前のエピソード――第31話　完璧主義がもたらす息苦しさ

不安は、誰もが経験する感情だ。未来がどうなるか分からないとき、自分の行動が正しいのか迷うとき、不安は私たちの心に忍び寄る。そして、多くの人が不安を「避けるべき感情」として捉える。だが、不安そのものは必ずしも悪いものではない。不安があるからこそ私たちは行動し、変化を起こす力を得ることができるのだ。

たとえば、試験や仕事の締切が近づいたときに感じる不安。それはプレッシャーとして働き、一見するとネガティブに思えるが、実際には行動を促す原動力にもなる。不安を感じることで準備を整え、集中力を高め、最善を尽くそうとする。このように、不安は行動を引き出すエネルギーになり得る。

また、不安は危機感を与えることで、問題に気づくきっかけをくれる。気候変動や経済的不安といった大きな課題に対して、多くの人が関心を持ち始めたのは、その不安が私たちに「何かしなければならない」という意識を植え付けたからだ。不安は変化の必要性を教え、行動を起こす理由となる。

さらに、不安は自己成長を促す力も持っている。新しいことに挑戦するとき、多くの人は「失敗したらどうしよう」という不安を抱く。しかし、その不安を乗り越えることで、自分の限界を超え、新しいスキルや知識を身につけることができる。不安は、私たちを現状から一歩前へ進めるための刺激なのだ。

とはいえ、不安が行動を促す力になるためには、それを正しく向き合い、コントロールする方法を知る必要がある。なぜなら、不安が過剰になると、行動を妨げたり、心身に悪影響を及ぼしたりすることもあるからだ。

不安を建設的に活用するためには、まず「不安の正体」を見極めることが重要だ。不安の原因が何であるのか、何に対して不安を感じているのかを明確にすることで、その解決策を見つけやすくなる。たとえば、試験に対する不安が「準備不足」から来ているのであれば、勉強計画を見直すことで対処できるだろう。

また、不安を抱えたときには、「小さな行動」を始めることが効果的だ。不安が大きいほど、何も手をつけられなくなることがあるが、小さな一歩を踏み出すことで、その不安を和らげることができる。たとえば、膨大なタスクを前に不安を感じたとき、まずは簡単な作業から始めてみる。それだけで、次の行動が取りやすくなる。

さらに、不安を感じたときには、「失敗しても大丈夫」という意識を持つことも大切だ。不安の多くは「失敗への恐れ」から生まれるが、失敗は必ずしも終わりを意味しない。それは学びや成長のチャンスであり、次の成功へのステップとなる。そう考えることで、不安が過剰に行動を抑制することを防げる。

不安は、私たちに危険を知らせ、行動を促す重要な感情だ。避けるべきものではなく、うまく付き合い、活用することで、私たちの可能性を広げてくれる。だからこそ、不安を感じたときには、それを否定するのではなく、「自分に必要なメッセージ」として受け止め、行動に繋げていくことが大切だ。不安は、成長と変化の出発点であり、私たちをより良い未来へ導く力なのだと思う。