第14話 若者が希望を失う社会

日本社会では、若者が未来に希望を持ちにくい状況が広がっている。低賃金や雇用の不安定さ、社会的な不平等、政治や教育への不信感など、さまざまな要因が彼らの行動力や夢を阻む障壁となっている。次世代を担う若者たちが希望を失えば、社会全体の活力が失われるのは当然のことだ。


たとえば、就職の場面で若者が直面する現実は厳しい。新卒一括採用というシステムは、多くの若者に均等な機会を与えているように見えるが、実際にはその「型」に合わない人を排除する仕組みでもある。一度レールを外れると再び乗るのが難しい。中途採用や転職市場が整備されつつあるとはいえ、キャリアの柔軟性を確保するにはまだ道半ばだ。


さらに、就職しても安定した未来が約束されるわけではない。終身雇用制度が崩壊しつつある中、多くの若者は非正規雇用や短期契約に頼らざるを得ない。正規雇用に就けても、過労や職場でのストレスによって精神的・身体的な健康を害するケースが後を絶たない。このような状況では、希望を持って働き続けることが難しい。


政治の世界でも若者が希望を見出すのは難しい。高齢者中心の政治が、若者の未来を重視した政策を打ち出すことはほとんどない。少子化対策や教育費の軽減といった議論は進んでいるように見えるが、実際には効果的な施策がなかなか実現しない。一方で、若者の投票率は低下し続け、政治への影響力が薄れている。結果として「自分たちの声は届かない」という無力感が、若者をさらに政治から遠ざけてしまう悪循環が生まれている。


教育の現場もまた、若者の希望を奪う要因となっている。日本の教育は、依然として暗記や試験の点数を重視する傾向が強く、個々の創造性や主体性を育む場になっていない。さらに、社会の多様性が広がる中で、それに対応した教育の在り方が十分に模索されていない。このような環境では、若者が自分の可能性を広げたり、未来に夢を描いたりすることが難しくなる。


では、若者が希望を持てる社会を作るためにはどうすれば良いのだろうか。一つのアプローチは、若者自身が声を上げることだ。現状への不満や理想とする未来について語り合い、それを発信していくことで、社会全体を動かす力となる。若者の視点や価値観を取り入れることで、より多様で柔軟な社会を築くことができる。


もう一つは、社会全体が若者の可能性を支える仕組みを作ることだ。柔軟な働き方を推進し、キャリアの選択肢を広げる政策や、教育の多様性を確保する制度を整備する。また、若者が政治に参加しやすい環境を作り、彼らの意見が政策に反映される仕組みを作ることも重要だ。


若者は未来そのものだ。彼らが希望を持ち、自由に夢を追える社会を作ることは、社会全体の未来を明るくすることに繋がる。私たち一人ひとりが、若者の声を聴き、彼らの可能性を支える役割を果たすべきではないだろうか。希望を失わない社会を築くために、今こそ行動する時だ。

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