No.6 俺をぶっ飛ばしてえ奴は手ぇ上げろ
扉を開ける。
生徒の視線が俺に集まる。
「なんだ、結構揃ってんじゃねぇの」
欠席する生徒が多いと聞いていたが思いのほか揃っている。俺への興味か?まったく照れるぜ。
「と、いうより…全員揃ってます」
後ろから胸のデカいアホことリーナ・アイリーンがぼそり言う。なるほど、賢者が来るぞ効果絶大ってわけね。誇らしい限りだぜ。
教卓に着く。ここからの景色は初めてだが壮観だな。
「よう落ちこぼれ共」
教室がざわつく。事実を言っただけで何をざわつく事があるのか、隣の胸のデカいアホことリーナ・アイリーンもめちゃくちゃ驚いた顔をしているがまぁ無視しよう。
パンッと一拍する。
「今、は?とか、え?とか言った奴手上げろ」
バッと一斉に手が上がる。変なところで強気だなコイツら。気だけでも強いのは良い事だ。
「認めろ。お前らは弱い。人として、魔法使いとして最低である事を自覚しろ」
瞬間、魔力の弾が飛んでくる。
なんて気の短い。受けるのも良いがまだ早いなもう少し経ったらチャンスをやろう。
もう一拍する。その衝撃で弾をかき消す。
「先生よぉ、事実だとしても伝え方ってもんがあるよなぁ先生よぉ」
金髪のツンツンとした髪、頭の半分は坊主で剃り込みも入った奴が大声で言う。なんてガラの悪いヤツだコイツは、普通の魔法使いなら怪我してるぞ。
「ダンテやらリーナやらが何年も言い続けて変わらないお前らが悪い。」
これも事実。てかイラついたからってノータイムで普通に魔力込めて弾撃って来るのヤバくね?治安終わってんじゃねぇかこの学園。
「俺ぁこの学園を「マジックコンペティ」で優勝させる為に来た」
教室が大きくざわつく。なんとまぁリアクションのいい事で。隣の胸のデカいアホことリーナ・アイリーンも驚いている。なんだお前、お前は驚くなよ。
右側の窓際の席にいる化石野郎ことジフ・レインバールはうんうんと頷いている。随分やる気あんじゃねぇかこの野郎。
「ねぇだろ…」
ん?
「出来るわけねぇだろー!!!」
ほぼ生徒全員がワッと声を上げる。
「まぁ俺も流石に今すぐ優勝目指すとは言わねえよ、ただ最終目的はって事だ」
「それでも果てしねぇって!!」
「何年も掛けてゆっくりやるって」
「でも」
少し力を込めて、またまた一拍。
「でも」だ「だって」だと面倒くさい。
学生として人並みにやる事やろうって話すら出来ねえなら、実力行使といこう。
教卓の上にあぐらをかいて座る。
「俺をぶっ飛ばしてえ奴、手ぇ上げろ」
バッと勢いよく手が上がる。仮にも賢者の称号を持つ人間がこんな舐められるのも珍しいぞ。
「クラスDの落ちこぼれ共、俺と勝負しようや」
「あ、あのコージローせんせ?」
胸ことリーナ・アイリーンが顔を引き攣らせながら言う。もちろん無視する。
「クラスの誰かが今いる場所から少しでも動けたら俺は教師辞めてやるよ」
…は?
俺以外の人間がポカンとする。
「はい、スタート」
またまたまた一拍。
「…そんなに辞めてえなら自分から辞めろや!」
ドレッドヘアーの生徒が机に足をドンと乗せた。
乗せた。乗せたはずだった。
その生徒は机に足は乗せておらず、普通に立っているだけ『動く前の姿勢と位置に戻っている』。
「な、」
「どうした?もう勝負は始まってるぞ?」
ウルフカットの女生徒がバッとこちらに手を向けて構える。構えたはずだった。
「え、あれ」
「なんだぁ?あんな事言いつつ俺に教師やってもらいたいって事かぁ?」
すると半分坊主の剃り込み野郎が言葉を発する。
「オレらになんかの条件を付与しやがった!!全員で一個ずつ潰していくぞ!!」
賢い。ただ、口は動くわけだからそうするしか無い。この発言は必然的なものだと思う。ただ良く言った。
明らかにクラスの団結感が感じ取れる。その団結の理由が俺を辞めさせたいから、なのは笑える。
「おいジフ!てめぇ魔力ねぇだろ!!ちっとも動けねえのかよ!」
「口の聞き方気を付けろよコラ、ガチ坊主になりてぇかボケ」
え、こわ、ジフこわ。こんな奴だったの?
少し認識を改める。
「ほらよ」
ジフは隣の席の男子生徒を殴ろうとした。
殴ろうとしたはずだった。しかし大人しく座ったままの姿勢に戻っている。
「つ、使えねえ…!」
「おう、これから夜道と曲がり角にゃ気を付けろよ」
隣の席の男子生徒は死ぬほど驚いた顔してるが清々しいくらいにジフは謝らない。ちゃんと不良だコイツ。
「そろそろおしまいにすっか?落ちこぼれ共」
ワーワーと言いながら試行錯誤してなんとか動こうとする生徒達。しかしシャカシャカと元の位置と姿勢に戻る。ここからだと見ていて面白いな。
そろそろチャイムの時間だ。
「よく聞け、俺はコージロー・ムラサキ、賢者だ。
今お前らは俺の『魔術』の中にいる。タネは言えねぇがここにいる内はまず動く事も、俺を殴る事も出来ねぇ」
「こ、こいつ「シメ」にかかってやがる…!」
「『魔術』ってのは必殺技みてぇなもんだ」
ピタリと生徒の動きが止まる。
「必殺技、ほしいよな」
数名はにかむ。お前らはたぶん良い奴だ。おい半分坊主もニヤついてるじゃねーか可愛いやつめ。
「お前らは魔法の楽しさを何も解っちゃいない。
だから授業は聞かねえし必殺技も使えない、ただ、
今初めて『魔術』体験して、それを攻略しようとした事は一つの勉強であり努力だ」
パンッと一拍。
「不思議体験終了、さてお前さんら、魔法について
ちょっとは学んでみねえかい」
誰も何も言わない。
立っていた生徒は静かに着席しだす。
「必殺技教えてくれんだろぉなぁ!!」
半分坊主が言う。
「お前にゃまだ早ぇよ」
俺はニヤリと笑いながら言う。
「んだとぉ!?」
「いくらでも約束はするぜ、俺が知ってるもん全部教えてやるよ」
チャイムが学園内に鳴り響く。
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