前のエピソード――第32話　不安が生む行動とその力

感情は私たちの人生において重要な役割を果たしている。喜び、悲しみ、怒り、恐れ、そして愛。それらの感情は、私たちの行動や判断を左右し、人間らしさを形作るものだ。しかし、ときに感情は暴走し、冷静な思考や行動を妨げることもある。感情に振り回されず、自分をコントロールする術を身につけることは、人生をより豊かにするために欠かせない力ではないだろうか。

たとえば、怒りという感情を考えてみる。何か不快なことが起こったとき、私たちは瞬時に怒りを感じる。この感情自体は自然なものであり、正当な理由があることも多い。しかし、怒りのままに行動してしまうと、後悔を生む結果に繋がることがある。怒りに任せて感情的な言葉を吐いてしまったり、不必要に強い態度を取ってしまったりすることで、関係が悪化することもある。

悲しみや不安も同様だ。それらの感情は、私たちが直面する困難や危機を知らせてくれる大切な信号だが、それに飲み込まれると行動を起こせなくなることがある。たとえば、失敗したときの悲しみが過剰になると、「もう一度挑戦する」という意欲を奪うこともある。

では、感情に振り回されないためには、どうすればよいのだろうか。一つの方法は、「感情と距離を取る」ことだ。感情が湧き上がったときに、その感情にすぐ反応するのではなく、一歩引いて観察する習慣を持つ。たとえば、「今、自分は怒りを感じているな」と自分の感情を言葉にするだけで、その感情に支配される度合いが軽減される。

また、「深呼吸」をすることも効果的だ。強い感情が湧いたとき、呼吸が浅く速くなることが多い。深くゆっくりとした呼吸をすることで、自律神経が整い、感情が穏やかになる。深呼吸は簡単に実践できるテクニックであり、どんな状況でも役立つ。

さらに、「感情の裏側にある原因」を探ることも重要だ。たとえば、怒りの感情が湧いたとき、その背後には「自分の期待が裏切られた」「尊重されていないと感じた」といった具体的な理由があることが多い。その原因を理解することで、感情が過剰に膨らむのを防ぐことができる。

感情に振り回されないためには、自己理解を深めることも欠かせない。自分がどのような場面でどのような感情を抱きやすいのかを知ることで、その感情に対処する準備ができる。たとえば、「自分は不安を感じやすい性格だ」と理解していれば、不安に対する対処法を前もって考えることができる。

また、感情の扱い方を学ぶ上で大切なのは、「感情そのものを否定しない」ことだ。怒りや悲しみ、不安といったネガティブな感情も、私たちにとって重要なサインであり、それ自体が悪いわけではない。むしろ、それらの感情を受け入れ、適切に向き合うことで、私たちは感情に振り回されることなく、自分の行動をコントロールできるようになる。

感情に振り回されることは、誰にでもある。だからこそ、それにどう向き合い、コントロールするかが大切だ。感情を敵と見なすのではなく、上手に付き合う術を身につけることで、私たちはより自由に、そして豊かに生きることができるのではないだろうか。感情は私たちを動かすエネルギーだ。そのエネルギーを上手に活用することで、人生はより充実したものになるはずだ。