No.7 頭の固さは胸くらい柔らかくねぇとな
「実技だーーーーー!!!!」
うおおおおおとやる気に満ちた歓声が上がる。
場所は移り変わってコロッセオ。
数分前までコージロー・ムラサキに対し、ほぼクラス全員が教師を辞めさせるべく奮闘していたとは思えない盛り上がり方だった。
「必殺技がほしいかー!!!!」
コージローが拳を突き上げメガホン片手に言う。
「ほしいーーー!!!!」生徒達も呼応するように大声で言う。ジフ・レインバールら数名は若干引き気味である。もはや誰がどう見ても教師と生徒の空気感であった。
「ちなみにだが、魔力はまぁ練れるとして、
魔法を使えるよってヤツはどんくらいいる?」
ちらほらと手が挙がる。その中には半分坊主ことザック・ヘルパテスもいた。
「よし、まずは魔法を使えるようになる事からだな。半分坊主、手本見せられるか」
「ザック・ヘルパテスだ名簿くらい見ろや」
そう言いながら手際良く魔力を練りつつ前に出る。
「魔力は無属性のエネルギー。それを火や水属性のエネルギーに変えるのが『魔力混成』。そこから魔力の込め方やら詠唱やらで様々な魔法になる。」
魔力混成。
発現。
ザックはソードオフショットガンのような物を具現化させた。
「これがオレの
素晴らしい、とコージローが拍手する。
「魔力混成のあと色々あるが、各々の得意なやり方で練った魔力を外に出す。発散だったり発現だったり発生だったり。この世界の空気中には微量の魔力が漂っているが、そこらに様々な属性の種がある。その小さな属性の種の中でどれを大きく感じ取れるかで得意属性が決まるってわけだ」
やってみろ!とコージローが言う。皆一斉に練り出す。しばしの静寂。
「あの、私はなにをどーすんの」
「ジフは地面に手を当てろ。前、俺とやったように地面の体温を吸う感じで魔力を吸ってみろ」
以前は直接コージローの魔力を手から吸ったジフ。
今度は自然の中にあるものから魔力を吸う練習になった。袖を捲り模様のある右腕を露出させる。拳をパッと開き、地面につける。ヒヤリとして気持ちが良いが
「私の手の方が暖かい…前と違ってやりにくいな…」
「と、いう事は?」
巡回していたコージローがひょっこりと目の前に現れた。ジフは少し考えて答えに至る。
「あ、手を冷そうって思えば良いのか」
右腕の模様が薄らと光っていく。周りから少し驚きの声があがる。クラスの人間は「ジフは魔力を持っていない」と思っていたのだから無理もない。
副担任のリーナ・アイリーンも驚く。
リーナはクラスDに来てから驚く事ばかりだ。
「それまでっ」
コージローがパンッと手を叩く。
「魔法が出来た者は魔法を、出来なかった者は魔力を俺とジフにぶつけてみろ。」
ん?クラス全員が言葉に引っかかる。
「私にもぉ!?」
ジフが大声で驚く。
「当たり前だ。お前の『瓦解』は来た魔法に対して古代の魔力を『流し込む』事で完成する技だ」
「えええ…」
「
「注射するイメージ!?ムズすぎないか!?」
ザックが銃片手に前に出る。
「もーいーかーい」
「もーいーよー」
コージローが呑気な声で返す。
「ちょ、私まだ」
「俺が魔障壁っつーバリア張ってやる。賢者様のバリアだ、当たっても対して痛くねえ存分に失敗しろ」
「くっそ、なるようになれっ」
無数の魔力の弾が発射される。1つ1つの弾の大きさはソフトボール大、そしてザックはそれを乱射する。
連射可能らしい。
「注射、注射ぁ!?あんな速い物体に!?
魔力で掌全体を覆うだけでも難しいのに!?」
ジフとコージローの居た場所が爆発する。砂煙がモクモクと出る。
「おいおい、驚いたぜこりゃ。ほんとに「マジックコンペティ」最下位の学園の生徒かよ」
コージローはピンピンしていた。
「痛っってぇええ」
ジフはどうやら失敗しダメージを受けたらしい。だが服や顔は砂で汚れた程度で比較的綺麗な状態だった。
賢者の魔障壁、もといバリア様様である。
次々と生徒が魔法を使う。
魔力混成。
発生。
「わぎゃああああ!?」
大絶叫。不良少女とて少女。ジフは虫が苦手だった。
「こういう魔法もあるわな」
「
爆発。
魔力混成。
発電。
「
「固定概念だな。あれは魔力がそういう形をしてるだけだ、あのミミズもそう考えろ」
「それにしても動きが不規則すぎるだろ!」
爆発。
魔力混成。
発火。
「よっしゃもうどうにでもなれかかってこい!」
「おっ、その意気だ!」
爆発。
チャイムが鳴る。
「えーっと皆さん実技の授業はここまでです。如何でしたでしょうかー」
リーナ・アイリーンが司会のように場を仕切る。
ワイワイと生徒同士でのコミュニケーションが広がっていた。魔法を使う事が出来た生徒は9割以上居た。
「なんで私の時にソレが出来ねぇかな…」
ぼそりとリーナは呟く。一方コージローとジフ。
コージローは何事もなかったかのようにピンピンしていて汚れひとつない。
ジフは服はボロボロ髪はボサボサ。『瓦解』が一回も成功しなかったのである。
途中、痺れを切らして普通に右腕で魔法をぶん殴って相殺していたがそれではジフだけが少量のダメージを受けどんどん古代の魔力が減っていくばかり。
課題は山積みだった。
「なんつー授業すんのよあんた…!」
リーナはコージローに近づいてきて小声で言う。
「せっかく覚えた魔法だ。存分に使いてえだろ」
「だからって魔力の制限もかけずにバカスカと!!」
「随分と大人しく授業やってたんだな。」
「魔法を発動するのはやっても人に向けてドーン!
なんてそんな暴力的授業、誰もやりませんっての!」
「固てぇ頭だな、」
ツンとリーナの胸をつつく。
顔面を吹き飛ばす。当たった感触はあった。
しかしサングラスのズレすらない。
「お前の頭もその胸くらい柔らかくなったらもう少し良い教師になれるぜ」
「くたばれ!くたばれ!!どっか行け!!」
リーナは顔を真っ赤にして怒る。
コージロー、教師生活初日の時間が過ぎていく。
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