれどーー感じ易いのであれば、教えていくだけでいい。


「ゆうくんのここ、感じちゃってるね」


ちゅう、と強めに吸い上げて伝える。ゆうくんは、恥ずかしげに緩く首を横に振った。


「やだ、そんな・・・っ・・・ち、が・・・あんっ!だめ、つぐにっ・・・吸っても、なにもっ・・・!」


わざとらしく、音を立てて吸い上げる。反対の乳首もぐにぐにと捏ね回し刺激を続けてやると、そちらも固くなっていた。


「嘘は駄目だよ?ほら」


指の間にある乳首を強めに抓る。ゆうくんが「きゃんっ」と甲高く叫んだ。

あー・・・何だろうか、この可愛い反応・・・。


「ね?気持ちいいね・・・?」


顔を上げ、耳元に唇を寄せて囁くと、ゆうくんが素直にこくこくと頷いた。

いい子だね、と耳朶にキスを一つ落とす。

それにも反応してゆうくんは震える。あまりにも可愛いし、情欲的だ。

あーこれ・・・色々と仕込んだら、結構まずいくらいに出来上がってしまうのではないだろうか・・・。楽しみ過ぎる・・・。

反応に満足しつつも、ゆうくんの下半身に留めていたままだった、手を動かす。

すべすべとした太腿を直接撫でて、そのまま上に移動させる。鼠蹊部から股間へと動かせば、ゆうくんの腰が揺れた。既にそこは勃ち上がっていて、漏れた先走りが下着を濡らしている。


「ああ、ちょっと出ちゃったね。下着が湿ってる」

「あ、あ、っ、や、やぁ・・・だめ、嗣にぃ、それいま・・・さわった、らっ・・・」


ゆうくんが声を上擦らせつつ、股間の上にある僕の手を止めようと手を下ろしていきた。けれども、その場所を簡単に譲る僕でもない。どころか、僕は手を素早く動かして下着の中に潜り込ませて、ゆうくんのものを直接握る。


「ひ、ぅう・・・っ、おれ、だめって・・・っ・・・あんっ」


軽く扱いて、啼かせる。愛らしい声がゆうくんからとめどなく漏れた。

一度達しさせて、今は終わりにした方がいいかもしれない。この後も予定はある。

ああ、でもその前のーー。

僕は一つやることを思い出して、上体を起こす。

一度、ゆうくんを解放して体勢を、正常位の形に変えた。途中でゆうくんの下着を取り払うのも、勿論忘れない。少し抵抗されたが、大した力でもなかったので、ゆうくんを包んでいた布切れはなくなり、勃ち上がった可愛らしいものが空気に晒される。まだそれは色の濃い場所でも桃色で、幼さが残るものだ。まあ、僕といる限り、ゆうくんのそれは僕しか触れないのでこのままだろうな。

恥ずかしさからか、手で隠そうとするのを、


「ゆうくん、その手はなぁに?自分でしたいの?僕に一人でするところを見せてくれるのかな・・・?僕はそれでもいいよ?見ててあげる」


そんな言葉を使って遮る。案の定、ゆうくんは狼狽しながらも羞恥に顔を真っ赤にして首を左右に振り、手を引かせた。代わりに口元を抑える。

あー可愛い。意識しないと、僕も元気になりそうだ。

いやいや、そうだ、あれを出さなければ。

自分のジャケットの中から、ラムネの袋を取り出した。それは出かけている時にコンビニで見つけたもので、梅味、と書いてある。袋を開けて、一粒取り出す。

ジャケットを脱ぎながら、取り出したラムネの袋と一緒に傍に置く。

改めてゆうくんのものを空いている手で緩く握り、上下に扱きながら、身を乗り出した。


「ゆうくん、口を開けてご覧?」

「ふあっ・・・?あ、なに・・・?んぁっ・・・」


空いているゆうくんの口の中に、ラムネを一粒放り込む。

戸惑ってはいたが、ゆうくんは口内へとそれを収めた。

その姿を見届けて、僕はにっこりと微笑む。うん、上手くいけばいいけどね。

色々と考えさせる前に、握った手に少し力を入れて、緩急をつけながら手淫を続ける。

時折、ゆうくんの胸や下腹にキスを落とす。

そういう感触も手伝ってか、ゆうくんが上り詰めるのは早かった。


「ひっ、だめだめだめっ・・・つぐにぃ、やあぁ、手ぇ、はなしてっ」

「大丈夫だよ。ほらゆうくん、イっていいよ」


相変わらず僕の手の中で出すのは抵抗があるようだが、僕は気にもしていないので、そのまま早めに擦り上げてやる。何度目かでゆうくんが背中をしならせて、


「あ、あ、あ、あ、っ・・・!や、ぁああっ・・・!」


断続的に喘ぎ声を放ちながら、達した。精液が僕の指の上を過ぎて落ち、ゆうくんの肌の上にも滴る。

何度もビクビクと身体を震わせた後に、シーツの上にぐったりとなる。

その頬に、僕はまたキスをした。


「う、うううう・・・つぐにぃの、ばかぁ・・・」


罵倒されたところで、そんな様じゃ可愛いだけだけどなぁ、と思ったがそれは言わないであげておこう。ごめんね、なんて悪びれもしない謝罪を口にしながら、僕はゆうくんの唇を塞いだ。

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