魔法と教師と化石の右腕

No.9 困るんだよなぁ

学園にコージローが来てから3日が経った。

その実践的かつ強引な授業は効果的だった。

魔法使いの最高権威、賢者としての力を存分に誇示し、実力で引っ張っていくような授業は

リーナやダンテには出来ない事だった。

クラスDの魔法使いとしての実力は伸び、来年の「マジックコンペティ」で9年連続最下位を脱出するまで時間の問題だ。

「困るんだよそれじゃあさ」

魔法学園リオハイム

学園長マレイン・リッキー。

マレインは1人の男に対して言う。その男は

魔法学園リオハイム教頭パブロ・アブレイユ。

「パブロよ、確かに学園を良くしろたぁ言ったがまた面倒くさい奴を連れてきたな」

不機嫌そうに頭を掻く。

余程都合が悪いらしい。

「マレイン校長、ワタクシが連れてきた訳ではございません。ファン・ダンテという一教師が連れて参りました。ワタクシは下のものに指示をしただけです」

「…キサマ、今堂々と自分の仕事を下に押し付けた事を言ったな」

「あら失敬」

はぁ、と思わずため息が出るマレイン。

魔法学園リオハイムは最低最弱の魔法学園として名を馳せていた、しかし生徒総数は減るどころか徐々に増えていった。入学には試験等がなく、入学金を支払えば

ど（・）ん（・）な（・）奴（・）で（・）も（・）入（・）る（・）こ（・）と（・）が（・）出（・）来（・）る（・）。

そのため、一流や一.五流の魔法学園の受験に失敗した学生達の「最高」の滑り止めなのである。

魔法の研究により年々実力も上がると共に受験のハードルも上がり続けている。

それも相まってリオハイムに来る生徒は基本的に家庭が裕福であるか、魔法学園卒業の学歴が欲しく奨学金を借りる家庭がほとんど、わざわざリオハイムに入りたいという家庭、人間は皆無である。

「ここで変に順位を上げてただの弱小学園にでもなってみろ、普通に別の弱小学園に行ってしまうわ」

「弱さと雑さが「学園」としては強みになっていた訳ですからねぇ、んー、どうしましょ」

腕を組んで天を仰ぐ。唸り声を出して考える。

「…この際、強豪学園を目指してみては如何でしょ」

パブロ・アブレイユはニッコリと笑いながら

提案してくる。

「バカな事をいうな、教員管理、生徒管理、もとい学園管理がひどく忙しくなって割に合わん」

「マジックコンペティ」の優勝を目指し日々奮闘している学園はごまんといる。授業のレベルを上げる為、施設の質を上げる為、そこにお金をつぎ込む。

学園としての収入は努力もなにもしていない学園のリオハイムと優勝を目指して頑張っている学園なら圧倒的にリオハイムの方が儲かっている。

楽して稼ぐを地で行っていた。

もちろん校長のマレイン・リッキーは金が一番だと考えていた。その考えなら易々とこのスタンスを崩すハズが無い。

「ここでヤツをクビにしてもいいんだが」

「賢者効果は抜群、親や教師、果てには生徒達の抗議はもちろん、魔法協会でも問題になる

でしょうね、余程納得がいく解雇理由がなければ…え、まさかあるんですか？校長？」

「あるわけ無いだろバカが！！」

このままでは本当に数年経てば「マジックコンペティ」で優勝しかねない勢いだ。1年では当然無理だがいつか必ず最下位は脱出するであろう事は間違いなかった。賢者が現役教師なんて世界で見ても稀な事である。

恐らく賢者効果で年々入学者が増えるはず。

必然的に生徒の質が上がり…という事になる。

マレインの思考から見るコージローは居るだけで厄介な人間なのである。

「では、ワタクシはこれで」

「おおい待て待て話は終わってないぞ！？」

「終わりましたよ校長、今打てる手立てはありません見（けん）の時です」

事実、散々話してこの結果である。これ以上の話し合いは意味がない。しかし教頭のパブロが人差し指を立てて言う。

「１つ、突破口になりそうな策はありますが」

「あるならさっさと言わんかい！！」

「監督責任を負わせる、です。リオハイムではなくクラスDの生徒がなにをやらかせば、もしや」

「んなるほど、そら良い策だ！その方向で行こう」

2人でニヤニヤと笑い合う。リオハイムの「敵」が

暗躍し始める。